憧れの世界は牙を剥く

奈倉ゆう

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2章 ビギシティと出会い

数日間の超成長

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 イファル国

 獣人たちの国。ペティオ王国の次に広い領土を持ち、多くの獣人を有していた。
 建物は自然のもので出来ているものが多く、家は木だけで作られている。
 水は澄み渡り、空気も美味しく、過ごしやすい国ランキングでは堂々の1位。
 14年前にペティオ王国との戦争で敗れ、3割の領土と大量の獣人がペティオ王国に奴隷として連れていかれ、国力は以前と比べ、かなり落ちている。
 しかし、獣人は魔法使いが国の人口の1割にも満たない代わりに、質の良い戦士が多く、この14年で育ち、いまはそこそこの力を持っている。

「獣人の国か……。そういえばビギシティでは獣人を見ないけど、この国では奴隷として使われてるからか。」

 奴隷というものは、かなりの金がかかり、このビギシティには、金持ちはそんなにいない。
 王都なら獣人を見ることが出来るのだろうか。

「会ってみたいな獣人。」

 そう呟きながら、ページをめくる。

 バハラ帝国

 人間、獣人が共存している国。強い=正義という実にわかりやすい国であり、強ければ強いほど、尊敬され、上の立場につくことができる。
 強者が多く、15年前に魔王が復活した際、1番被害が少なく、国力を維持し続け、ペティオ王国がイファル国との戦争で勝利し、イファル国の領土と人員の一部を吸収するまでは、最も力のある国だった。

 アラバンナ連邦国
 魔国レッドサンドが隣にあり、人類の住むことが出来る領土のなかでトップクラスに危険な国。
 本来、アラバンナ連邦国があった場所は小さな国が多数集まっていたが、魔物や悪魔達の進行を防ぐため、5年前に各国が協力し、高ランクの者達を多数送り込んで作り上げた国。
 魔国の隣で、アラバンナ連邦国にいる魔物達は強力な魔物ばかりで、悪魔の姿も度々目撃されるため、Bランク以上の者しかアラバンナ連邦国に滞在することが出来ない。
 Bランク以上の者しか滞在出来ないため、人口はかなり少ない。
 別名、人類の砦

 魔国レッドサンド
 元々はアラバンナ連邦国のように多数の小さな国々があった場所だが、1つの国に15年前に魔王が出現し、10年で10を超える国が破れ、魔王が国を一纏めにし、魔国レッドサンドを作り上げた。
 レッドサンドの中心には魔王城が存在する。
 レッドサンドの大気には邪気が含まれており、人類が邪気を吸うと、ステータスの低下は免れない。
 魔王城は、魔界、邪神界と繋がっているのではないかと噂され、邪気の量は日に日に増えている。
 また、レッドサンドには多数の高ランクの魔物、悪魔が存在し、一度レッドサンドに足を踏み入れたら2度と生きて帰れない。

「ふー、目が疲れたな。」

 一通り、国の詳細を見て、目をほぐす。

「アラバンナ連邦国か。」

 各国が協力して強者を集めた国。日頃から高ランクの魔物達と戦っているのだから戦闘技術などはかなりのものだろう。
 ハーパン学園を卒業したら、いずれ行ってみるのもいいかもしれない。

「レッドサンドも思ったよりヤバそうな場所だな。」

 2度と生きて帰れないという文に、わずかに恐怖する。
 魔王がいるのだから、倒すためにいつかは行かなければならない。
 少なくとも今の俺が行ったとしても、瞬殺されるだろう。

「もっと強くならないとな。」

 窓の外を見る。いつの間にか空はオレンジ色に染まり、もう少しすれば、日も落ちるだろう。
 今日はここまでにしよう。
 本を本棚に戻し、お金を払って図書館を出る。

「あれは……アイオン?」

 図書館を出て、宿に戻るため歩いていると、アイオンを見つけた。
 しかし、様子がおかしい。顔を俯かせ、その表情を見ることは叶わないが、何かあったのは間違いなさそうだ。

 大剣を背中に背負い、いつも着ている鎧を身につけていることから、クエスト帰りということは簡単に想像がつく。
 おそらくクエスト関連で何かあったのだろう。

「ん……。」

 少し悩んだが、声をかけることにした。
 アイオンには助けてもらった恩もあるからな。
 もし何か力になれることがあれば、喜んで手を貸すつもりだ。
 俺はアイオンの元へと駆け出した。





 少し時は遡る

「あれは――2人とも気をつけてください!
 ヒューデットです!」

 ビギシティを発って数時間、途中で何度か魔物と戦ったが、こっちはDランクのアレンさんに、Eランクのリーパーさん、それに同じくEランクの私がいる。
 この辺では、ヒューデットを除けば、強くてもEランクのグレイウルフだ。まず負けることは無い。
 でも、幸運は続かず、ヒューデットと遭遇してしまった。 
 しかも3体もいる。逃げるか葛藤してるとアレンさんがブラウンホースを止める。

「ほう、あれがヒューデットなのかリーフ?確かDランクの魔物だったよな。」

 アレンさんがブラウンホースから降りて、剣を構える。

「うわ、気持ち悪いな。しかも、Dかよ。俺は援護に徹するわ。こいつも試してみたいしな。」

 リーパーさんは、自分の荷物から黄色の液体の入った瓶を取りだし、弓矢を取り出して、その液体に矢の先端をつける。

「リーパーさんそれは?」

「ケイブスパイダーの麻痺液だ。ビギシティで買ったんだよ。こいつをぶっ刺せば、しばらく動けない。
 一応Dランクのアレンがいるし、何度もヒューデットと戦ったお前もいるから大丈夫だろうが、念の為にな。」

「なるほど、では私も前線で戦うので援護をお願いしますね。」

「お前も前線で戦うのかっ!?」

 話が聞こえていたらしいアレンさんが、ヒューデットから目を離し、驚きながらこっちを見る。

「リーフは回復とかサポートの方が得意だろ?後衛の方がいいんじゃないか?」

 リーパーさんも困惑の表情で麻痺液から矢を取り出す。

 確かに2人が驚くのも無理はない。前回ビギシティに行った時、それに今回もビギシティに行く時、魔物と対峙した時は、アレンさんに前衛を任せ、私は後衛で回復やサポートをしていた。
 でも、私もこの数日で成長したんだ。

「大丈夫ですよ。〈輝け光よ〉」

 私は2人に笑いながら、2人を巻き込まないように、アレンさんの前に立ち、いつの間にか距離を詰めていたヒューデットに向かって『フラッシュアウト』を放つ。

「「「ガァァァ!!」」」

「〈我は力を求む〉!〈我が手に宿れ・魔を滅する・光の剣よ〉!」

 3体のヒューデットの視界を同時に奪い、さらに『パワーライズ』をダブルアクションで両足を強化。
 そして、『ライトソード』を詠唱し、光の剣を手に持って、ヒューデットの目の前に素早く移動し、『ライトソード』を振り抜く。

「ガアァ!」

「やはり3体同時は無理ですよね。」

 3体とも固まって動いていたためあわよくば1振りで3体の首を斬り飛ばそうとしたが、『ライトソード』は2体の首を斬った所で振る速度が激減し、視力が回復した3体目のヒューデットが殴るために腕を引いたところで、右足で地面を強く蹴ってバックステップをして回避する。
 その際に、『ライトソード』は光の粒子となって消滅した。

「あ、あれ?2人とも大丈夫ですか?」

 後ろを振り返ると、あんぐりと口を開けながら、2人が先程よりももっと驚いた表情でこっちを見ていた。

「リ、リーフ、お前この数日でどんだけ強くなってんだ……?」

「ほんとにな……あの回復が取り柄のリーフがこんなになって……」

「そ、そんなに強くなりましたかね?とりあえずあの1体を片付けましょう?」

 倒し損ねたヒューデットは攻撃を避けられたことに苛立ったのか、こっちに向かって走ってくる。

「そうだな、おい、リーパー援護しろ。『フルスイング』!」

 ヒューデットを剣で吹き飛ばしながら、アレンさんは未だに惚けているリーパーに声をかける。

「あ、ああ分かった。俺達も負けてられないな。」

 リーパーさんも気を取り直し、弓に先程の麻痺液つきの矢を番え、ヒューデットに放って、動きが鈍くなったヒューデットをアレンさんが何度か戦技を放ち、倒れる。

 ミラン村まではあと少し。そして日ももうすぐ暮れそう。
 ヒューデット相手だと少し時間がかかるから、あまり遭遇したくはない。

「日がくれる前に帰りつけるといいんだけどなあ。」

 ポツリと私は呟いた。
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