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030:ミミックVSジェネラルスケルトン〝骨の斬撃〟

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 あわわわわわわ……。
 ジェネラルスケルトンもスカルドラゴンもやる気満々だよ。

 というかジェネラルスケルトンさんが持ってる剣は、どこから出てきたのでしょうか?
 素材は骨みたいだけど、形が立派は剣ですね……あはは……。
 つまりあれですか、合体して進化したみたいな感じですか?

 それとスカルドラゴンさんもどうやって炎を出してるんですか?
 お腹とか空洞ですよね? すっけすけですよ?
 男の子だったら興奮するやつですよ。ジェネラルスケルトンさんも。
 うぬ!? 口内に小さな魔法陣を発見。
 あぁ、そうだった。この世界って魔法があるんだった。
 魔法を使えないせいですっかり忘れてたよ。

 って、その、炎が、こっちにー!!!

「ギィイイイイイ (ひぃいいいいい)」

 あ、危ない!
 可燃ゴミになるところだった。
 素早いミミックで本当に良かった。

 って、そうじゃない。
 早くここから逃げないと。
 今の私が敵う相手じゃない。
 サシで戦ったとしてもどっちにも勝てる気がしない!

 ということで逃げまーす!!!
 お邪魔しましたー!
 落とし穴は最高だったよー。考えた骨さんはマジ天才!

 私はスケルトンたちの縄張りの出口に向かって全力疾走で滑った。
 アイススケーター顔負けの滑りだと思う。
 絵面的にはカーリングの丸い石だけど。

 よしっ。
 出口が塞がれてないんならこっちのもんだ。
 このまままっすぐ滑れば逃げられるぞ。エスケープ、エスケープ。

 ぬあ!?
 視界が暗くなった。突然、影ができたんだ。それもものすごく大きな。
 あぁ、嫌な予感がするなぁ。
 こういうのって当たるんだよね。

「WOOOOOOOOO!!!」

 ほらね。当たった。
 私の正面には背後にいたはずのスカルドラゴンが立っていた。
 それも私が向かっている出口を塞いで。

 もうっ!
 ここの洞窟のモンスターってみんなそうなのね。
 全然帰してくれないじゃない!
 私が可愛いからってそれはダメなんじゃない?
 しつこい男子は嫌われちゃうぞ?

「WOOOOOOOOOーー!!!」

 ひぃいい!!
 炎出してきたー!
 生意気なこと言ってごめんなさーい!!

 緊急回避の体当たり攻撃ボックスアタックッ!!!
 横に跳躍して炎を躱す。

 ふぅー。危ない。
 ギリギリだったーー?

 アチチ、アチチ、アチチー!!!
 ちょっと掠ってた。
 ちょっと掠っただけなのにかなり熱い。というか痛い。
 ドラゴンカップル以来の炎だ。
 もう、炎とか大っ嫌い!!!

 くっそ。
 しっかり出口を塞ぎやがって。

 ――って、危な!!!!

 鋭利な刃物が私の体を横切った。
 これ喰らってたら真っ二つだったんじゃね?
 ありがとう反射神経さーん。

 スカルドラゴンに気を取られすぎたな。
 集中しないと。
 相手は2体だ。それもかなり強い。
 キングラットと同じ……いや、それ以上だ。
 まあ、格上なのには変わりないよね。

 まずは不本意だが、出口から離れよう。
 それで出口を塞ぐスカルドラゴンが追いかけてくれればありがたい。
 隙を作って逃げれる。

 さぁ、付いて来い骨ども!
 私を掴まえてごらんなさいっ!

 ――ダダダダダッ!!!

 足音もスケルトンの時と比べて大きくなってるな。
 ちゃんと付いて来てくれて嬉しいぞ。

 ん?
 でもおかしいな。
 足音がジェネラルスケルトンのものだけしか聞こえないぞ。
 あぁ、そうか。
 スカルドラゴンは空を飛んでるのか。
 というか骨だけの翼でどうやって飛んでるんだろう。
 魔法かな? それともモンスターとしての特殊な能力的なやつ?
 まあ、どちらにしてもこの世界のモンスターはすごい。私も含めてねっ。

 そろそろいいか。
 あまりにも遠すぎたら、逃げてる時に追いつかれる可能性もあるからね。
 さあ、あとは隙を作るだけだ。

 ――え?
 振り向いた瞬間、予想外の光景に私は衝撃を受けた。

 どうして?
 どうしてジェネラルスケルトンだけしか付いて来てないの?
 飛んで追いかけて来てるもんだとばかりに思ってた。

 そうか。高みの見物ってやつか。
 ジェネラルスケルトンだけで余裕だと判断したんだな。
 舐められたもんだ、って普通は唾を吐きかけたいところだけど、私の唾はご褒美になっちゃうからね。
 って、そうじゃない。
 舐めてくれて助かったよ。サシならなんとかなるかもしれない。
 さっきは勝てる気がしないとか思ってたけど、今までだって地獄のような状況を乗り越えて来たんだ。
 だからきっとなんとかなる。

「KARAKARAKARA……」

 ジェネラルスケルトンの不気味な声が私の不安を駆り立てる。
 肌がないのに鳥肌が立ったような感覚を味わうのは、前世が人間だったからだろうか?
 そう言った感覚を体が覚えているからだろうか。
 じゃあ、私のこの鼓動はなんだ?

 恐怖とか不安とかか? 

 いや違うな。
 この鼓動は強い相手と戦うことに対しての緊張感や高揚感だ。
 これは前世では一度も体験したことがない感情。
 ミミックになってから何度も味わって来た感情だ。
 私はミミックとして……モンスターとして――いや、私は私としてこの瞬間を楽しんでいるんだ。
 互いの全力と全力がぶつかろうとしてるこの瞬間を。

「KARAKARAKARAKARA!!!!」

 くる!!!

 ジェネラルスケルトンの骨の剣が私の体を掠める。
 攻撃が来ると分かっていても、反応できたとしても、ギリギリ当たるほどのスピードだった。
 なんてスピードなんだ。

 でも大振りも大振り。
 反撃のチャンスだ!
 ジェネラルスケルトンの体を崩せるかどうかわからない。だからまずは試させてもらう。

 必殺――体当たり攻撃ボックスアタックッ!!!

 渾身の体当たり攻撃ボックスアタックをジェネラルスケルトンの下腹部目掛けて――

 ――ぬぐあッ!!!

 痛い痛い痛い痛い。
 なんて硬さなの!?
 スケルトンの比じゃないぞ。
 頭砕けるかと思ったわ!!
 ちょっとクラクラするし……。

 ――ザンッ!!!

 ジェネラルスケルトンの骨の剣の斬撃が飛んできた。

 ぬあッ、あっぶなー!
 しっかり怯んでる時に狙いやがって。
 辛うじて躱せたけど直撃してたらヤバかったぞ!?

 ――え?

 宙に浮かぶ木片。
 この木片、私の体の一部だ。
 骨の斬撃を完全に躱せてなかったのか。
 だとしてもなんて斬れ味なの?
 通販番組も驚きの斬れ味じゃんかよ。
 こんなの直撃したら即死級の威力じゃんか。
 あの剣に触れたら一発アウト。
 軽く振っただけの攻撃が私にとっては一撃必殺技だ。

 まずいまずいまずい。
 奴から距離を取らないと。
 接近戦は無理だ。
 って、私接近戦以外の戦い方ないんだけど!?
 技全部が近距離攻撃なんだけど。
 いや、待て。
 クラーケンの時みたいに岩雪崩のような攻撃を……。
 無理だ。通じるとは思えん。
 だったら噛み付き攻撃ボックスファングで貫通ダメージを……。
 それも無理。近付いたら私が死んじゃう!
 そもそもあんな硬い骨に噛み付くだなんて、私の牙が先に折れちゃうよ。
 くっそ。どうしたらいいんだ。

 ――ザンッ!!!

 うわっ!
 また斬撃を飛ばして来た。
 今度はさっきよりも大きいぞ!
 でもこの距離なら躱せる!!

 私は思いっきり横に飛んで斬撃を回避した。
 回避したはずなのだけど――

 ――ぬあッ!!!

 き、斬られた。
 背中をちょっと斬られたぞ。
 痛みが感じないのは神経に届いてないからか。
 完全に躱したと思ったのに……それだけ攻撃の範囲が大きいってことか。
 ますます近付くことができないじゃんかよ。

 でも近付かなきゃ倒せない。
 こいつを倒さない限り出口を塞ぐスカルドラゴンは動いてくれない。
 相討ち覚悟でやるしかないってわけね。
 いや、この力の差は相討ちどころか私が死ぬだけなのでは?

 でもそれしか方法が思い付かない。
 それにこのまま考えてても埒が明かない。

 私は今までの考えと一緒に唾を飲み込んだ。
 覚悟を決めるためだ。

 覚悟を決めて攻めるしかないな。
 どうせやらなきゃ死ぬんだ。
 次の斬撃が飛んできたら行くぞ。
 噛み付き攻撃ボックスファングでもダメだったら、またその時考える。
 その時があるかどうかは知らんけど!!!
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