56 / 115
57話 うらやまけしからん
館の完成より季節は2度ほど巡り、春が来た。
ただの溝だった堀にもイバラが広がりエグい感じになっている。
地震より3年と少し。
森は少しずつ落ち着きを取り戻しつつあり、移住者の流入は目に見えて減少した。
現在のごちゃ混ぜ里は増えも増えたり39戸120人である。
食料の自給は頑張っているものの当然のように間に合わず、大部分を交易に頼った状態だ。
今では隊商やオオカミ人の集落と大量に食料を取引している。
特にオオカミ人の集落ではイヌ人やコヨーテ人など近しい種族が集まり、狩猟と農耕が盛んだ。
働き者のイヌ人と賢いコヨーテ人を強いオオカミ人が守る社会構成になっており、かなりの食料を生産してくれている。
ごちゃ混ぜ里とは違い、長のガイを中心としたオオカミ人優位の社会を築いているが、うまく回っているようだ。
ごちゃ混ぜ里とオオカミ人、リザードマンの里の間には簡単な獣道も拓かれ行き来も早くなった。
ルートを定め、大人数で往復して作った道だが、あるのとないのでは大違いだ。
これにより曲がりくねった川沿いを歩くよりも、半分ほどの時間で往き来できるようになった。
直線距離では思いのほか近く、驚いてしまったほどだ。
里の皆で変わったところはコナンとフローラ、そしてケハヤ夫妻に子が産まれた。
特にコナンとフローラの子はエルフとヤギ人の混血だ。
瞳のかたちは丸く、蹄もない。
小さな角がある以外はエルフに近い姿だ。
里では何度か死産や新生児の死もあったが、彼らは無事に過ごしている。
アシュリンに懐妊の気配はないが、彼女は肥えた。
人が増えたことで「里長の妻の仕事だ」と住民たちの間に入り、さまざまな調整をしてくれていたのだが……狩で森を駆け回っていたアシュリンが狩りを控えたのだ。
仕方ないだろう。
俺は痩せた女よりふくよかなタイプが好みだ。
(だけど、なんか思ってたのと違うんだよなあ)
アシュリンはたしかにふくよかになった。
だが、胸や尻が大きくなる様子が全くないのだ。
不思議なことである。
「ど、どうしたんだ?」
俺の視線に気づいたアシュリンが寄ってきたが、まさか乳が小さいことにガッカリしていたとはいえない。
「あー、いや……その、一緒に狩りに行かないか?」
「そ、そうか! えへへ、最近ベルクと出かけてないからな」
俺は「できれば2人で遠くに行きたいな」と誘いアシュリンを喜ばせた。
森歩きはかなり体力を使う。
せめて健康的に痩せてもらいたい。
「……はあ、お二人は仲良しでいいですね。私ばっかり――」
俺とアシュリンを見て恨み節を吐くのはヤギ人の娘モリーだ。
モリーはすっかり結婚適齢期なのだが良縁に恵まれずにやさぐれていた。
「聞いてくださいよ、ピーターったらウサギ人のベッキーちゃんとケリーちゃんを家に連れ込んでいたんですよ……子供のクセにっ」
「はは、ピーターもやるなあ」
ピーターはすっかり大きくなり、アゴヒゲも生え角も立派になった。
数が増えたパコの世話を真面目にこなす働き者である。
また、コナンやフローラと共に入門者が増えた柔の師範代もしていた。
幼さの残る年齢だが、一人前に働き、指導力のあるピーターは同年代の憧れなのだ。
そりゃ、モテるだろう。
「笑いごとじゃないですよっ! 弟が女の子に挟まれてキャッキャウフフと遊んでたのを目撃した私の気持ちが分かりますか!? なんであの子ばかり――」
「も、モリー、落ち着くんだ。ベルクも泣かしたらダメじゃないか」
アシュリンが抗議してくるが、これは俺は悪くないだろう。
モリーはいま、絶賛恋人募集中なのだが――うまくいかないらしい。
トラ人やクマ人ともつきあってた時期があるのだが長続きしないのだ。
「なんでですか、私のなにが重いんですか? ベルクさんは私が編んだ服を喜んで着てくれたのに」
「そうだなあ、色々な価値観の種族がいるからなあ」
モリーはかなり尽くすタイプのようだ。
俺の場合、モリーは妹みたいな存在だし手編みの服をプレゼントされれば喜んで着るが……協調性が低いトラ人などには不評だったらしい。
「はあー、このままだといき遅れちゃいます。ベルクさんが貰ってください」
「そうだなあ、それも悪くないけどな」
当たり前だが、これは冗談だ(念のため)。
ヤギ人の体格は獣人の中でも小柄でモリーと俺では体格差がありすぎる。
それが分かってるからこそ、こうして互いに冗談をいえるのだ。
「こ、こらっベルク! モリーとベタベタしたらダメだ」
「いいじゃないですかっ! ベルクさんは喜んでますっ」
たしかに嬉しいのだが、嫁の機嫌も大事なので難しいところだ。
まあ、アシュリンもモリーもふざけているだけではあるが。
「あーあ、お婆ちゃんから編み物や料理を一生懸命すれば良縁があるって教わったのにな……私も柔をすればよかったかも」
「も、モリーはかわいいのにな。獣人は見る目がなさすぎだぞ」
アシュリンが慰めてるが、妹として家族としてのかわいさと、恋人や妻に求めるものは違う面もある。
これはモリーがフラれた相手に聞かねば分からないことだろう。
3人でダラダラと遊んでいたらホネイチが来た。
どうやら俺を探していたらしい。
ホネイチは輝くオリハルコンの兜とすね当て、硬革の鎧を身につけている。
スケルトンたちは数を増やし、現在はスケサンを入れて11人だ。
任務に忠実な彼らは治安の維持のためにも働き、パトロール中は武装することになっている。
ちなみにホネイチはスケサン(オフィサー)の補佐でサージェントという役割らしい。
彼の身なりは他のスケルトンよりも豪華だ。
「お、どうした?」
俺が訊ねると、ホネイチは身ぶりでなにかを伝えようとしている。
どうやら着いてきて欲しいようだ。
「スケサンさんがよんでるみたいですね」
モリーが解読し、俺に伝えてくれた。
彼女は骨語(?)がうまいのだ。
「そうか、すぐ行くよ。アシュリン、モリー、またあとでな。モリーは夕飯は館で食べろよ。ピーターも姉ちゃんに隠れて色々したいのさ」
モリーがヒステリックな奇声をあげたが、あとはアシュリンに任せればいいだろう。
ホネイチに従って里の居住区に行くと、こちらでもヒステリックな女の声が聞こえた。
あまり近づきたくない。
「この商売女! ウチの亭主が貢いだものを返しなっ!!」
「なにを勘違いしてるんだか。アンタがいったように商売じゃないか? 食い逃げされるのは御免だよ」
2人の女がもみ合い、スケサンが「やめぬか」と引き離している。
女はイヌ人の女房とキツネ人の娼婦だ。
イヌ人の亭主は居心地悪そうに小さくなっている。
「はあ、スケサンお疲れさん。大体の状況は把握した」
「うむ、里長としてこの場を治めてくれ」
俺の今の仕事はこれだ。
ごちゃ混ぜ里は急激に拡大したが、いかんせん寄り合い所帯。
毎日どこかでくだらない争いが起き、その度に呼ばれて仲裁するのだ。
力仕事もしているが、今はなんとなく畑や猟も個人や家単位で世話をすることが多く、あまりお呼びではない現実もある。
「あー、そこの亭主がサンディーに貢いで女房にバレたか」
「はんっ、アタシは自分の仕事をしてるだけさ。体を売って対価をもらう。なにが悪いんだい」
サンディーとはキツネ人の娼婦の名前だ。
細面だが、なかなかグラマーな体つきをしている。
ふっさりとした尻尾の付け根がどうなっているのか確認したいものだが、残念ながら俺は相手をしてもらったことはない。
「別に悪かないさ」
「ちょっとなにいってるんだい!! このバカは子供の服のためにと取っといたヤギの毛皮を3枚もこの女にくれてやったのさ! 返して貰うよ!!」
イヌ人の女房の言い分も分かるが、これは亭主が悪い。
だが、正論を聞かされても彼女は納得しないだろう。
(感情を優先する者には感情で応える……スケサンから教えてもらったアシュリンの操縦方法だが、これがいつも助けてくれるんだよな)
俺は「じゃあこうしよう」と争う両者の間に割りこんだ。
「亭主は今後、サンディーを抱くことは禁止だ。サンディーはお得意さんを失うんだから、これはサンディーの損だ」
これを聞いたサンディーが声をあげかけたが「まあ最後までまて」と俺が止めた。
「次にサンディーは自らの仕事で得た毛皮を返す必要はない。これは女房にとっての損だな」
これには女房のみならず他の女たちも否定的にざわつく。
女衆にとって娼婦は男を誑かす悪人である。
これは仕方ない面もある。
「そして俺だ。この場を治めた俺が、そちらの子供たちに肩かけのケープでも送ろう。これは俺の持ち出しだから俺の損だな。両者と間に入った俺がそれぞれ損をしたのだから納得しろ」
この言葉にイヌ人の女房は面食らった顔をし、サンディーは嬉しそうにニンマリと笑った。
「最後にそこの亭主か。今後、サンディーを口説いたらパコの毛刈り用のハサミでチンコを切り落とすぞ! あとは女房にうんと叱ってもらえ!」
縮こまっていた亭主は急に矛先が向いたために股間を押さえながら小さく「ヒエッ」と悲鳴をあげた。
その様子がおかしかったので皆が笑い、その場は解散となる。
「見事に治めてみせたな。感服したぞ」
スケサンが嬉しそうに声をかけてきた。
スケルトンの隊長であるスケサンは羽根飾りがついたオリハルコンの兜を被り、いかにも立派だ。
「よせよ、毎回こうはいかないさ。たまたまだよ」
これは謙遜ではなく本当のことだ。
毎回こんなにキレイには治まらず、決闘までもつれ込むこともあるし、乱闘になったこともある。
人をまとめるのは難しく、試行錯誤の毎日だ。
「あ、サンディーちょっと待て」
俺はサンディーを呼び止め、モリーに男を誘惑する術を教えてやってくれと依頼した。
効果があるかどうかは分からないが気休めにはなるだろう。
ついでにピーターの姿を確認したら、たしかにウサギ人の女の子たちと楽しそうにしていた。
うらやまけしからん。
■■■■
ごちゃ混ぜ里
森を襲った大地震の影響で、被災した難民や移住者を吸収し急拡大した。
寄り合い所帯であり、さまざまな価値観をもつ多くの種族が住むために喧嘩やもめ事が絶える日はない。
食料事情は生産に消費が追いついておらず、輸入に頼っている。
オリハルコンの道具は少しずつ使われるようになってきた。
ただの溝だった堀にもイバラが広がりエグい感じになっている。
地震より3年と少し。
森は少しずつ落ち着きを取り戻しつつあり、移住者の流入は目に見えて減少した。
現在のごちゃ混ぜ里は増えも増えたり39戸120人である。
食料の自給は頑張っているものの当然のように間に合わず、大部分を交易に頼った状態だ。
今では隊商やオオカミ人の集落と大量に食料を取引している。
特にオオカミ人の集落ではイヌ人やコヨーテ人など近しい種族が集まり、狩猟と農耕が盛んだ。
働き者のイヌ人と賢いコヨーテ人を強いオオカミ人が守る社会構成になっており、かなりの食料を生産してくれている。
ごちゃ混ぜ里とは違い、長のガイを中心としたオオカミ人優位の社会を築いているが、うまく回っているようだ。
ごちゃ混ぜ里とオオカミ人、リザードマンの里の間には簡単な獣道も拓かれ行き来も早くなった。
ルートを定め、大人数で往復して作った道だが、あるのとないのでは大違いだ。
これにより曲がりくねった川沿いを歩くよりも、半分ほどの時間で往き来できるようになった。
直線距離では思いのほか近く、驚いてしまったほどだ。
里の皆で変わったところはコナンとフローラ、そしてケハヤ夫妻に子が産まれた。
特にコナンとフローラの子はエルフとヤギ人の混血だ。
瞳のかたちは丸く、蹄もない。
小さな角がある以外はエルフに近い姿だ。
里では何度か死産や新生児の死もあったが、彼らは無事に過ごしている。
アシュリンに懐妊の気配はないが、彼女は肥えた。
人が増えたことで「里長の妻の仕事だ」と住民たちの間に入り、さまざまな調整をしてくれていたのだが……狩で森を駆け回っていたアシュリンが狩りを控えたのだ。
仕方ないだろう。
俺は痩せた女よりふくよかなタイプが好みだ。
(だけど、なんか思ってたのと違うんだよなあ)
アシュリンはたしかにふくよかになった。
だが、胸や尻が大きくなる様子が全くないのだ。
不思議なことである。
「ど、どうしたんだ?」
俺の視線に気づいたアシュリンが寄ってきたが、まさか乳が小さいことにガッカリしていたとはいえない。
「あー、いや……その、一緒に狩りに行かないか?」
「そ、そうか! えへへ、最近ベルクと出かけてないからな」
俺は「できれば2人で遠くに行きたいな」と誘いアシュリンを喜ばせた。
森歩きはかなり体力を使う。
せめて健康的に痩せてもらいたい。
「……はあ、お二人は仲良しでいいですね。私ばっかり――」
俺とアシュリンを見て恨み節を吐くのはヤギ人の娘モリーだ。
モリーはすっかり結婚適齢期なのだが良縁に恵まれずにやさぐれていた。
「聞いてくださいよ、ピーターったらウサギ人のベッキーちゃんとケリーちゃんを家に連れ込んでいたんですよ……子供のクセにっ」
「はは、ピーターもやるなあ」
ピーターはすっかり大きくなり、アゴヒゲも生え角も立派になった。
数が増えたパコの世話を真面目にこなす働き者である。
また、コナンやフローラと共に入門者が増えた柔の師範代もしていた。
幼さの残る年齢だが、一人前に働き、指導力のあるピーターは同年代の憧れなのだ。
そりゃ、モテるだろう。
「笑いごとじゃないですよっ! 弟が女の子に挟まれてキャッキャウフフと遊んでたのを目撃した私の気持ちが分かりますか!? なんであの子ばかり――」
「も、モリー、落ち着くんだ。ベルクも泣かしたらダメじゃないか」
アシュリンが抗議してくるが、これは俺は悪くないだろう。
モリーはいま、絶賛恋人募集中なのだが――うまくいかないらしい。
トラ人やクマ人ともつきあってた時期があるのだが長続きしないのだ。
「なんでですか、私のなにが重いんですか? ベルクさんは私が編んだ服を喜んで着てくれたのに」
「そうだなあ、色々な価値観の種族がいるからなあ」
モリーはかなり尽くすタイプのようだ。
俺の場合、モリーは妹みたいな存在だし手編みの服をプレゼントされれば喜んで着るが……協調性が低いトラ人などには不評だったらしい。
「はあー、このままだといき遅れちゃいます。ベルクさんが貰ってください」
「そうだなあ、それも悪くないけどな」
当たり前だが、これは冗談だ(念のため)。
ヤギ人の体格は獣人の中でも小柄でモリーと俺では体格差がありすぎる。
それが分かってるからこそ、こうして互いに冗談をいえるのだ。
「こ、こらっベルク! モリーとベタベタしたらダメだ」
「いいじゃないですかっ! ベルクさんは喜んでますっ」
たしかに嬉しいのだが、嫁の機嫌も大事なので難しいところだ。
まあ、アシュリンもモリーもふざけているだけではあるが。
「あーあ、お婆ちゃんから編み物や料理を一生懸命すれば良縁があるって教わったのにな……私も柔をすればよかったかも」
「も、モリーはかわいいのにな。獣人は見る目がなさすぎだぞ」
アシュリンが慰めてるが、妹として家族としてのかわいさと、恋人や妻に求めるものは違う面もある。
これはモリーがフラれた相手に聞かねば分からないことだろう。
3人でダラダラと遊んでいたらホネイチが来た。
どうやら俺を探していたらしい。
ホネイチは輝くオリハルコンの兜とすね当て、硬革の鎧を身につけている。
スケルトンたちは数を増やし、現在はスケサンを入れて11人だ。
任務に忠実な彼らは治安の維持のためにも働き、パトロール中は武装することになっている。
ちなみにホネイチはスケサン(オフィサー)の補佐でサージェントという役割らしい。
彼の身なりは他のスケルトンよりも豪華だ。
「お、どうした?」
俺が訊ねると、ホネイチは身ぶりでなにかを伝えようとしている。
どうやら着いてきて欲しいようだ。
「スケサンさんがよんでるみたいですね」
モリーが解読し、俺に伝えてくれた。
彼女は骨語(?)がうまいのだ。
「そうか、すぐ行くよ。アシュリン、モリー、またあとでな。モリーは夕飯は館で食べろよ。ピーターも姉ちゃんに隠れて色々したいのさ」
モリーがヒステリックな奇声をあげたが、あとはアシュリンに任せればいいだろう。
ホネイチに従って里の居住区に行くと、こちらでもヒステリックな女の声が聞こえた。
あまり近づきたくない。
「この商売女! ウチの亭主が貢いだものを返しなっ!!」
「なにを勘違いしてるんだか。アンタがいったように商売じゃないか? 食い逃げされるのは御免だよ」
2人の女がもみ合い、スケサンが「やめぬか」と引き離している。
女はイヌ人の女房とキツネ人の娼婦だ。
イヌ人の亭主は居心地悪そうに小さくなっている。
「はあ、スケサンお疲れさん。大体の状況は把握した」
「うむ、里長としてこの場を治めてくれ」
俺の今の仕事はこれだ。
ごちゃ混ぜ里は急激に拡大したが、いかんせん寄り合い所帯。
毎日どこかでくだらない争いが起き、その度に呼ばれて仲裁するのだ。
力仕事もしているが、今はなんとなく畑や猟も個人や家単位で世話をすることが多く、あまりお呼びではない現実もある。
「あー、そこの亭主がサンディーに貢いで女房にバレたか」
「はんっ、アタシは自分の仕事をしてるだけさ。体を売って対価をもらう。なにが悪いんだい」
サンディーとはキツネ人の娼婦の名前だ。
細面だが、なかなかグラマーな体つきをしている。
ふっさりとした尻尾の付け根がどうなっているのか確認したいものだが、残念ながら俺は相手をしてもらったことはない。
「別に悪かないさ」
「ちょっとなにいってるんだい!! このバカは子供の服のためにと取っといたヤギの毛皮を3枚もこの女にくれてやったのさ! 返して貰うよ!!」
イヌ人の女房の言い分も分かるが、これは亭主が悪い。
だが、正論を聞かされても彼女は納得しないだろう。
(感情を優先する者には感情で応える……スケサンから教えてもらったアシュリンの操縦方法だが、これがいつも助けてくれるんだよな)
俺は「じゃあこうしよう」と争う両者の間に割りこんだ。
「亭主は今後、サンディーを抱くことは禁止だ。サンディーはお得意さんを失うんだから、これはサンディーの損だ」
これを聞いたサンディーが声をあげかけたが「まあ最後までまて」と俺が止めた。
「次にサンディーは自らの仕事で得た毛皮を返す必要はない。これは女房にとっての損だな」
これには女房のみならず他の女たちも否定的にざわつく。
女衆にとって娼婦は男を誑かす悪人である。
これは仕方ない面もある。
「そして俺だ。この場を治めた俺が、そちらの子供たちに肩かけのケープでも送ろう。これは俺の持ち出しだから俺の損だな。両者と間に入った俺がそれぞれ損をしたのだから納得しろ」
この言葉にイヌ人の女房は面食らった顔をし、サンディーは嬉しそうにニンマリと笑った。
「最後にそこの亭主か。今後、サンディーを口説いたらパコの毛刈り用のハサミでチンコを切り落とすぞ! あとは女房にうんと叱ってもらえ!」
縮こまっていた亭主は急に矛先が向いたために股間を押さえながら小さく「ヒエッ」と悲鳴をあげた。
その様子がおかしかったので皆が笑い、その場は解散となる。
「見事に治めてみせたな。感服したぞ」
スケサンが嬉しそうに声をかけてきた。
スケルトンの隊長であるスケサンは羽根飾りがついたオリハルコンの兜を被り、いかにも立派だ。
「よせよ、毎回こうはいかないさ。たまたまだよ」
これは謙遜ではなく本当のことだ。
毎回こんなにキレイには治まらず、決闘までもつれ込むこともあるし、乱闘になったこともある。
人をまとめるのは難しく、試行錯誤の毎日だ。
「あ、サンディーちょっと待て」
俺はサンディーを呼び止め、モリーに男を誘惑する術を教えてやってくれと依頼した。
効果があるかどうかは分からないが気休めにはなるだろう。
ついでにピーターの姿を確認したら、たしかにウサギ人の女の子たちと楽しそうにしていた。
うらやまけしからん。
■■■■
ごちゃ混ぜ里
森を襲った大地震の影響で、被災した難民や移住者を吸収し急拡大した。
寄り合い所帯であり、さまざまな価値観をもつ多くの種族が住むために喧嘩やもめ事が絶える日はない。
食料事情は生産に消費が追いついておらず、輸入に頼っている。
オリハルコンの道具は少しずつ使われるようになってきた。
あなたにおすすめの小説
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
過労死コンサル、貧乏貴族に転生す~現代農業知識と魔法で荒地を開拓していたら、いつの間にか世界を救う食糧大国になっていました~
黒崎隼人
ファンタジー
農業コンサルタントとして過労死した杉本健一は、異世界の貧乏貴族ローレンツ家の当主として目覚めた。
待っていたのは、荒れた土地、飢える領民、そして莫大な借金!
チートスキルも戦闘能力もない彼に残された武器は、前世で培った「農業知識」だけだった。
「貴族が土を耕すだと?」と笑われても構わない!
輪作、堆肥、品種改良! 現代知識と異世界の魔法を組み合わせた独自農法で、俺は自らクワを握る「耕作貴族」となる!
元Sランク冒険者のクールなメイドや、義理堅い元騎士を仲間に迎え、荒れ果てた領地を最強の農業大国へと変えていく、異色の領地経営ファンタジー!
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
本の虫な転生赤ちゃんは血塗りの宰相の義愛娘~本の世界に入れる『ひみちゅのちから』でピンチの帝国を救ったら、冷酷パパに溺愛されてます
青空あかな
ファンタジー
ブラック企業に勤める本の虫でアラサーOLの星花は、突然水に突き落とされた衝撃を感じる。
藻掻くうちに、自分はなぜか赤ちゃんになっていることを理解する。
溺死寸前の彼女を助けたのは、冷徹な手腕により周囲から「血塗りの宰相」と恐れられるアイザック・リヴィエール公爵だった。
その後、熱に浮かされながら見た夢で前世を思い出し、星花は異世界の赤ちゃんに転生したことを自覚する。
目覚めた彼女は周囲の会話から、赤ちゃんの自分を川に落としたのは実の両親だと知って、強いショックを受けた。
前世の両親もいわゆる毒親であり、今世では「親」に愛されたかったと……。
リヴィエール公爵家の屋敷に連れて行かれると、星花にはとても貴重な聖属性の魔力があるとわかった。
アイザックに星花は「ステラ」と名付けられ彼の屋敷で暮らすようになる。
当のアイザックとはほとんど会わない塩対応だが、屋敷の善良な人たちに温かく育てられる。
そんなある日、精霊と冒険する絵本を読んだステラはその世界に入り込み、実際に精霊と冒険した。
ステラには「本の世界に入り込み、その本の知識や内容を実際に体験したように習得できる特別な力」があったのだ。
彼女はその力を使って、隣国との条約締結に関する通訳不在問題や皇帝陛下の病気を治す薬草探索など、様々な問題を解決する。
やがて、アイザックは最初は煩わしかったはずのステラの活躍と愛らしさを目の当たりにし、彼女を「娘として」大切に思うようになる。
これは赤ちゃんに転生した本好きアラサーの社畜OLが、前世の知識と本好きの力を活かして活躍した結果、冷徹な義父から溺愛される話である。
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ