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間違え探し
6.5
しおりを挟む皐月から連絡が途絶えて、もう二週間が経った。
朋樹は部屋に閉じ籠り、私も帰って来ない人を待ち続けるストレスで髪の毛が抜け落ちる。
ボーッと窓の外を眺めていると、ようやく携帯が鳴った。
皐月かと思い画面を見ると、それは知らない番号からで。
「…はい」
恐る恐る電話を取ると、皐月のお母さんからだった。
『どーせ皐月の事だから連絡しないと思ったのよ。よく聞きなさい、貴女のご両親、過労で倒れて入院してるのよ』
「…えっ?入院…?」
『帰って来ない人を待ち続けてどうだった?苦しかったかしら?でもそれは貴女がご両親にした事よ』
鋭く指摘する皐月のお母さんは、私からしたら恐怖でしか無かった。
何も答えず押し黙っていると、深い溜息が電話越しから聞こえる。
『自分がした事は必ず返ってくるの。それも巨大に膨れ上がってね。家族をここまで追い込んだ貴女に一体、何が出来るのかしら?』
「追い込んだって…!私はそんなつもり無かったんですよ!?憶測で言わないでよ!!」
『悪意の無い物程、タチの悪い物は無いわよ。憶測?事実じゃない。貴女このままじゃ、本当に大切な人も失うわよ。』
話にならない皐月の友人の電話を切り、二階へとあがる。
響君は心配そうに皐月の手を握ったまま眠っていた。
「馬鹿な子ね、お人好しな所はお父さんに似たのかしら」
私が話をしてから二週間、皐月は眠れぬ夜を過ごした。
考えて、考えて、熱を出して倒れた皐月。
こんな事で倒れていては、人を救う事など出来やしないのに。
響君に布団を掛け、私は大葉さん達のいる病院へと向かった。
面会時間が終わる1時間前に到着し、病室の中へ入る。
心、此処に有らず。
その言葉がぴったりだと言える程、やつれきっていて。
「あら…、葛原さん」
弱々しい声で呟く母親。
どうやら夫婦別々の病室に入れられたみたいだ。
「何処から間違えたんでしょうか…、朋美がおかしくなっていった頃から、高校に入った頃から、もっと前から…。考えても考えても、わからないんです」
缶コーヒーを私に手渡し、ボロボロと泣き始める。
殆ど話した事の無い人に身の上話をする位、追い詰められているのか。
「間違いを探しても楽になんかなれやしませんよ。何も考えない様に働き詰めだったんでしょう、何か変わりましたか?」
少し考えて、全てを諦めたように小さく鼻で笑って、こう答えた。
「娘を産んだ時点で、間違いだったのだろうと思うようになりましたよ。娘は、私から全てを奪ったのに、それに気付きやしない。」
一体誰が、こう言わせてしまうのか。
らしくない事を、考えさせられる夜となってしまった。
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