祖母孝行したいけど、兄弟でキスはできない

りりぃこ

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色々調べて特定した

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 その日も、祥太は遅く帰ってきた。

「おかえり兄貴。あ、こればあちゃんご所望の漫画本」

 智紀は帰ってきてすぐに風呂に入ろうとする祥太を引き止めて、今日買ってきたばかりの漫画本を渡した。

 祥太は風呂を邪魔されて、ちょっと不機嫌そうに漫画本を受け取った。

「ふうんこれか。案外キレイな絵だな。というか、早くばあちゃんに渡してやれよ」

「ヘルパーさんがいて渡すタイミング無かったんだよ。ヘルパーさん帰ってすぐにばあちゃん仮眠タイムになっちゃったし、その後は母さんが帰って来たから渡しづらくて」

「はあ。まあ先に俺達が見ておく必要もあるしな。お前はこれ読んだか?」

「うん、まあパラパラって。よくわかんねえけど、少女漫画の女役が男になってるだけ?って感じなんだけど……」


 ストーリーは昭和初期のものである。森の奥に住んでいる、神様と呼ばれる謎の美少年に魅入られて、惹かれていく主人公。しかしその美少年は、主人公の腹違いの兄弟だった。それでも惹かれ合う二人だったが、やがて戦争が始まり……というものだった。


 正直、智紀にとっては、これ、男同士でやる必要あるか?別に男と女でも良くない?という感想しか出なかった。でも、泣けるBL、と紹介されただけあって、単純に内容は面白いし泣ける。

「ほう、どれ」

 祥太はパラパラと漫画をめくる。あまりの速読に、ちゃんと読んでいるか怪しくなってしまう。

「なるほどな。分かった」

 本を閉じて智紀に返した。

「明日にでもおばあちゃんに渡してやれ。ていうか読めるのか?寝たきり用のブックスタンドでも買っておくか」

 そう言ってサクサクとスマホで何やら注文しているようだ。相変わらず仕事が早い。

「てか兄貴、感想は?」

「別に俺の感想なんて必要ないだろう」

 そう冷たく言って、祥太はサッサと風呂場へ行ってしまった。

「チェッ、効率屋だなぁ」

 智紀はため息をついて、漫画本を持って自分の部屋に戻って行った。



 次の日、智紀が学校に出かける前に、祥太に呼び止められた。

「さっきお前のケータイに、送っておいたSNSのアカウント。後で確認しておいてくれ」

「アカウント?誰の?」

「多分、ばあちゃんの知り合いだ」

「ばあちゃんの知り合い?」

 智紀はキョトンとした。さち子の知り合い世代でもSNSなんてやっているのだろうか。

「ばあちゃんに、そのBL本をオススメしたっていう隣のベットにいた人のお孫さんだと思われるアカウントだ。本の題名がわかったからな。なんとか色々調べて特定した」

「えっ!何でそんなの分ったの!?」

 怖い、と智紀はドン引きした顔で祥太を見る。

 祥太は何でもないことのように飄々と答える。

「今どき、証拠集めでSNS特定するのはよくやることだ。さすがに依頼ではないから業者を使ったり開示請求したりしてないから確定ではないが」

「へ、へぇ」

「ほら智紀、時間がないぞ。休み時間にでもチェックしておけ」

「あ、ヤバい」

 祥太に急かされて、智紀は慌てて玄関を飛び出した。

 
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