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十一話 拠点
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倒したオーガから得られる経験値は、ゴブリンの何倍も多かった。
というのがわかったのも、この日は二度目のレベルアップがあったからだ。
アイテムの扱いに長け、世界のことを熟知しているくせに本人は『無力だ』と言い張るカリン。
そしてそのカリン曰く、他のジョブよりも上位職なのだと教えられた『遊び人』なるジョブを持つ俺ことミスラ。
以前の俺は死んでおり、今はもう冒険者でもなく街を離れ、オーガのいる森を抜けた先にある湖で生活を送っていた。
初日は寝床の確保。
小高くなった岩陰に、雨風のしのげる良い場所があった。
荷袋に寄りかかって睡眠をとるカリンと、魔物が出やしないかと緊張し一睡もできずにいる俺。
時々寝息の聞こえる方を向くと、余計に眠れそうにない。
カリンの言葉を信じるのであれば、この湖の周囲には魔物は出てこないらしいのだが……
翌日からは水と食料の調達を。
水だったら目の前に大量に視界にはいってくるのだが、カリンが『細菌とか怖いし……』などと言って若干の抵抗があるようだ。
仕方なく周囲を回ってみて、湖の源流を見つけ、『それならまだマシかも』と口にしていた。
俺に求めることは、早く火の魔法なりを使えるようにして、水を一度煮沸消毒してほしいのだとか。
食料については急ぐ必要はないが、それでも近場で確保できるならそれに越したことはない。
湖の周囲にはポーションの材料となる薬草や、加工がしやすく朽ちにくい木がどこにでも生えている。
家を建てる……とまではいかなくとも、小さな小屋くらいは作成可能かもしれない。
そう、本気でこの湖で生活をしようと心に決めたのである。
街の冒険者はオーガのいる森の奥地より先へは行かないだろう。
湖を迂回すると、また森が広がっている。
手練れの冒険者たちも、そちらへ進むのは無理だと言っていたほど強い魔物が棲んでいるらしい。
『マナが濃い』と言われており、冒険者になると、魔物はマナによって生み出され、それが濃ければ濃いほど強いと教えられるのが通例である。
濃いマナ結晶は当然価値があり、腕に自信のある冒険者はよりマナの濃い土地へ向かい、大金を稼いで名を上げるのだ。
そしてその半ばで死んでゆくものも少なくはない。
まぁそのような冒険者という生活も悪くはないのだが、それはあくまでも優れたジョブを持っていればの話である。
俺の持つ『遊び人』に関しては、こと戦闘において秀でた能力を持つものではないのだと言われてしまった。
ただ、汎用性に富んでおり、いざという時に剣士や魔法使いではできないことも不可能ではないことが多いのだとか。
カードの使用可能な期間は、一定の耐久値が0になるまでであり、消滅もありうるそうだ。
武器なら刃こぼれをしたら研げばよい。カードはそれができないそうだ。
まぁ、一般的になまくら剣を鈍器のように使う冒険者が多いのだけど。
俺は採取した素材を使い、クリエイトスキルを試していく。
回復薬、毒薬、睡眠薬。
それらのものが、近くに生えていた草花から作成可能であったのだ。
すべてカード化された状態、ということを除けば、なんら変わらない普通のアイテムである。
カリンにそれらのカードを見せると、当面の間はこのカードかされたアイテムに慣れることと、可能な限りのクリエイトアイテムリストを作成することを指示された。
武器や防具はどの程度使用すると消えてしまうのか?
アイテムを使用する際には投げるべきなのか手元で使うべきなのか?
カリンにもわからないことはあり、安全に暮らすために『より確実に』と、そう言っていた。
カード化の解除は手元でも行えるのだが、回復や攻撃という行動のためにわざわざ解除してから使う必要はないみたいだ。
例えば『対象一体に火属性のダメージを与える』という火炎瓶。
手元で発動を念じることで、カードは火の玉と化し、対象に向かって飛んでいく、まるで魔法のような扱い方ができる。
回復も同様で、わざわざ近寄って飲ませたり傷口にかけたりなどという行動が必要なくなるのだ。
単純にカード化しただけと侮っていたものの、これはとんでもないスキルであった。
俺の方はそんな感じだったのだが、その間カリンはというと、なにやらずっとシステムメニューとやらと格闘している風であった。
以前見せてもらった『チャット』なるものを応用したいらしく、細かな設定をいじり続けているのだとか。
『ゲームと違いすぎてわからん……』などとぼやいていたが、どうにかやりたい事はできそうだと笑っていたので上手くいっているのだろう。
そうして俺とカリンの湖生活は、あっという間にひと月を過ぎようとしていたのだった……
というのがわかったのも、この日は二度目のレベルアップがあったからだ。
アイテムの扱いに長け、世界のことを熟知しているくせに本人は『無力だ』と言い張るカリン。
そしてそのカリン曰く、他のジョブよりも上位職なのだと教えられた『遊び人』なるジョブを持つ俺ことミスラ。
以前の俺は死んでおり、今はもう冒険者でもなく街を離れ、オーガのいる森を抜けた先にある湖で生活を送っていた。
初日は寝床の確保。
小高くなった岩陰に、雨風のしのげる良い場所があった。
荷袋に寄りかかって睡眠をとるカリンと、魔物が出やしないかと緊張し一睡もできずにいる俺。
時々寝息の聞こえる方を向くと、余計に眠れそうにない。
カリンの言葉を信じるのであれば、この湖の周囲には魔物は出てこないらしいのだが……
翌日からは水と食料の調達を。
水だったら目の前に大量に視界にはいってくるのだが、カリンが『細菌とか怖いし……』などと言って若干の抵抗があるようだ。
仕方なく周囲を回ってみて、湖の源流を見つけ、『それならまだマシかも』と口にしていた。
俺に求めることは、早く火の魔法なりを使えるようにして、水を一度煮沸消毒してほしいのだとか。
食料については急ぐ必要はないが、それでも近場で確保できるならそれに越したことはない。
湖の周囲にはポーションの材料となる薬草や、加工がしやすく朽ちにくい木がどこにでも生えている。
家を建てる……とまではいかなくとも、小さな小屋くらいは作成可能かもしれない。
そう、本気でこの湖で生活をしようと心に決めたのである。
街の冒険者はオーガのいる森の奥地より先へは行かないだろう。
湖を迂回すると、また森が広がっている。
手練れの冒険者たちも、そちらへ進むのは無理だと言っていたほど強い魔物が棲んでいるらしい。
『マナが濃い』と言われており、冒険者になると、魔物はマナによって生み出され、それが濃ければ濃いほど強いと教えられるのが通例である。
濃いマナ結晶は当然価値があり、腕に自信のある冒険者はよりマナの濃い土地へ向かい、大金を稼いで名を上げるのだ。
そしてその半ばで死んでゆくものも少なくはない。
まぁそのような冒険者という生活も悪くはないのだが、それはあくまでも優れたジョブを持っていればの話である。
俺の持つ『遊び人』に関しては、こと戦闘において秀でた能力を持つものではないのだと言われてしまった。
ただ、汎用性に富んでおり、いざという時に剣士や魔法使いではできないことも不可能ではないことが多いのだとか。
カードの使用可能な期間は、一定の耐久値が0になるまでであり、消滅もありうるそうだ。
武器なら刃こぼれをしたら研げばよい。カードはそれができないそうだ。
まぁ、一般的になまくら剣を鈍器のように使う冒険者が多いのだけど。
俺は採取した素材を使い、クリエイトスキルを試していく。
回復薬、毒薬、睡眠薬。
それらのものが、近くに生えていた草花から作成可能であったのだ。
すべてカード化された状態、ということを除けば、なんら変わらない普通のアイテムである。
カリンにそれらのカードを見せると、当面の間はこのカードかされたアイテムに慣れることと、可能な限りのクリエイトアイテムリストを作成することを指示された。
武器や防具はどの程度使用すると消えてしまうのか?
アイテムを使用する際には投げるべきなのか手元で使うべきなのか?
カリンにもわからないことはあり、安全に暮らすために『より確実に』と、そう言っていた。
カード化の解除は手元でも行えるのだが、回復や攻撃という行動のためにわざわざ解除してから使う必要はないみたいだ。
例えば『対象一体に火属性のダメージを与える』という火炎瓶。
手元で発動を念じることで、カードは火の玉と化し、対象に向かって飛んでいく、まるで魔法のような扱い方ができる。
回復も同様で、わざわざ近寄って飲ませたり傷口にかけたりなどという行動が必要なくなるのだ。
単純にカード化しただけと侮っていたものの、これはとんでもないスキルであった。
俺の方はそんな感じだったのだが、その間カリンはというと、なにやらずっとシステムメニューとやらと格闘している風であった。
以前見せてもらった『チャット』なるものを応用したいらしく、細かな設定をいじり続けているのだとか。
『ゲームと違いすぎてわからん……』などとぼやいていたが、どうにかやりたい事はできそうだと笑っていたので上手くいっているのだろう。
そうして俺とカリンの湖生活は、あっという間にひと月を過ぎようとしていたのだった……
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