隠しスキルを手に入れた俺のうぬ惚れ人生

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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第2章 精霊王

24話 行商人

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「もうじき着くはずじゃ、戻ったら銀狼亭でメシにするか」

 あと半日も歩けば着くだろう。リキングバウトを出発した日に見た風景がそこにあった。
 半日がもう少しかどうかはわからないが、ピルスル的にはもう少しなのだろう。

「あんなぎょうさん魔物おったのに、ほとんど出会わんかったなぁ」
 そう、皆が同じ疑問を抱いていた。
 やはり各地の魔素を奪っている者がいる、それはきっと少女の姿をしている大精霊に違いないだろう。

「せっかく狼退治もできるようになったのに暇ですわ」
 そう言いながら右手で矢をフリフリとしてミドもぼやく。

 このミドの弓術、俺では全く叶わなかった狼退治をものともしなかったのだ。

 最初の数本を外したところで、ピルスルが俺に教えたように狼を相手にしたんだが。
『そっか、気配無くしちゃえばいいんだ』なんて言って、一本の矢を構えると
見えない速度で射ったのだ。

 後で聞いたら本当に見えなくしたのだと、姿も気配も…。

 流石にその矢を3本に、とはいかないようだったが。
 『矢羽を捻って軌道を曲げたりできるよ』って言っていたのだから、このステルス矢は脅威である…。

「なんや誰かおんで?」
 ローズが気付く、荷馬車なのではなく人が1、2…3人。

 近付くと中年ほどの夫婦と青年の息子のようだった。
「あぁ、助かりました冒険者の方でしょうか?
 実は盗賊に襲われてしまい、荷馬車ごと商品をごっそりと持っていかれてしまったのです」

 聞けばこの商人たち、村で取れた新鮮な果物を城下町まで届ける最中に襲われて…。
 金品ごと近くの洞窟へと持って行かれてしまったのだそうだ。

 街まで送ってもらえたらいいのだけど、もし盗賊を倒してくれるのなら金品の方は好きなだけ持って行って構いません。果物を待つ者のために城下町まで届けたいのです、と。

 俺だって、そこまで言われりゃ助けてやりたくなるもので。

『金はいらないから洞窟へと案内してくれるか?』と俺は聞いていた。

「私たちも出来る限りサポートさせていただきますので」
 3人は回復が少し使える程度で、戦いにはあまり向いていないので…と俺たちの後ろから付いてきた。

 洞窟が見えてきて、様子を伺いながら中へと進んでいく。
 あちらこちらに食い散らかしたような跡も見受けられ、次第に緊張が高まる。

 『だいぶ奥まで続いているのだな』と思ったものだ。そして次の瞬間、後ろの方では明かりが消え、金属のぶつかる音などが響く。

「なに?!奇襲か!」
 俺は振り向き、明かりを掲げて後ろを確認する。

 一瞬の間に商人たち3人が倒れている。
 『どうしたっ!大丈夫か?』と俺の後ろを歩いていたミドとローズに確認するのだが。

「あんた…ほんま気付いとらんかったんか?」
「お人好しさんなんですね」
 と二人とも何かがっかりした風に答えるのだった。

 洞窟って知っていたのはなぜ?もしかしたら盗賊の誰かがそう言っていたのかもしれない。
 護衛も付けずに街道に出るのか?魔物がいるのに。
 もしかしたら盗賊の仲間だったのかもしれない。
 それに果物を何日も運ぶ時は、傷まないような対策が必要だ。カードを使う手もあるが高価すぎる。
 そもそも城下町はちょうど収穫期を迎えていて外からの食料は必要ないくらいなのだ、と。
 残念すぎる商人設定にアレコレとダメ出しを続け、俺まで一緒になってダメ出しを受ける羽目になってしまった。

「カッコいい武器ですねって、あんさんの弓触れとったろ?
 あん時に矢が打てんように細工しとったからな、間違いない思うたわ」
 とローズの手厳しい追加ダメ出しまで…。

『この人たちはどうします?』ミドがワクワクしながら聞いてきた。

 彼女はこいつらをどうしたいのだろうか…?

「水だけ残して放っておいたらええんちゃう?死なれても嫌やし、この辺ならリキングバウトに来るしかないやろ。
 やって来たところをドルヴィンにちゃまえといてもろたらええやん」
 みんなその提案に乗り、洞窟内のあらゆるものを俺のインベントリに突っ込んでいった。

 本当にわずかな水だけを残し。

 『今度から気をつけなきゃなー』俺は自信をなくしていた。
 何一つ気付かなかった自分が情けない。言われてみれば不自然の塊だったというのに。

 洞窟から出ると、また別の女性が立っていたのだ。

「はじめまして、剣士ピルスルとその仲間たちですね?」
 『今度は騙されないぞ』と俺は注意深く女性の話に耳を傾ける。

 彼女はソフィアと名乗った。

 精霊王になる存在だと…。
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