朧月

カフェ・オーレ

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自暴自棄

3.6

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無我夢中で走り続け、気がつけばシャッターのしまった社長の会社の前に立っていた。
物件は売りに出されていたが、買取手は決まっていない様だ。

しばらくすると、馬鹿騒ぎしながらこちらに向かってダッシュしてくる男3人組。相原達だ。

私の顔を見るなり、相原は指を指してゲラゲラと笑い出す。

「鳥の巣みてーな頭してんなぁ!よし、固めてあげようではないか」

道重と竹内は鞄からワックスを取り出して、グッシャグシャにセットしてくる。
なんてバカな奴らだ。

思い切り3人をどついて携帯のカメラで頭を見ると、それは無残な鳥の巣頭に。

「ぎゃー!!!何この頭ー!!」

「お似合いじゃねーか!」

腹を抱えて笑いながら私の写真を撮りまくり、SNSにアップしているではないか。
相原は私の髪の毛を手櫛で整えて、今度はツノを立てて笑い始める。

「よし!その頭で飯行くぞ!」

「高級な焼肉なら行ってあげようではないか」

「じゃー全員でこの頭にしよーぜ!」

竹内ははしゃぎながら短い髪の毛をかき集めてツノを立て、それに便乗して2人共もツノを立てる。
全員で写真を撮り、はしゃぎながら焼肉店へ。

イケメンな店員さんの失笑している姿は、私の胸に深く突き刺さった。
なぜ、イケメンが居る時に限って私は失態ばかり晒すのだろうか…。

「あ、てかさ聞いた?あの土地、社長の息子が買って立花工業って名前で会社出すってさ!」

「え、嘘!ほんとに?」

「本当だって!また便利屋始めるらしいから、俺達全員で働こうよ!」

ウキウキしながらメール画面を私に見せてきた道重。
どうやら葬式の後で立花さんと連絡先を交換していたらしく。

来年の4月からまた、復活するとの内容が映されていた。

「でもあの人、お金あるのかな?」

「社長の遺産、受取人が息子さんだけだったらしいよ!だからそのお金で二代目社長としてやるんだってさ!」

よく更生したものだと思いながらビールを飲む。
立花は未成年が!と怒っていたが、竹内と道重はどんどん私に酒を回した。

「お祝いだ今日は!飲め飲め!」

四人で6万越えした焼肉。
私を除いて3人で割り勘し、カラオケに行って解散する。

ふと携帯を開くと、大量の朋美からの着信が入っているでは無いか。
そういえば私、ほったらかして来た…

「もしもーし…、愛しの皐月ちゃんだよ!テヘッ」

『誤魔化すんじゃないわよ!!妊婦を置いて一人でどっか行くなんて!あんた今何処にいんの!!』

ちびってしまいそうな程、鬼の様な電話だった…。
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