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魔法使いの家③
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「さて、もう一度やってみろ」
着替えを確認すると、アウルはそう言って、台所を指さした。
「もう一回って、火を使うの?」
ジャスは正直尻込みしていた。
「またびしょ濡れにさせるかも……」
「火を使えるようにすんのは必須だっつったろ。話聞いてんのか」
「わかったよ!」
もう一度台所を見つめてみる。ぐっと念じてみようとした時、待て、とアウルが制した。
「んな気合入れてやんじゃねぇよ。また猛火になるぜ。もっと、ちょっと火ぃ借りさせてくれ、っていう軽い感じで念じてみな」
「はあ」
言われたとおり、少し力を抜いて念じてみる。
すると、今度は一瞬強い火柱が上がったがすぐに小さくなった。鍋を乗せるのには少し強すぎるが、まぁまぁな火力の炎だ。
「できた!」
ジャスは思わず嬉しそうな声がでた。
アウルは出た炎を観察し、ふん、と軽く鼻を鳴らした。
「まぁ、はじめはこんなもんだ。何度もやって慣れろ、いいな」
それだけ言うと、サッサとまた部屋に戻っていった。
アウルが去ってから、ジャスは何度か火をつけたり消したりしてみた。別に慣れろと命令されたからでは無いが、単純に面白くなってきたのだ。水を出すのも何度かやってみて、出過ぎたりでなさすぎたりを繰り返して、なんとか適正量を出せるようになった。
難しかったが、何度か練習するうちに鍋に水を入れ、沸かすことも出来た。
「出来た出来た!」
うまく出来た。誰かに見てもらいたい。一瞬そう思ったが、ここには自分と憎き魔法使いしかいないと我に返った。
「くそ、何クソ真面目に練習してんだか…」
ふと外を見るとうっすら暗くなっていた。かなり夢中になっていたようだ。昼も食べずに練習していたようだ。
ジャスは朝に取ってきたあの苦い野草を鍋に放り込んだ。
自分のカバンから調味料入れを持ってきてスープにする。
スープが出来上がると台所から移動して食事にすることにした。
テーブルに一人座り、スープを一口飲む。さっきとはうってかわって、野草は食事になっていた。
ふと、さっきの台所の棚を思い出した。
パンの入っている棚。花嫁、の為に用意されたパン。
あれは自分は食べるべきではない。絶対に。
しかし、鍋や火や水を使ってしまった今、どこまで自分は流されてしまうだろうか、とジャスは不安になっていった。
~~~
夜も更けて来たが、アウルが部屋から出てくる気配は一切無かった。
途中、ふよふよとコーヒーの入ったカップと砂糖らしきものが飛んで部屋に入っていったので、食事は取ったようだ。
することも無いので少しだけ台所を掃除してキレイにする。使わせてもらっただけだとなんだが落ち着かない。
そうこうしているうちに、他のところも少し掃除したくなってきた。
元々ジャスは綺麗好きである。
勝手に色々いじったらいけないだろう、と思いつつも少しずつ少しずつ掃除の範囲を広げていく。
「おー…ここも……やりがいあるな…」
「何してんだ」
突然話しかけられてジャスは飛び上がる。後ろにアウルが疲れた顔で立っていた。
「あ、悪い。勝手に色々いじっちゃって」
ジャスは布巾を持ったままバツが悪そうに言った。しかしアウルは、掃除された場所を見て、ほう、と唸った。
「テメェ、掃除すんのか」
「え?」
「片付けもすんのか」
「え?まあ普通に出したものは片付けるけど」
「こっちもできるか」
アウルはそう言って、さっきまで籠もっていた部屋にジャスを案内した。
「は、はぁ!?」
部屋には山の様な羊皮紙と何やら変な骨のようなものや薬品が散らばっていた。
さっき午前中に入ってみたときとはえらい違いだ。
「一体どうすればこんな散らかるんだよ」
「デケえ魔法の準備する時はいつもこんなもんだ」
「てか、魔法で片付けれんじゃないのか。あの、僕の爆発の後片付けした時みたいに」
「ここまで大規模に散らかると、魔法でも面倒だ」
「なんて横着者なんだ…」
ジャスは呆れた。
「俺はこれから明日の荷物の準備もしなきゃならねぇ。テメェはここを片付けておいてくれ」
「……姉の誘惑魔法を解いてくれたらやってもいいけど」
「それは関係無い」
きっぱりと言われて、そりゃそうか、とジャスはうなだれる。
「まあ、別にいいよ。何もしないでいるのも落ち着かないと思ってたところだし」
ジャスは肩をすくめた。
「姉もこんなんだったしな。調剤はうまいんだけど終わったあとの部屋が大変なことになってて、いつも僕が片付けてた」
思い出すように言いながら、部屋に入っていく。
「触ったら駄目なものとかある?捨てたら駄目なものとか」
「全部捨てるな。どうでもいいから棚に羊皮紙と薬剤とを分けてしまってくれりゃいい」
「そういうの一番面倒なんだけどもな」
ジャスは苦笑した。しかし早速色々拾い出す。
「ここやっとくから、明日の準備とやらしとけよ。わかんないことあったら聞くから」
「ああ、頼む」
そう素直に言うと、アウルは部屋を出ていった。
着替えを確認すると、アウルはそう言って、台所を指さした。
「もう一回って、火を使うの?」
ジャスは正直尻込みしていた。
「またびしょ濡れにさせるかも……」
「火を使えるようにすんのは必須だっつったろ。話聞いてんのか」
「わかったよ!」
もう一度台所を見つめてみる。ぐっと念じてみようとした時、待て、とアウルが制した。
「んな気合入れてやんじゃねぇよ。また猛火になるぜ。もっと、ちょっと火ぃ借りさせてくれ、っていう軽い感じで念じてみな」
「はあ」
言われたとおり、少し力を抜いて念じてみる。
すると、今度は一瞬強い火柱が上がったがすぐに小さくなった。鍋を乗せるのには少し強すぎるが、まぁまぁな火力の炎だ。
「できた!」
ジャスは思わず嬉しそうな声がでた。
アウルは出た炎を観察し、ふん、と軽く鼻を鳴らした。
「まぁ、はじめはこんなもんだ。何度もやって慣れろ、いいな」
それだけ言うと、サッサとまた部屋に戻っていった。
アウルが去ってから、ジャスは何度か火をつけたり消したりしてみた。別に慣れろと命令されたからでは無いが、単純に面白くなってきたのだ。水を出すのも何度かやってみて、出過ぎたりでなさすぎたりを繰り返して、なんとか適正量を出せるようになった。
難しかったが、何度か練習するうちに鍋に水を入れ、沸かすことも出来た。
「出来た出来た!」
うまく出来た。誰かに見てもらいたい。一瞬そう思ったが、ここには自分と憎き魔法使いしかいないと我に返った。
「くそ、何クソ真面目に練習してんだか…」
ふと外を見るとうっすら暗くなっていた。かなり夢中になっていたようだ。昼も食べずに練習していたようだ。
ジャスは朝に取ってきたあの苦い野草を鍋に放り込んだ。
自分のカバンから調味料入れを持ってきてスープにする。
スープが出来上がると台所から移動して食事にすることにした。
テーブルに一人座り、スープを一口飲む。さっきとはうってかわって、野草は食事になっていた。
ふと、さっきの台所の棚を思い出した。
パンの入っている棚。花嫁、の為に用意されたパン。
あれは自分は食べるべきではない。絶対に。
しかし、鍋や火や水を使ってしまった今、どこまで自分は流されてしまうだろうか、とジャスは不安になっていった。
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夜も更けて来たが、アウルが部屋から出てくる気配は一切無かった。
途中、ふよふよとコーヒーの入ったカップと砂糖らしきものが飛んで部屋に入っていったので、食事は取ったようだ。
することも無いので少しだけ台所を掃除してキレイにする。使わせてもらっただけだとなんだが落ち着かない。
そうこうしているうちに、他のところも少し掃除したくなってきた。
元々ジャスは綺麗好きである。
勝手に色々いじったらいけないだろう、と思いつつも少しずつ少しずつ掃除の範囲を広げていく。
「おー…ここも……やりがいあるな…」
「何してんだ」
突然話しかけられてジャスは飛び上がる。後ろにアウルが疲れた顔で立っていた。
「あ、悪い。勝手に色々いじっちゃって」
ジャスは布巾を持ったままバツが悪そうに言った。しかしアウルは、掃除された場所を見て、ほう、と唸った。
「テメェ、掃除すんのか」
「え?」
「片付けもすんのか」
「え?まあ普通に出したものは片付けるけど」
「こっちもできるか」
アウルはそう言って、さっきまで籠もっていた部屋にジャスを案内した。
「は、はぁ!?」
部屋には山の様な羊皮紙と何やら変な骨のようなものや薬品が散らばっていた。
さっき午前中に入ってみたときとはえらい違いだ。
「一体どうすればこんな散らかるんだよ」
「デケえ魔法の準備する時はいつもこんなもんだ」
「てか、魔法で片付けれんじゃないのか。あの、僕の爆発の後片付けした時みたいに」
「ここまで大規模に散らかると、魔法でも面倒だ」
「なんて横着者なんだ…」
ジャスは呆れた。
「俺はこれから明日の荷物の準備もしなきゃならねぇ。テメェはここを片付けておいてくれ」
「……姉の誘惑魔法を解いてくれたらやってもいいけど」
「それは関係無い」
きっぱりと言われて、そりゃそうか、とジャスはうなだれる。
「まあ、別にいいよ。何もしないでいるのも落ち着かないと思ってたところだし」
ジャスは肩をすくめた。
「姉もこんなんだったしな。調剤はうまいんだけど終わったあとの部屋が大変なことになってて、いつも僕が片付けてた」
思い出すように言いながら、部屋に入っていく。
「触ったら駄目なものとかある?捨てたら駄目なものとか」
「全部捨てるな。どうでもいいから棚に羊皮紙と薬剤とを分けてしまってくれりゃいい」
「そういうの一番面倒なんだけどもな」
ジャスは苦笑した。しかし早速色々拾い出す。
「ここやっとくから、明日の準備とやらしとけよ。わかんないことあったら聞くから」
「ああ、頼む」
そう素直に言うと、アウルは部屋を出ていった。
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