白紙

無垢

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一章

白紙

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白い壁。白い机。白い布団。

味気ない、つまらない、何もかも。





森志麻 雪菜(もりしま ゆきな)

扇風機に煽られながら布団の上で何度目かの背伸びをする。

ずっと考えている事がある。
雪という漢字が入っているのに生まれは夏とはどういう事か。
「冬なら良かったのに」
行方もなしに飛び出た言葉は受け取り手もなくただ、床に落ちるだけ。

夏休みが始まって一週間が過ぎた。
これといって楽しみも無いまま一日一日がまるで空気の様に過ぎていく。

ふとベランダの方に目をやると一匹の蝶が庭に入るのが見えた。
蒼くて。
羽の縁が少しだけ黒い。なんというか、
「綺麗」
雪菜は不意に現れたその言葉に少しだけ、違和感を覚えた。

「あれ、蝶嫌いなのに。」


昔から虫は苦手だった。
幼い頃同年代の友だちといえば、虫が好きで夏休みは必ず半袖に短パン、麦わら帽子と虫取り網を持っているどこかのアニメに出てきそうな男子たちばかりだった。
野球に秘密基地に冒険に、もちろん虫取りに。
ビビりだったから?脅かされるし服は汚れるし無駄に足早くて置いてかれるし。

今考えれば散々だったな、なんて

休ませる気のない夏休みの課題とソーダアイスの包み紙三つ。それと共に机に置かれた写真立てに目をやる。

あんなに笑顔で写ってたらこんな文句も言えないか。


*続きが読みたいと感じて頂けた方、ぜひ感想の程よろしくお願い致します*
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