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待ち合わせ

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 昨日はカラオケに行って、その後はどうしたのだったか?
 スマホの通知を見ると、ケーキバイキングの写真を送り合ったあたりから音沙汰はない。

「遅っそいなぁ~。
 前々から映画を見に行こうって言ってたのに、忘れてるの?」
 電話も出てくれないし、メッセージも未読のまま。
 そういえばバイトで何万円も稼いだって言っていたし、やっぱり危ないバイトだったんじゃないかしら?

 そんなことを思いながら駅の前で待つ一人の少女がいた。

 チケットの時間も迫り、仕方なく一人で映画館へと移動するのだが、時折振り返っては、本当に来ていないかを確認していた。

「チャッピー、何かあったのかなぁ?」
 いつもの茜だったら『どうせまた寝坊したんでしょ』なんて思ってしまうのだが、バイトの話がどうにも気になって気が気ではないのである。
 だから映画の内容も全く頭に入ってこない。
 そうなると見ていてもつまらないもので、時間の半分も過ぎた頃には既に茜は別の場所へと移動していたのだった。

 警察に言うべきか……いや、これで寝坊だったら私の勘違いで恥ずかしい思いをするだけだ。
 それでもチャッピーのことが気になって仕方ない。
 となれば、もう直接訪ねるほか、選択肢はなかった。

「あら茜ちゃん、詩織だったらまだ帰ってきてないわよ?
 お泊りするからって電話があったから、てっきり茜ちゃんところだと思っていたのよ」

 チャッピーのお母さんに映画の約束があったことを伝えると、申し訳なさそうに財布からお金を取り出して渡そうとする。
 無駄になってしまった映画のチケット代や電車のお金だと言うのだが、私は受け取らなかった。
 とにかく無事が確認できただけで十分なのだから。

 私に黙って他の人とお泊りだなんて珍しいこともあるものだ。
 男の家かとも思ったけれど、それだったら私にも口裏あわせで伝えてくるはずだ。
 今のところそんな経験はないけれど、そんな話をしたこともある仲なのだから。

「世界中で爆発的ヒット!
 完全フルダイブ型ゲーム、ワールドオブフロンティア」
 大型電気店の自販機コーナーで休んでいると、テレビ売り場では8K画像に映し出されたゲーム画像の前で、何人もの子供たちが騒いでいるのが見える。
 ゲーム世界の未開拓の土地に降り立って、プレイヤー達で世界を作り上げるゲームだそうだ。

 フルダイブ型というのは最近発売された、身体の感覚全てをゲーム世界へ持っていってしまうスタイルのこと。
 モニターではなく、五感全てがゲーム内での出来事を感じ取れるそうなのだ。

 子供達はその怖さを知らないから騒いでいるが、それって現実では完全に何もできなくなるってことなのよね?
 脳への負担も大きそうだし、安全安全って言われてもやっぱり信用できないわよねぇ……
 多分私には一生経験することのない世界なんだろうなぁ……

 ホットミルクティーを一口飲みながら、茜はそんなことを思うのだった……
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