隠しスキルを手に入れた俺のうぬ惚れ人生

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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第2章 精霊王

4話 魔素と循環

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 ダンジョンとは不思議なものである。
 人の手の入らない奥深くまで、しっかりと建造したかのように石が敷き詰められているのだから。

 などと思っていた俺の心とは裏腹に、第二階層は大自然だった。
 もちろん天井はあるのだけど、壁というよりも木の根や葉で生い茂っており、隙間から時折魔物の動く姿も見えていたのだ。
こちらから魔物の姿が見えると、あちらも気付いているのかとドキドキしてしまう。

 ちなみにピルスルは知っていたようで平然としている。
 『第三階層は所々に溶岩が流れているから気をつけろ』と言われた。

「今日はキラーラビットか、ハズレじゃったな」
 そうピルスルがもらす。
 日によって出現する魔物が違うのか?

「何がハズレなんだ?」
「あれはダンジョンでもすごく弱いからな、ドロップが旨くない」
 あぁそういう事か、倒した魔物のドロップを装備していかないと、今の装備でさらに下へと下りなくちゃいけないのだったな。
 少し強くても良いものを落とす魔物の方が良いというわけか。

 『じゃあ戻るか?』と言うと『今更面倒くさい』と。

 『えーっと…、上位種もいるかもしれませんし慎重に行きましょう』と、レギ。
 『バケモンと一緒にいるとこっちまでバケモン扱いされそうや』と、ローズ。

 俺たちだってステータスが高いとかそういうわけではない。
 不意打ちでもくらったら危ないことは重々承知の上のはずなのだがな…。

「入って開口一番、ザコだと言われればな。俺だってそうなんだろうと思ってしまうだろ」
 きっとピルスルが悪い。気の抜けるような事を言うのだから。

「ん?儂は別に楽勝だの余裕だの口にした覚えはないがのぉ」
 そう話すピルスルの口元はゆるんでいる。

 ちくしょう、砦の件の怨みかなにかか?
 どうもこの世界で俺は…いじられまくっている気がしてならないのだが…。

 じゃあ気を引き締めなおして、と先へ進もうとする。

「うむ、ちょっと待ってくれ」
 ピルスルが皆の動きを止める。
「各々、この階層では武器をしっかり構えすぐに攻撃にうつれるようにな」

 何をするつもりなのだろう、と思ったら、ピルスルは突然『フンッ!』とスキルを発動させた。
「さぁ、これでこの階層には上位種のみになったろう、出会ったら全力で叩き込むぞ」

 発動したスキルによって、キラーラビットの気配が全て消えてしまったのだった。

ーーーーーーーーーー
【威圧】バトルマスターレベル25で習得
弱い魔物を近づけなくする
ーーーーーーーーーー

 俺たちは構えながら、次の階層への道を探す。
 一度は隙間から見えたのだけれど、道が続いてないものだから大きく回り込む必要があった。

 爆発させて道を作ってやろう、それがごく自然な考えだったと思うのだけれど…。
 『無駄やでやめとき』と俺が赤い矢を手に取った瞬間、アッサリと考えを見抜かれていたようで、ローズが携帯しているダガーで一本の幹に傷をつけて見せた。
 その傷が瞬時に塞がっていくのだった。

「ダンジョンは魔素で構築されとるもんや、傷ができても魔素が循環しとるんやで一瞬で元通りなんや」

 一時的に減少したり増加したりはするものの、自然と元の状態に戻ろうとするのだと。
 ただ、極端に外部に持って行ってしまったり、逆に外から入ってくると異変が起きるのだそうだ。
 100年前の戦ではそんな兵器もあったらしいのだけど、今では本当に使われていたのかどうかさえ怪しいのだとか。

 そういえば、イフリートも貯めただの使うだの言っていた。
 ヒカリの洞窟で極端に少なかったり溢れかえっていたウィスプも、実はそういう理由だったのだろうか…?
 奴の旧知の仲であるピルスルに聞いてみたのだけれど…。
 『俺はそういう知識には疎いからな、そういうのはアイリスの役目だ』と小声でしゃべっていた。

 アイリスとは誰なんだろうか、聞いてみたのだけどそれに関しては教えてはくれなかったのだ。
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