朧月

カフェ・オーレ

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答えの無い迷路

7.0

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何処で間違えたの?

何が正しい答えだったの?

本当は全部解っている。
でも受け入れれる程、私は強く無い。

保釈金が支払われたと警察に言われ、私は狭くて窮屈な刑務所を出た。
勿論、迎えなども無く。

とぼとぼと家までの道のりを歩き、玄関に手を掛けようとした時、扉に貼られた貼り紙が視界に入った。

「…え?」

パッと後ろを振り返ると、売物件と書かれた看板が置かれている。
貼り紙にも同じ内容が書いてあって。

「どう言う事…?」

何度開けようとしても開かない扉。
縁側の方まで走って中の様子を見ると、家具や家電等が何も無い部屋が視界に入る。

急いでお母さんに電話をするが、もう繋がらなくなっていて。
お父さんも、朋樹の携帯も、全て解約されていた。

「あら、もう出てきたの?」

声のする方を見ると、皐月の母親が呑気に煙草を吸いながら空っぽの家を眺めている。

「だから言ったでしょ?巨大に膨れ上がって返ってくるって。よかったわねぇ」

私目掛けて煙草を投げ、フッと鼻で笑いながら皐月の母親は帰って行った。
その姿に、私はとても苛立ちを覚えた。

『…はい?』

「ねぇ、杏果の家にしばらく置いて欲しいんだけど…」

帰る場所が無いため、とりあえず杏果に電話を掛けてみる。
だが、反応はあまりにも冷たくて。

『悪いけど、あんたがそんな嫌な奴に成り下がるとは思ってなかった。自分がした事で後悔し続ければ良いよ』

一方的に切られた電話。
美菜も同じ反応で、すぐに電話を切られてしまう。

「皐月が何か言いふらしたのね…酷すぎるよこんなの…」

残り少ない現金を持って、来た道を引き返してバスに乗り、駅まで向かう。
切符を買って電車に乗り、懐かしい風景が目に入り始めた。

電車を降りて昔よく行っていたコンビニに入って飲み物を一つ買う。
外に出て歩き始めると、アパートから出て来た皐月と相原君を見つけて。

「…どーなってんの…?」

私がこんなに苦しんでいるのに、皐月は知らんぷりして1人だけ幸せそうになっていて。
後をつけて職場を特定し、その日は漫画喫茶で一夜を明かす。

「どうして私だけが…」

とにかくお金がいる。
そう考えて、満喫で手当たり次第に声をかけた。
食らいついてくる男はやはり多くて。

「あぁ…気持ちいいね…」

「イっちゃいなよ、おじさん」

トイレで行為をしたのはどれくらいぶりだろうか。
明け方までとっかえひっかえし、7万のお金を稼ぐ事が出来た。

「誰か、止めてよ…」

そんな声など、誰にも届く事は無く。
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