【未完】外れジョブ【遊び人】は最上位職?? ギルドからも除名され『死人』となった俺は、魔の森で自由に生きようと思います!

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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一話 神の力

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 大神殿の祭壇で、15になったばかりの男が儀式を受けている。
 剣士や魔法使いはその優れた攻撃力で、少し成長は遅いが魔物使いや賢者はまた別の理由で非常に優遇されている。
 故にこの儀式で、その者の一生が決まると言っても過言ではない。

「貴方の適性は【遊び人】と出ました」
「は……? 今なんと……」
「貴方の適性は……残念ながら遊び人でございます……」

 騎士団への入隊に憧れ、日夜剣の稽古に励んだ。
 魔法の適性があっても大丈夫なようにと、魔導書はいくつも読んだ……

 それだというのに、与えられたものは『成長しないわ、武器もまともに扱えないわの最低最悪大外れの落ちこぼれ』と名高い遊び人……
 これが、俺ことラグナの授かった唯一の『ジョブ』であった。

 初級ダンジョン、ゴブリンの巣。
 主にEランクDランクの冒険者が向かう林の中である。
 あの日から数年経ち、ラグナの努力が報われる奇跡などは起きているはずもなかった。

「おいっ、荷物持ち!
 とっととついて来いよっ、くそ遅っせえなぁボケが!」
「タックス、横で叫ぶのやめてようるさいわねぇ。
 アンタもよラグナ!
 雇ってもらってる以上は相応の働きをするもんじゃなくて?」

 前を歩く冒険者、剣士のタックスと魔法使いのセリシュは、魔物に噛まれ脚を引きずり歩く俺に容赦なく言った。

「まぁまぁ、期待などするだけ無駄でしょう。
 それにセリシュさんは、夜にしっかりと働いてもらっているじゃないですか」
 その隣に、賢者のアースが杖を器用に回しながら歩いている。
 そして俺はというと、そんな将来有望な冒険者様たちの小間使いとして契約し、なんとか生活できているというレベルのものである。
 ボロボロのローブに身を包み、冒険者様が不快にならぬよう、フードを深くかぶって表情を見せないように生きてきた。

「まぁね。そんなくらいしか役に立たないんだから、しっかりと使わせてもらうわよ。
 意外と溜まって仕方ないのよね、冒険ってさ」
「へっ、んなもん荷物持ちのゴミクソじゃなくても、俺様が相手してやるぜ?」
「いやよ、アンタ自分だけ気持ちよくなるじゃないの。
 そんなのは『御屋敷』に行ってやってきなさいよ」

 賢者なら回復魔法も使える……
 だが、俺みたいな荷物持ちには使うつもりはないらしい。
 持たされた荷物の中に薬草もあるが、くそっ……そこまで俺を痛ぶって面白いのか!

『面白いわよ、ゴミ虫ちゃん』
 サァッ……と血の気が引いた。
 耳元で、誰かがそう囁いたのだ。

 幻聴まで聞こえてきたか……
 やはり俺には冒険者は無理なのだろうか……

 小さな頃から剣の修行と魔導書で学んできたことは、儀式の日に全てが無駄となってしまった。
 当時付き合っていた彼女からは蔑まれるような目で見られ、剣の師は俺を無視するようになった。

 仕方がない、俺みたいな外れジョブと関わっていては、その者にも被害が及んでしまうのだから……
 しかし、数日後に別の男と並んで歩く彼女の姿を見るのは辛かったな……

「おっせぇぇ!
 あーもう我慢ならねぇ、殺していいか?!」
「やめなさいよぉ、死体でも見つかったら魔水晶で私たちがやったってバレちゃうんだから」
 セリシュの言葉がまた心を抉ってくる。
 逆にバレなかったら殺しても構わないと思っているのだな。
 そう思うと俺は、急に色々なものが胸の奥底から込み上げてきた。

「……! うっ、うぐぇぇ……げぽっ……」
 『びちゃびちゃ……』と辺りに巻き散らかされる数時間前のなにか。

「ちょっと、こいつアタシの作る愛情のこもったお料理を吐きやがったぞ。
 これはお仕置きしてもいいよなぁ? いいよー、そうだよなぁ」
「はははっ、セリシュのマズ飯なんか食ったら、俺でも吐いちまうぜっ」
「うっさい、練習中なんだ馬鹿にすんなしっ!」

 不味いのはまだいい……時にはムカデやノネズミを入れやがる。
 何度も死にかけて、それでも俺は生きるために荷物持ちをやらなくてはならない……

 儀式から約三年……常に地獄だ。
 出口のない迷宮を彷徨い続け、身も心もボロボロになっていくのがよくわかる……

 神の加護が無ければどんなに強い武器もただの棒切れ。
 レベルが上がらなければスキルも増えることはない……
 なぜこのようなジョブを作り出したのだ、神よ……

 俺の心は完全に砕け散り、もはや立ち上がる気力も無くなってしまった。
 その場に膝から崩れ落ち、焦点も合わずに周りの声など聴く余裕すらなくなってしまっていた。

「ちょっとどうすんのよコレ」
「セリシュさんが虐めるからですよ、ふふふっ」
「ちっ、いいぜもう行こうぜっ。
 いつまでもこんな場所にいたらゴブリン共がやってきちまう」

 3人は俺から荷物を剥ぎ取ると、更に奥へと進んでいく。
 唯一俺が捨てられずにいるための荷物は、もう残っていない。
 俺の人生はどうやらここで終わりを迎えるらしい……
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