16 / 19
十五話 パティスリープルミエ
しおりを挟む
マイホームは、中に入ると大きな広間があり、奥にはキッチンなどの設備、二階に寝室が5部屋。
「あの……私は何をすればいいんですか?」
そこに派遣されるギルド職員は、主に在庫の管理や今後の方針などの提案。
本部への報告は特段のことがなければ不要で、あとは食事の準備などが主な仕事となるらしい。
「今は特に……あ、そうだ!
じゃあさ、お客さんが来ても格好がつくように飾り付けをお願いするわ」
私はタルトに賞金の1万Gを渡して、オシャレなイメージで好きにしてもらうことにした。
私の感性よりも、長いことこの世界にいるタルトの方がいいお店になると思ったのだ。
「お客様って……何かお店を開くのですか?」
「え? だって私、戦闘職じゃないし。
サブクラスを使ってお菓子屋さんしようかと思ってるんだけど」
もちろん契約の指輪は欲しいし、強くなるに越したことはない。
しかしながら、現状では行けるダンジョンは無いに等しく、あまり目立つ行動も取りたくはないと考えていた。
どのみち目立つのであれば、サブクラスを活用したものの方が間違いは少ないだろう。
「あと、小麦粉とかバターの仕入れ先もあったら調べておいてぇー」
「え、あ、はい。わかりました」
さっそくどこかへ向かおうとするタルトだが、そう気負われては私も困ってしまう。
「タルトー、かたっ苦しいから敬語無しでやろうよ。
ギルドじゃそんな喋り方してなかったじゃん」
「え、あ……は、はいっ」
環境が変わり過ぎて困るかもしれないけれど、毎日不満を抱えながら深夜まで仕事をするよりはいいだろうと思う。
あとはアレだ……派遣されてきた新しい受付の人にはごめんなさい。
そんなことはともかく、私は素材集めに行ってこよう。
今のところ森か川辺でしか素材が手に入らないのだから。
さぁ出かけようかと思っていたら、急に扉が開いてフランがズカズカと中へ。
鍵をかけてはなかったが、この世界にはノックして入るとかいう習慣はないのだろうか?
「ど、どうした……のよ? フラン……」
何やら深刻な表情を浮かべるフラン相手に、私は辿々しく話しかける。
「私を……弟子にしてください!」
やや俯き気味で、そう話すフランの手は強く握られて小刻みに震えている。
先日の武闘祭で私が勝利してしまったからだろうか?
負けたら弟子入りしなくてはいけないルールでもあったのだろうか……?
『負けなくてよかった……』というのが正解なのか、勝ってしまったが故にこのようなトラブルに巻き込まれているのか?
「あ、あの……弟子は取ってないんですけど……」
私は恐る恐る断りの言葉を述べる。
「そんなこと言わないでお願いしますっ」
壁際まで迫られて、肩を掴まれ必死な形相が目の前にやってくる。
断ろうものなら自らの命を絶ってしまいそうなほど切迫したフランの面持ち。
「わ、分かったから理由だけでも聞かせてよ。
いきなり弟子にって言われても、私に教えられることなんて何も無いと思うけど……」
「あ、えっと……」
そもそも魔物使いと双剣士では戦い方が全く違う。
フランが私に何を教えてほしいというのだろうか?
「あの……その……セルフィちゃんが可愛くって、その……」
表情は一変、私の肩に乗っていたセルフィを見つめ出して、赤らむ表情を見せるフラン。
まさかの、強さとは関係のない理由のようだ……いや、むしろその方がありがたい気もするが。
「そ、そう……それだったら店番とかやってみない?
もちろんたまには素材集めもするけど、ずっとセルフィと一緒にいられるんじゃないかな?」
「やりますっ! もちろん、やらせていただきますっ!」
即答だった。まだお店をどうするかも考えていないというのに。
そもそも給料などは聞かなくても良いのか?
私が何をしようと思っているのかも聞かずに、感情だけで店番を引き受けてしまうなんて、さすがに子供というべきか。
「そういえば親御さんの許可は得ているの?
さすがに私も勝手に雇うってわけには……」
「大丈夫ですよ、いませんからっ」
あっけらかんとそう答えるフラン。
随分前に流行病で亡くなっていて、ギルドの庇護のもと生活してきたそうだ。
まぁ、店としては当分の間はやることもないのだし、一緒に素材集めでもする分には今までの生活と何も変わらないそうだ。
部屋を一つ好きに使って良い旨を伝えると、荷物を取りにいくと言って出て行ってしまった。
いいのか? こんなにも簡単に私を信用などしてしまって……
こうしてマイホームを手に入れた私は、新しい仲間の元ギルド受付のタルトと、双剣士フランを迎え入れて一つのクランを作り上げた。
クランと言うよりも、ただ私がやりたいことに、二人を付き合わせているだけなのだけど。
それでもメリットは色々とあるから、別に構わないよね……
「あの……私は何をすればいいんですか?」
そこに派遣されるギルド職員は、主に在庫の管理や今後の方針などの提案。
本部への報告は特段のことがなければ不要で、あとは食事の準備などが主な仕事となるらしい。
「今は特に……あ、そうだ!
じゃあさ、お客さんが来ても格好がつくように飾り付けをお願いするわ」
私はタルトに賞金の1万Gを渡して、オシャレなイメージで好きにしてもらうことにした。
私の感性よりも、長いことこの世界にいるタルトの方がいいお店になると思ったのだ。
「お客様って……何かお店を開くのですか?」
「え? だって私、戦闘職じゃないし。
サブクラスを使ってお菓子屋さんしようかと思ってるんだけど」
もちろん契約の指輪は欲しいし、強くなるに越したことはない。
しかしながら、現状では行けるダンジョンは無いに等しく、あまり目立つ行動も取りたくはないと考えていた。
どのみち目立つのであれば、サブクラスを活用したものの方が間違いは少ないだろう。
「あと、小麦粉とかバターの仕入れ先もあったら調べておいてぇー」
「え、あ、はい。わかりました」
さっそくどこかへ向かおうとするタルトだが、そう気負われては私も困ってしまう。
「タルトー、かたっ苦しいから敬語無しでやろうよ。
ギルドじゃそんな喋り方してなかったじゃん」
「え、あ……は、はいっ」
環境が変わり過ぎて困るかもしれないけれど、毎日不満を抱えながら深夜まで仕事をするよりはいいだろうと思う。
あとはアレだ……派遣されてきた新しい受付の人にはごめんなさい。
そんなことはともかく、私は素材集めに行ってこよう。
今のところ森か川辺でしか素材が手に入らないのだから。
さぁ出かけようかと思っていたら、急に扉が開いてフランがズカズカと中へ。
鍵をかけてはなかったが、この世界にはノックして入るとかいう習慣はないのだろうか?
「ど、どうした……のよ? フラン……」
何やら深刻な表情を浮かべるフラン相手に、私は辿々しく話しかける。
「私を……弟子にしてください!」
やや俯き気味で、そう話すフランの手は強く握られて小刻みに震えている。
先日の武闘祭で私が勝利してしまったからだろうか?
負けたら弟子入りしなくてはいけないルールでもあったのだろうか……?
『負けなくてよかった……』というのが正解なのか、勝ってしまったが故にこのようなトラブルに巻き込まれているのか?
「あ、あの……弟子は取ってないんですけど……」
私は恐る恐る断りの言葉を述べる。
「そんなこと言わないでお願いしますっ」
壁際まで迫られて、肩を掴まれ必死な形相が目の前にやってくる。
断ろうものなら自らの命を絶ってしまいそうなほど切迫したフランの面持ち。
「わ、分かったから理由だけでも聞かせてよ。
いきなり弟子にって言われても、私に教えられることなんて何も無いと思うけど……」
「あ、えっと……」
そもそも魔物使いと双剣士では戦い方が全く違う。
フランが私に何を教えてほしいというのだろうか?
「あの……その……セルフィちゃんが可愛くって、その……」
表情は一変、私の肩に乗っていたセルフィを見つめ出して、赤らむ表情を見せるフラン。
まさかの、強さとは関係のない理由のようだ……いや、むしろその方がありがたい気もするが。
「そ、そう……それだったら店番とかやってみない?
もちろんたまには素材集めもするけど、ずっとセルフィと一緒にいられるんじゃないかな?」
「やりますっ! もちろん、やらせていただきますっ!」
即答だった。まだお店をどうするかも考えていないというのに。
そもそも給料などは聞かなくても良いのか?
私が何をしようと思っているのかも聞かずに、感情だけで店番を引き受けてしまうなんて、さすがに子供というべきか。
「そういえば親御さんの許可は得ているの?
さすがに私も勝手に雇うってわけには……」
「大丈夫ですよ、いませんからっ」
あっけらかんとそう答えるフラン。
随分前に流行病で亡くなっていて、ギルドの庇護のもと生活してきたそうだ。
まぁ、店としては当分の間はやることもないのだし、一緒に素材集めでもする分には今までの生活と何も変わらないそうだ。
部屋を一つ好きに使って良い旨を伝えると、荷物を取りにいくと言って出て行ってしまった。
いいのか? こんなにも簡単に私を信用などしてしまって……
こうしてマイホームを手に入れた私は、新しい仲間の元ギルド受付のタルトと、双剣士フランを迎え入れて一つのクランを作り上げた。
クランと言うよりも、ただ私がやりたいことに、二人を付き合わせているだけなのだけど。
それでもメリットは色々とあるから、別に構わないよね……
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
12
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる