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キス
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「よし、分かった」
突然アウルはそう言うと、今にも帰ろうとしているジャスに近づいた。
「行く前に、俺とキスしろ」
「はあ!?」
ジャスは驚いて荷物を落としてしまった。薬が割れていないか一瞬不安になったが、何も割れた音はしていないので大丈夫だろう。それよりも……
「なにフザけたこといってんだよ」
「大真面目だ」
「まだ契りを結ばないって言ってるだろ!」
「契じゃねえ。キスだけた」
「どっちにしろやだよ!」
ジャスは後ずさる。アウルはそんなジャスを追うように距離を詰めた。気づくと壁際に追い詰められている。
「魔法使いのキスには媚薬、酩酊魔法が入っている」
「俺にも誘惑魔法みたいなもんをかけるつもりか」
「そんなしっかりしたもんじゃねえ。ただ、気持ちよすぎる」
「は?」
「気持ちよすぎてもう一度欲しくなる。だからテメェはまたここに帰って来る、ってわけだな」
「恐ろしすぎる!絶対ヤダ!」
「帰って来ねえっていうのか?」
「違う!そのキスがヤダって言ってんの!」
「大丈夫、そんな深くやらねぇよ」
「深くって何だよ!」
「深くっつーのは、思いっきり魔力を込めて、相手の口の中に舌を入れながらかき混ぜて……」
「聞きたくない!!」
「テメェが何だって聞いてきたんじゃねえか!」
「ちょっと!待ってー!!!」
二人の間にクロウが割って入ってきた。
「もっと早くから止めてくれよ……」
ジャスは腰が抜けて座り込んでしまった。
「ごめんごめん、俺もアウルの思いつきにぽかんとしちゃってて」
そう言ってクロウはジャスを立たせた。そしてアウルに向き合った。
「アウル、そんなにキスがしたい?」
「別にキスしたい訳じゃねぇよ。コイツがちゃんと帰ってくる為の保険だ」
「考えるのが苦手なアウルが一生懸命考えた末のアイデアなんだろうけど……。それやったら絶対ジャスくん帰ってこなくなるよ」
「何でだよ」
「キスしちゃったら、ジャスくんは『これで素直に帰ったら、またキスしたいと思われるんじゃないか』って考えて、かえって帰りづらくなると思わない?たとえ普通に帰るつもりだったとしてもさ」
クロウの説明に、ジャスはコクコクと何度も頷く。
アウルはムスッとしながらも反論はできないようで黙ってしまった。
「まあ、信じてあげよう。いざとなったら地の果てまで探して追いかければいいでしょ」
サラッと怖い事をクロウが言うのを、ジャスは聞かないふりをした。そして恐る恐るアウルに言った。
「一応、ちゃんと帰ってくるつもりだから」
「一応?つもり?」
「いや、その、帰る!帰ってくるから」
「……わかった」
アウルは渋々といった様子だったが、一応は納得したようだ。
「ほらほら。チューならいつでも俺がしてあげるから」
「いらねぇよ」
アウルはくっついてくるクロウを引き剥がしながらジャスに言った。
「じゃあ、三日後待ってるからな。一日でも遅れたら容赦しねぇからな」
「わかったよ。じゃあ」
ジャスは荷物をを持ち直して軽く挨拶すると、ドアを開けてアウルの家を出ていった。
~~~
「行っちゃったねー。アウルが変な事言い出してグダグダ帰るのが遅くなりそうになったのはちょっと焦ったけど」
完全にジャスの姿が見えなくなってから、クロウはアウルに話しかける。
「悪い、帰るのが楽しそうなアイツに少し苛ついてな」
「ヤバイ奴らが来る前で良かったね」
「ああ」
アウルは窓の外を見る。
人影が2、3個、アウルの家を狙うように睨んでいる。
「全く、どこから聞きつけてんだか……」
「もう御神木の件は広まってるみたい。アウルが死者を蘇らせた後は魔力が弱まるっていうのはもう有名だから」
「早えなぁ…。まあ事前にこの家に結界は張っといたからザコ魔法は通じねえ」
「ザコじゃないのは?」
「テメェに頼む」
「いつも言ってるんだけど俺魔力強くないからね。大した期待しないで」
クロウもため息をつきながら窓の外の人影を見る。
「さて、大魔法使いの命を狙う悪い子達に、『説得』してこなきゃね」
クロウはニコニコ笑顔を携えたまま、堂々と玄関から外に出ていった。
後から何人かの悲鳴が聞こえたのだった。
クロウが家に戻る。
「早かったな」
「まあ、そんなに強い魔法使いはいなかったからね。俺が行かなくても多分結界で弾けたんじゃないかな?今回結構強い結界張ってたよね」
そう言いながら勝手にアウルの戸棚からコーヒーを取り出す。
「俺なんか狙って何の得があるんだかな」
アウルはため息をつきながら言った。
「そんなの、大魔法使いアウルを倒した、ってなると魔法界から一目置かれるじゃない。魔法の依頼料も何倍にも釣り上げられる。それに」
クロウはそこで言葉を止める。その先を言うべきかどうか。
しかしクロウの言葉を引き継いで、アウルが事も無げに言った。
「それに、どっちかってぇと復讐が多いだろ」
「……そうだね」
「せっかく暗殺できた奴を生き返らせたり、せっかく駆除した害獣を生き返らせたりしてるからな」
「まあ、そういう依頼持ってくる俺にも責任あるけど」
「何を受けるか決めてんのは俺だ」
「ま、そうだね」
クロウは小さく微笑む。
少しアウルは考え込むように言った。
「今日みたいに魔法使いが狙ってくるなら手加減しなくて済むが……。結界も効果あるし…。人間が特攻してくんのが一番面倒なんだよな…。毎回一人はいるもんな」
「んー、別に人間も手加減しなくていいでしょ。人間殺しちゃうのは禁忌だけど再起不能にさせるくらいは」
「手加減の問題だけじゃねえよ」
考えているだけでアウルはイライラしてきたようだ。
「あー、アウルもう今日は疲れただろから早休もう?何も考えなくてもいいから。俺がうまくやってあげるよ、いつもどおり」
イライラしてきたアウルを、クロウは慌てて寝せる準備をさせる。
「まだ明るいだろうがっ」
「イライラしてるアウル、超面倒なんだから、明るくてもなんでもとにかく余計な事考えないで寝ちゃって!ただですら考えるの苦手なくせに」
クロウは無理やりアウルをベットに押し込み、催眠をかける。
あっと言う間にアウルは寝てしまった。
突然アウルはそう言うと、今にも帰ろうとしているジャスに近づいた。
「行く前に、俺とキスしろ」
「はあ!?」
ジャスは驚いて荷物を落としてしまった。薬が割れていないか一瞬不安になったが、何も割れた音はしていないので大丈夫だろう。それよりも……
「なにフザけたこといってんだよ」
「大真面目だ」
「まだ契りを結ばないって言ってるだろ!」
「契じゃねえ。キスだけた」
「どっちにしろやだよ!」
ジャスは後ずさる。アウルはそんなジャスを追うように距離を詰めた。気づくと壁際に追い詰められている。
「魔法使いのキスには媚薬、酩酊魔法が入っている」
「俺にも誘惑魔法みたいなもんをかけるつもりか」
「そんなしっかりしたもんじゃねえ。ただ、気持ちよすぎる」
「は?」
「気持ちよすぎてもう一度欲しくなる。だからテメェはまたここに帰って来る、ってわけだな」
「恐ろしすぎる!絶対ヤダ!」
「帰って来ねえっていうのか?」
「違う!そのキスがヤダって言ってんの!」
「大丈夫、そんな深くやらねぇよ」
「深くって何だよ!」
「深くっつーのは、思いっきり魔力を込めて、相手の口の中に舌を入れながらかき混ぜて……」
「聞きたくない!!」
「テメェが何だって聞いてきたんじゃねえか!」
「ちょっと!待ってー!!!」
二人の間にクロウが割って入ってきた。
「もっと早くから止めてくれよ……」
ジャスは腰が抜けて座り込んでしまった。
「ごめんごめん、俺もアウルの思いつきにぽかんとしちゃってて」
そう言ってクロウはジャスを立たせた。そしてアウルに向き合った。
「アウル、そんなにキスがしたい?」
「別にキスしたい訳じゃねぇよ。コイツがちゃんと帰ってくる為の保険だ」
「考えるのが苦手なアウルが一生懸命考えた末のアイデアなんだろうけど……。それやったら絶対ジャスくん帰ってこなくなるよ」
「何でだよ」
「キスしちゃったら、ジャスくんは『これで素直に帰ったら、またキスしたいと思われるんじゃないか』って考えて、かえって帰りづらくなると思わない?たとえ普通に帰るつもりだったとしてもさ」
クロウの説明に、ジャスはコクコクと何度も頷く。
アウルはムスッとしながらも反論はできないようで黙ってしまった。
「まあ、信じてあげよう。いざとなったら地の果てまで探して追いかければいいでしょ」
サラッと怖い事をクロウが言うのを、ジャスは聞かないふりをした。そして恐る恐るアウルに言った。
「一応、ちゃんと帰ってくるつもりだから」
「一応?つもり?」
「いや、その、帰る!帰ってくるから」
「……わかった」
アウルは渋々といった様子だったが、一応は納得したようだ。
「ほらほら。チューならいつでも俺がしてあげるから」
「いらねぇよ」
アウルはくっついてくるクロウを引き剥がしながらジャスに言った。
「じゃあ、三日後待ってるからな。一日でも遅れたら容赦しねぇからな」
「わかったよ。じゃあ」
ジャスは荷物をを持ち直して軽く挨拶すると、ドアを開けてアウルの家を出ていった。
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「行っちゃったねー。アウルが変な事言い出してグダグダ帰るのが遅くなりそうになったのはちょっと焦ったけど」
完全にジャスの姿が見えなくなってから、クロウはアウルに話しかける。
「悪い、帰るのが楽しそうなアイツに少し苛ついてな」
「ヤバイ奴らが来る前で良かったね」
「ああ」
アウルは窓の外を見る。
人影が2、3個、アウルの家を狙うように睨んでいる。
「全く、どこから聞きつけてんだか……」
「もう御神木の件は広まってるみたい。アウルが死者を蘇らせた後は魔力が弱まるっていうのはもう有名だから」
「早えなぁ…。まあ事前にこの家に結界は張っといたからザコ魔法は通じねえ」
「ザコじゃないのは?」
「テメェに頼む」
「いつも言ってるんだけど俺魔力強くないからね。大した期待しないで」
クロウもため息をつきながら窓の外の人影を見る。
「さて、大魔法使いの命を狙う悪い子達に、『説得』してこなきゃね」
クロウはニコニコ笑顔を携えたまま、堂々と玄関から外に出ていった。
後から何人かの悲鳴が聞こえたのだった。
クロウが家に戻る。
「早かったな」
「まあ、そんなに強い魔法使いはいなかったからね。俺が行かなくても多分結界で弾けたんじゃないかな?今回結構強い結界張ってたよね」
そう言いながら勝手にアウルの戸棚からコーヒーを取り出す。
「俺なんか狙って何の得があるんだかな」
アウルはため息をつきながら言った。
「そんなの、大魔法使いアウルを倒した、ってなると魔法界から一目置かれるじゃない。魔法の依頼料も何倍にも釣り上げられる。それに」
クロウはそこで言葉を止める。その先を言うべきかどうか。
しかしクロウの言葉を引き継いで、アウルが事も無げに言った。
「それに、どっちかってぇと復讐が多いだろ」
「……そうだね」
「せっかく暗殺できた奴を生き返らせたり、せっかく駆除した害獣を生き返らせたりしてるからな」
「まあ、そういう依頼持ってくる俺にも責任あるけど」
「何を受けるか決めてんのは俺だ」
「ま、そうだね」
クロウは小さく微笑む。
少しアウルは考え込むように言った。
「今日みたいに魔法使いが狙ってくるなら手加減しなくて済むが……。結界も効果あるし…。人間が特攻してくんのが一番面倒なんだよな…。毎回一人はいるもんな」
「んー、別に人間も手加減しなくていいでしょ。人間殺しちゃうのは禁忌だけど再起不能にさせるくらいは」
「手加減の問題だけじゃねえよ」
考えているだけでアウルはイライラしてきたようだ。
「あー、アウルもう今日は疲れただろから早休もう?何も考えなくてもいいから。俺がうまくやってあげるよ、いつもどおり」
イライラしてきたアウルを、クロウは慌てて寝せる準備をさせる。
「まだ明るいだろうがっ」
「イライラしてるアウル、超面倒なんだから、明るくてもなんでもとにかく余計な事考えないで寝ちゃって!ただですら考えるの苦手なくせに」
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