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ジャスとマリカ
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懐かしの故郷について、まず向かったのは実家ではなくシバの家だった。
「ジャスじゃないか!!久しぶりだな!!よく帰ってきた!心配してたんだぞ!」
庭で仕事中だったシバが、のこぎりを持ったまま出迎えてくれた。
「マリカも元気だぞ。おーい、マリカ!ジャスが帰ったぞ!」
家の中に向かってシバが叫ぶと、ドタドタと大慌てでこちらに向かってくるような音がした。そして、勢いよくドアが開いた。
「ジャス!おかえりなさい!」
「ただいま」
マリカは喜びながらジャスに抱きついた。
「もうっ。ずっと帰らないから心配したのよ!」
「ごめんね」
ジャスはそう言ってマリカの頭をポンポンと撫でた。
その時だった。マリカの目が突然トロンとなってジャスを見つめた。
「あ、アウル様の……匂いがする……」
「まずいっ。シバ!シャワー貸してっ」
ジャスは慌ててシバの家のシャワー室に飛び込むのだった。
シャワーを浴びて戻ってくると、マリカは薬を飲まされたのか、シバと一緒に大人しく戻っていた。
ジャスは念の為、マリカから少し離れて椅子に座った。
「最近の調子はどう?」
「ジャスが前に貰ってきてくれた薬のおかげでかなり楽よ。シバにもあまり迷惑かけなくなったし、またたまに家に帰って薬作りしてるの」
「父さんと母さんが煩くない?」
「まあ、ちょっとね。でも、シバがいてくれるし。村の人も事情知ってるから味方してくれるし。こっちはなんとか大丈夫」
「それより、ジャスの方はどうなんだ?手紙では大魔法使いの所に住み込みをしてると書いてあったが……何もされてないか?」
シバは心配そうにジャスに尋ねた。
「問題ないよ。ただ、もう少しだけ交渉に時間がかかるんだ。明日にはまたアウルの所に戻る」
ジャスは気まずそうに言った。自分が早く決断してしまえばすぐ解決するのに、という負い目もあった。
「時間がかかっても私は大丈夫。むしろジャスは大丈夫?長い間無理させて……」
「そんな」
ジャスは首を振った。
「無理なんかしてないよ」
「そうだ、前に渡したお薬、まだある?よかったらまた作って持たせてあげる」
そう言ってマリカは立ち上がった。
「あー、それじゃ痛み止めと気付け薬がほとんど無くなったからそれをお願いしようかな」
ジャスの言葉に、マリカとシバはピクっと動きを止めた。
「痛み止めと気付け薬がそんなに無くなるなんて……大丈夫なの?痛いことや気絶するような事、起きてるの?」
「虐待とかされてないよな?」
心配そうに詰め寄る二人に、ジャスは慌てて言った。
「ち、違うよ。痛み止めを使ったのはアウルにだし。ちょっと、発熱したときと、酷い怪我したときがあったから」
「そう、なの?魔法使いなら、もっと強い魔法薬とか使いそうなのに」
「まあ、色々あって」
首をかしげるマリカにジャスは適当に答える。魔法が使えない時だった、とか、部屋が散らかりすぎて薬が取り出せなかった、とか説明するのは面倒だった。
「じゃあ、ジャスのとは別に、大魔法使いへも薬を薬を作ってあげよう。彼の体の大きさとか大体分かる?」
「ああ、僕より背が高くて、これくらい……。体重は……」
ジャスは手振りでアウルの体格を伝えた。
「意外に体格ちゃんと分かるんだね」
マリカは他意無くそう言ったのだが、思わずジャスは真っ赤になった。頻繁にくっつかれたり乗っかられたりしているので、体格がかなり正確にわかってしまう事に、自分でドン引きしてしまった。
「まあ、結構長く一緒にいたからね」
言い訳するようにジャスは言ったが、マリカはそんなジャスを気にすることはなかった。
「じゃあ、心を込めて薬を作るよ。そして、術を解いて、ジャスを無事に返してもらうようにお願いしよう」
マリカの言葉に、ジャスは顔をこわばらせた。
「そのこと、なんだけど」
ジャスは言いづらそうに切り出した。
魔法使いは200歳までに花嫁と契を結ばないと人間になってしまうこと。
それで、マリカに目を付けたこと。マリカの事は本気で気に入っていた様子だったこと。
そして今、自分が、アウルの花嫁になろうとしていること。
「だ、駄目よそんなの!!」
マリカが大きな声を上げた。
「だって、そんな、私の代わりに、ジャスが犠牲になるなんて、そんなの絶対駄目」
「犠牲だなんて、思ってないよ」
ジャスはマリカをあやすように優しく言った。
「そりゃはじめは冗談じゃないって思ったけど。何日もアウルと一緒にいるうちに、まあ悪くないかなって今は思ってる」
「無理してないか。他に方法を探すこともできるはずだぞ」
シバも険しい顔をしていた。
ジャスはゆっくりと首を横に振った。
「心配するような事は無いよ。ちゃんと自分の意思で決めたんだから」
「嘘よ!」
マリカは顔を真っ赤にして叫んだ。
「ジャスは流されやすいもの!きっと少し優しくされたり強引に誘われて流されちゃったんだわ!」
マリカの言葉に、ジャスはギクリとする。それは真っ向から否定も出来ない……。
「そうでしょ?だって昔からジャスはちょっと強引に誘われるとすぐに流されて、何度女の子との修羅場を迎えたか……」
「そ、それは今は関係ないだろ」
ジャスは慌ててマリカの発言を止めた。
「ともかく、大丈夫なんだってば」
「そんな……そんなの……」
マリカは唇を震わせた。そしてそれ以上何も言わずに、部屋に行ってしまった。
「マリカの事は、そっとしておいてあげて」
シバはジャスに優しく言った。
「ジャスじゃないか!!久しぶりだな!!よく帰ってきた!心配してたんだぞ!」
庭で仕事中だったシバが、のこぎりを持ったまま出迎えてくれた。
「マリカも元気だぞ。おーい、マリカ!ジャスが帰ったぞ!」
家の中に向かってシバが叫ぶと、ドタドタと大慌てでこちらに向かってくるような音がした。そして、勢いよくドアが開いた。
「ジャス!おかえりなさい!」
「ただいま」
マリカは喜びながらジャスに抱きついた。
「もうっ。ずっと帰らないから心配したのよ!」
「ごめんね」
ジャスはそう言ってマリカの頭をポンポンと撫でた。
その時だった。マリカの目が突然トロンとなってジャスを見つめた。
「あ、アウル様の……匂いがする……」
「まずいっ。シバ!シャワー貸してっ」
ジャスは慌ててシバの家のシャワー室に飛び込むのだった。
シャワーを浴びて戻ってくると、マリカは薬を飲まされたのか、シバと一緒に大人しく戻っていた。
ジャスは念の為、マリカから少し離れて椅子に座った。
「最近の調子はどう?」
「ジャスが前に貰ってきてくれた薬のおかげでかなり楽よ。シバにもあまり迷惑かけなくなったし、またたまに家に帰って薬作りしてるの」
「父さんと母さんが煩くない?」
「まあ、ちょっとね。でも、シバがいてくれるし。村の人も事情知ってるから味方してくれるし。こっちはなんとか大丈夫」
「それより、ジャスの方はどうなんだ?手紙では大魔法使いの所に住み込みをしてると書いてあったが……何もされてないか?」
シバは心配そうにジャスに尋ねた。
「問題ないよ。ただ、もう少しだけ交渉に時間がかかるんだ。明日にはまたアウルの所に戻る」
ジャスは気まずそうに言った。自分が早く決断してしまえばすぐ解決するのに、という負い目もあった。
「時間がかかっても私は大丈夫。むしろジャスは大丈夫?長い間無理させて……」
「そんな」
ジャスは首を振った。
「無理なんかしてないよ」
「そうだ、前に渡したお薬、まだある?よかったらまた作って持たせてあげる」
そう言ってマリカは立ち上がった。
「あー、それじゃ痛み止めと気付け薬がほとんど無くなったからそれをお願いしようかな」
ジャスの言葉に、マリカとシバはピクっと動きを止めた。
「痛み止めと気付け薬がそんなに無くなるなんて……大丈夫なの?痛いことや気絶するような事、起きてるの?」
「虐待とかされてないよな?」
心配そうに詰め寄る二人に、ジャスは慌てて言った。
「ち、違うよ。痛み止めを使ったのはアウルにだし。ちょっと、発熱したときと、酷い怪我したときがあったから」
「そう、なの?魔法使いなら、もっと強い魔法薬とか使いそうなのに」
「まあ、色々あって」
首をかしげるマリカにジャスは適当に答える。魔法が使えない時だった、とか、部屋が散らかりすぎて薬が取り出せなかった、とか説明するのは面倒だった。
「じゃあ、ジャスのとは別に、大魔法使いへも薬を薬を作ってあげよう。彼の体の大きさとか大体分かる?」
「ああ、僕より背が高くて、これくらい……。体重は……」
ジャスは手振りでアウルの体格を伝えた。
「意外に体格ちゃんと分かるんだね」
マリカは他意無くそう言ったのだが、思わずジャスは真っ赤になった。頻繁にくっつかれたり乗っかられたりしているので、体格がかなり正確にわかってしまう事に、自分でドン引きしてしまった。
「まあ、結構長く一緒にいたからね」
言い訳するようにジャスは言ったが、マリカはそんなジャスを気にすることはなかった。
「じゃあ、心を込めて薬を作るよ。そして、術を解いて、ジャスを無事に返してもらうようにお願いしよう」
マリカの言葉に、ジャスは顔をこわばらせた。
「そのこと、なんだけど」
ジャスは言いづらそうに切り出した。
魔法使いは200歳までに花嫁と契を結ばないと人間になってしまうこと。
それで、マリカに目を付けたこと。マリカの事は本気で気に入っていた様子だったこと。
そして今、自分が、アウルの花嫁になろうとしていること。
「だ、駄目よそんなの!!」
マリカが大きな声を上げた。
「だって、そんな、私の代わりに、ジャスが犠牲になるなんて、そんなの絶対駄目」
「犠牲だなんて、思ってないよ」
ジャスはマリカをあやすように優しく言った。
「そりゃはじめは冗談じゃないって思ったけど。何日もアウルと一緒にいるうちに、まあ悪くないかなって今は思ってる」
「無理してないか。他に方法を探すこともできるはずだぞ」
シバも険しい顔をしていた。
ジャスはゆっくりと首を横に振った。
「心配するような事は無いよ。ちゃんと自分の意思で決めたんだから」
「嘘よ!」
マリカは顔を真っ赤にして叫んだ。
「ジャスは流されやすいもの!きっと少し優しくされたり強引に誘われて流されちゃったんだわ!」
マリカの言葉に、ジャスはギクリとする。それは真っ向から否定も出来ない……。
「そうでしょ?だって昔からジャスはちょっと強引に誘われるとすぐに流されて、何度女の子との修羅場を迎えたか……」
「そ、それは今は関係ないだろ」
ジャスは慌ててマリカの発言を止めた。
「ともかく、大丈夫なんだってば」
「そんな……そんなの……」
マリカは唇を震わせた。そしてそれ以上何も言わずに、部屋に行ってしまった。
「マリカの事は、そっとしておいてあげて」
シバはジャスに優しく言った。
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