35歳ニートがテストプレイヤーに選ばれたのだが、応募した覚えは全く無い。

紅柄ねこ(Bengara Neko)

文字の大きさ
2 / 41

2話

しおりを挟む
「ようこそ、デイズフロント-オンラインへ!
 僕は案内役のチャッピーなのら。
 さっそくだけど、一緒に君が旅を始めるキャラクターを作っていこうよ」
 チャッピーというのか、この犬か猫かわからない生物は。

 まぁ、人気が出なくもなさそうなキャラデザではあるが、真っ先に出会うキャラクターにしては特徴も少なくて微妙なところである。
「じゃあ、まずは名前の入力をお願いするのら。
 苗字の設定は無いから、名前だけでこの世界を旅することになるよ。
 あぁちなみに……」

 チャッピーの話がやたらと長い。
 要約すると、『なんたら=なんたら』というように、プレイヤーが勝手に苗字(ラストネーム)やミドルネームを書き込むことは可能らしい。
 ただし、ゲームの設定上、それをひっくるめて『名前』と判断されるため、ゲーム中の違和感が半端ないよ、とのことだった。

 つまり、無難に名前だけの入力にしてね。ということだろう。
 あとはプレイヤーの判断に任せるということだ。

『おはよう、レーベンゲルグ=ドルイド=アルバート。今日もいい天気だね』
 毎朝幼馴染からそんな挨拶を交わされる、とかそういうことだろう。
 確かに違和感が半端ない。

 そんな俺のネーミングセンスはともかく、まずは簡単な呼び名で登録するのがいいのだろうな。
 と、なると……やはりスサノオだろうか?
 日本神話で風の神といえばこの神様だろう。

 カタカタっと目の前に現れたキーボードで名前を入力するのだが、慣れない配置のためか、何度も打ち間違える。
 バックスペース……エヌ……オー……
 数字を入れようかと思ったが、そんな呼び名を想像したところで再びバックスペースキー。
「まぁ、こんでいいや」
 とりあえず入力をしたところでエンターキー。
 入力にミスがないかを確認しようと顔を上げると、『名前が決定しました』の文字。

「あれ? 確認画面とかないの?」
 普通は『はい』『いいえ』の選択肢くらいあるだろうが。
「スノウだね、いい名前なのら。
 次はステータスだけど、どっちのタイプで入力する?
 簡単に選べる方と、こだわりタイプがあるのら」

 ス、スノウか……まぁ意味の分からない名前にならなくてよかったともいえる。
 アンケート機能でもあれば、絶対にこのシステムは修正するように報告したいところだ。

「もちろんこだわりタイプだな。
 っつか、素早さに極振りしてやろう……」
「良いのら? スノウ。
 極振りはあまりオススメしないのら」
 理由は様々だけど、ストーリーに詰んでしまってやめる原因になることが多いからと。
 そんな製作者側の都合をつらつらと並びたてられる。

「まぁ自分で買ったゲームなら、やめたくなるようなステータスにはしたくないもんな」
「そうのら。それに、一度決めた名前やステータスは変更不可なのら。
 このゲームにやり直し機能は無いし、中の世界も刻一刻と変化していくのらよ」
 まさかのやり直し不可は思っていなかった。
 まぁオンラインゲームだから、中の世界は当然動き続けてはいるだろうけれど。
 それにしても意味深な物言いである。

「わかったのら。
 体力や防御力が低くても、プレイヤースキル次第ではある程度うまくやれるのら。
 きっとスノウはそういう超上級者なのらね」
 ちょっと馬鹿にされたような気もしたが、システム的には応援するつもりで言ってくれているのだろう。
 そう考えるようにしよう……

「じゃあ、あとはなりたい自分を想像するのら。
 難しく考えなくても、僕が君の姿を理想に近づけてあげるのら」
「え? 自分でメイキングするんじゃないのか?」
 よくある髪型などのパーツを組み合わせてキャラクターを作るシステム。
 チャッピーが言うには、『それをプレイヤーに任せると、なかなか先に進めないのら』だそうだ。
「それに、僕の担当する次のプレイヤーが待ってるのら。
 セットアップってごまかして待っててもらってるのら」

 まさかのセットアップ詐欺だったとは。
 ということは、俺の前にキャラクターメイキング待ちでその時間がかかっていたということか。
 いやいや、普通は一人ずつ案内役がいるもんじゃないのか?
「チャッピーの肉体は一つなのら。
 無理を言われても対応できる人数はかぎられているのらよ」

 なんと世知辛いシステムだ。
 俺が目を閉じて、なりたい自分を想像する。
 そんなことをいっても、実際のところよくわからない。
 絵を描くときみたいに、細部まで想像すればいいのか?
 顔はなんとなく浮かんでも、そんな全身の骨格なんてわかるわけがない。
 いや、絵を描ける人はそうではないのだったか……
 全く、すごい才能だ……

「出来上がったのら!
 すっごくかわいいのらよ。スノウにピッタリのら」
 かわいい?
 俺は鎧を着た竜騎兵みたいなものを想像していたのだぞ?

「それと、余計なおせっかいかもしれないけど、それは才能じゃないのら」
 突然なんの話をしだすのだろうか。
「手を描くのが苦手、身体を描くとバランスがおかしい。
 それは見る努力をしていないからなのら。
 試しに目を瞑って僕の姿を想像してみるのら」

 なぜゲームをしようとしているのに、そんなことをシステムに忠告されているのだろうか?
 これは実はお絵かきゲームなのか?
「違うのら、さぁ試してみるのら」
 俺は目を閉じて目の前にいたチャッピーを想像する。
 確か犬のような耳で、輪郭は丸めで……
 途中まではわかるのだけど、指先や関節の向きは想像ができないでいた。

「分かったのら?
 なんでも『才能』で片づけていたら、このゲームはうまくなれないのら。
 努力、注意することで手に入るのがスキルなのら。
 頑張ってゲームをうまくなってほしいから、教えておいたのらよ」
 なるほど、きっと誰にでも同じことを教えるシステムになっているのだろう。
 ゲームのヒントってやつなのだろう。

「じゃあ楽しんでくるのら~」
 えっ? 目的は?
 そんな大事なことを何も知らされることもなく、俺は新しい姿でゲームの世界へと転移させられるのだった……
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。

あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...