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1章 ダンジョンと少女
一章 ダンジョンと少女 完
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大会は滞りなく進み、それぞれの部門の決勝およびその3名による優勝者決定戦を残すのみとなった。
しかし、圧倒的な力で他の魔法使いを戦闘不能にしたドラーニアは大会の会場から姿を消している。
テイマーバトルの3回戦中にどこかへ行ったようだった。
「ちょっと宜しいですか?」
凍花もまた、運営の一人に呼ばれて一つの部屋に入らされた。
「あ、ドラーニアさんもここにいたんですか」
「おぉ、トウカも来たか。
まぁ座ってお茶でも飲んだらいい」
何事かと思いながらソファーに腰掛け、しばらくすると一人の男がやってくる。
体格のガッチリとした大男といった印象。
そんな圧さえ感じてしまう男が、入って正面に立つなり頭を下げるのだから驚きである。
「ドラーニア殿、どうかお手柔らかに頼む!
先の戦いで3人とも治療院送りになっているのだ。
あぁ、儂が知っていれば先に手を打っていたというのに……」
「なんじゃ、そんな要件でアタシを呼んだのかい?」
「あの、これって……?」
凍花が困惑している横でドラーニアは不満げにしている。
「こちらのお嬢ちゃんは?」
頭を上げて凍花を見た男は問う。
「なんじゃ?
お主らのギルド主催の大会じゃというのに、本当に参加者の把握もしておらんとはな」
「そ、それは色々と忙しくて……
ということは、お嬢ちゃんも大会参加者なのか」
ドラーニアは、せっかく出場して強い冒険者と戦えると期待していたそうだが、この街のギルド長である男は勘弁してほしいと懇願していた。
どうもギルド長はドラーニアがダンジョンに関わりある者だと知っていたようなのだ。
「つまりお主は、アタシが戦いたいと言うのにそれの邪魔をすると?」
「め……めめ、滅相もない!
ただドラーニア殿に敵う相手ではないのは明白でしょう?
そのような小物を相手にしたとなれば、無上の称号の名折れかと……」
ドラーニアはそれを聞いて『ふむ』と一考する。
「まぁそういう事にしておいてやるか。
そうだな。お主よ、その代わり一つ頼みを聞くというのはどうだ?」
「頼み……ですか」
「なに、難しいことは言わぬよ」
急遽ドラーニアが大会を棄権するということになった。
それだけならば凍花にとっては朗報だったが『コイツもアタシと同類だからな』なんて言い出すものだから、凍花までもそれに巻き込まれる形で辞退させられることになってしまった。
せっかくの報酬を楽しみにしていたというのに、ドラーニアに会ってから色々と台無しである。
そして会場の見学席に戻り、ラビを連れてから再び先程の部屋へ……
「あの……これは……?」
「なんか大会を辞退してほしいんだってさ。
私もさっき言われてビックリだよホント……」
突然大会の棄権が決まって、呼び出された場所にはドラーニアとギルド長。
ラビも意味がわからず困惑してしまう。
そんな中、ギルド長がラビを見て口を開く。
「トウカ君と一緒に旅をしている子が君か?」
「あ……はい……」
ジロジロと見るものだから、ラビも口元を見えないように必死に服の襟で口を覆っている。
手袋もしているが、そう注目されては隠すに隠せないだろう。
しばらくしてギルド長はため息をついて、頭を掻きむしっていた。
「はぁ……
つまり、そちら側につけとドラーニア殿は言うわけか」
「別にどちらかに加担しろとは言わないさ。
アタシはいつでも中立だよ」
「はぁ……承知したよドラーニア殿。
だが、儂が協力できるのはダンジョンの解放くらいだ。
実力がなくて死んでも、儂は一切の責任を取らんからな」
ため息を吐いて目頭を押さえているギルド長。
反対の手をパタパタと振るのは、退出を促しているようだ。
「では頼んだぞ。心配せんでも約束を守ってくれればアタシは何もしないさ」
話は終わったようで、訳もわからぬまま凍花たちは共に部屋を出る。
しかも『後でドラジェから説明させるからの』なんて言って高く跳ぶと、そのまま山の方へ消えてしまうのだから困ってしまう。
そして翌朝……
「本当に困った方ですよ、ドラーニア様は!」
開口一番、相当なお怒りモードのドラジェ。
朝食で出した卵焼きと鶏ハムを食べながらブツブツと愚痴を言っていた。
「そうそう、ドラーニア様が説明するようにと仰るのでお伝えしますが、基本的に人間には内緒にしててくださいよ。
別に僕たちは困りませんし、すでに一部の者は知っていますが……一応は神様たちのルールみたいですので」
もぐもぐと口を動かしながら喋るドラジェは、食べ終えた皿を持って凍花に渡す。
「そもそも何の話かもわからないのに喋るなって言われたって『ハイ』とは言えないわよ」
凍花はカリカリに焼いた薄切りの干し肉に卵を落としベーコンエッグ風にしたものを渡す。
「それを今から説明するんだよ。
ったく、亜人と精霊のことなんて放っておけば良いのに。
まったく……この黒コショウのアクセントが美味いな」
半熟卵を落としたサラダに、スライム乾燥させたパンの角切りをトッピング。
ドレッシングはまだ研究中のため、シーザーもどきとなった。
「お姉ちゃん、私もおかわり」
ラビもまた食欲は旺盛。
食べ盛りといえばそれまでだが、基本的に人外は人間よりも多く食べるのだろうか?
「美味しいでしょ。
この間教えてくれたマテリアの使い方のおかげで、卵が手に入るようになったから」
「うむ。野菜は好かんが、これはなかなか良い。
……いや、それは今はどうでも良いのだが」
とにかく食事の話をしていても埒があかないと、大事な話の内容を教えてもらうことにした。
今回、ドラーニアからギルドへ依頼した内容はダンジョンの解放である。
それは凍花およびラビとその従魔を好きに行動させよというもの。
そも理由がドラジェの怒っている理由でもあるのだが、ただ純粋に『強くなって戦おう』というもの。
長年、世界を見守っていると暇で暇で仕方ないらしい。
「でも何で私たちなのよ?」
そこが凍花の疑問である。
確かに召喚できるスキルはチートくさいが、オークだってエルフだっている世界で選ばれる理由がわからない。
「それは、トウカがラビと共にいるからだよ。
通常、亜人と精霊が手を組むなどあり得んからな」
フォークの先を凍花に向けて睨むドラジェの、その口元には卵黄の黄色が付いて見える。
そもそも世界には人間と魔物の他に『精霊種』と『亜人種』が存在していた。
エーテルを取り込みながら存在する精霊種は、魔法を使い亜人種からマテリアを奪い成長する。
逆にマテリアを糧として生きる亜人種は、スキルを用いて精霊種からエーテルを刈り取る。
そんなお互いに争い続ける二つの種族だったが、いつからか少しずつお互いの力が混ざり合った種も出てくるようになった。
それが妥協の称号を持つ人精霊。
そしてその精霊が受け入れてしまった寄生の称号を持つ兎亜人である。
「おおかた、寄生されてもお互いに強くなるなら構わないという気持ちだったのだろうが。
言っておくが、トウカのスキルのほとんどはラビに吸われているぞ?」
「別に私は困ってないから良いわよ」
今更何を言っているのだろうか?
リンクスキルがレベル2になった時に散々疑ったとも。
人間に嫌われている理由も考えたが、そちらは未だに不明だが……
「さ、さすが妥協の使徒だな。
スキルも魔法もろくに扱えないのに、周りに与える力だけは何にも勝るとは聞いていたが……」
食べるだけ食べて酷い言いようである。
「つまり何が言いたいのよ?」
食後にと思いハーブティーを用意したが、凍花はそれを持ったままドラジェに訊ねる。
「なに、そういった化学反応で何が起きるかと期待をしているのだろうさ。
それにしても長い間、精霊種が亜人種を追い詰める形で世界は動いていたからな。
何の気の迷いで、トウカのような使徒を産んだというのだろうか……」
凍花も座って一緒にハーブティーを飲む。
とにかく今からやるべきことは店の経営だ。
なぜなら、それをドラーニアが望んでいるから。
これまで、凍花は『精霊種』『亜人種』関係なくダンジョンを屠ってきた。
オークは亜人種、エルフとストーンゴーレムの時は精霊種だったそうだ。
そしてニクスもまた精霊種。
「相手の殺意を感じた時に警告を感じたことはないのか?
使徒同士の争いでは、必ず何かしらの前兆はあるものなのだが……」
精霊種同士では感じない何かがオーク戦の時にあったかどうか。
と言われても、何も思い当たるものはないし、必死だったので見落としたのかもしれない。
その後ラビと出会い、凍花自身は新しく召喚できる魔物は増えずにいた。
しかも、ダンジョンを潰して得た力も少しづつラビに吸われているそうだ。
だから第三者目線で見れば、ラビが力を増すために凍花が張り切っているように見えている。
「いや、ラビも頑張ってるし、別にそれでも良いじゃん。
ちなみに、すでにその話は済んでいるのよね」
「ん? どういうことだ?」
「だから、ラビが私に寄生してるのを承知で私は旅をしてるし、ラビも私がいる限りは強くなれるんだから裏切るつもりは無いってこと。
そうねぇ……ラビがもしドラーニアさんくらい強くなったら、私なんてどうでもよくなって殺しちゃうかもしれないけど」
「そ、そんなことしないですっ!」
いつぞやに本音をぶち撒けたのは、村人に殺意を抱いた時であろうか。
それでも一緒にいると言ったラビが、村の冒険者のために身を犠牲にしていた。
それすらもあざといと感じたのも伝えたが、正直人間の命などどうでも良く、凍花にとって理想の姿でありたいと思っただけのことだと伝えられた。
「貴女たち……本当に敵対している使徒同士なのですか?」
ドラジェが怪訝そうな表情をしていた。
凍花がラビの顔を見ると、ラビは軽く俯いて喋り始めた。
「私は……別にどっちでも良いんです。
ただ、お姉ちゃんは優しいし、一緒にいて楽しいことも多いから。
だから、次のダンジョンが亜人種のものでも多分……」
ラビが言い終わる頃、凍花はふんぞり返って自信満々にドラジェにこう伝えた。
「ほら、ラビだってこう言ってるんだし。
ドラーニアさんのお望み通り、鍛えてこの世界で最強を目指してあげるわよ!」
「ちょ、ちょっとお姉ちゃんっ?!」
ーー1章 完ーー
しかし、圧倒的な力で他の魔法使いを戦闘不能にしたドラーニアは大会の会場から姿を消している。
テイマーバトルの3回戦中にどこかへ行ったようだった。
「ちょっと宜しいですか?」
凍花もまた、運営の一人に呼ばれて一つの部屋に入らされた。
「あ、ドラーニアさんもここにいたんですか」
「おぉ、トウカも来たか。
まぁ座ってお茶でも飲んだらいい」
何事かと思いながらソファーに腰掛け、しばらくすると一人の男がやってくる。
体格のガッチリとした大男といった印象。
そんな圧さえ感じてしまう男が、入って正面に立つなり頭を下げるのだから驚きである。
「ドラーニア殿、どうかお手柔らかに頼む!
先の戦いで3人とも治療院送りになっているのだ。
あぁ、儂が知っていれば先に手を打っていたというのに……」
「なんじゃ、そんな要件でアタシを呼んだのかい?」
「あの、これって……?」
凍花が困惑している横でドラーニアは不満げにしている。
「こちらのお嬢ちゃんは?」
頭を上げて凍花を見た男は問う。
「なんじゃ?
お主らのギルド主催の大会じゃというのに、本当に参加者の把握もしておらんとはな」
「そ、それは色々と忙しくて……
ということは、お嬢ちゃんも大会参加者なのか」
ドラーニアは、せっかく出場して強い冒険者と戦えると期待していたそうだが、この街のギルド長である男は勘弁してほしいと懇願していた。
どうもギルド長はドラーニアがダンジョンに関わりある者だと知っていたようなのだ。
「つまりお主は、アタシが戦いたいと言うのにそれの邪魔をすると?」
「め……めめ、滅相もない!
ただドラーニア殿に敵う相手ではないのは明白でしょう?
そのような小物を相手にしたとなれば、無上の称号の名折れかと……」
ドラーニアはそれを聞いて『ふむ』と一考する。
「まぁそういう事にしておいてやるか。
そうだな。お主よ、その代わり一つ頼みを聞くというのはどうだ?」
「頼み……ですか」
「なに、難しいことは言わぬよ」
急遽ドラーニアが大会を棄権するということになった。
それだけならば凍花にとっては朗報だったが『コイツもアタシと同類だからな』なんて言い出すものだから、凍花までもそれに巻き込まれる形で辞退させられることになってしまった。
せっかくの報酬を楽しみにしていたというのに、ドラーニアに会ってから色々と台無しである。
そして会場の見学席に戻り、ラビを連れてから再び先程の部屋へ……
「あの……これは……?」
「なんか大会を辞退してほしいんだってさ。
私もさっき言われてビックリだよホント……」
突然大会の棄権が決まって、呼び出された場所にはドラーニアとギルド長。
ラビも意味がわからず困惑してしまう。
そんな中、ギルド長がラビを見て口を開く。
「トウカ君と一緒に旅をしている子が君か?」
「あ……はい……」
ジロジロと見るものだから、ラビも口元を見えないように必死に服の襟で口を覆っている。
手袋もしているが、そう注目されては隠すに隠せないだろう。
しばらくしてギルド長はため息をついて、頭を掻きむしっていた。
「はぁ……
つまり、そちら側につけとドラーニア殿は言うわけか」
「別にどちらかに加担しろとは言わないさ。
アタシはいつでも中立だよ」
「はぁ……承知したよドラーニア殿。
だが、儂が協力できるのはダンジョンの解放くらいだ。
実力がなくて死んでも、儂は一切の責任を取らんからな」
ため息を吐いて目頭を押さえているギルド長。
反対の手をパタパタと振るのは、退出を促しているようだ。
「では頼んだぞ。心配せんでも約束を守ってくれればアタシは何もしないさ」
話は終わったようで、訳もわからぬまま凍花たちは共に部屋を出る。
しかも『後でドラジェから説明させるからの』なんて言って高く跳ぶと、そのまま山の方へ消えてしまうのだから困ってしまう。
そして翌朝……
「本当に困った方ですよ、ドラーニア様は!」
開口一番、相当なお怒りモードのドラジェ。
朝食で出した卵焼きと鶏ハムを食べながらブツブツと愚痴を言っていた。
「そうそう、ドラーニア様が説明するようにと仰るのでお伝えしますが、基本的に人間には内緒にしててくださいよ。
別に僕たちは困りませんし、すでに一部の者は知っていますが……一応は神様たちのルールみたいですので」
もぐもぐと口を動かしながら喋るドラジェは、食べ終えた皿を持って凍花に渡す。
「そもそも何の話かもわからないのに喋るなって言われたって『ハイ』とは言えないわよ」
凍花はカリカリに焼いた薄切りの干し肉に卵を落としベーコンエッグ風にしたものを渡す。
「それを今から説明するんだよ。
ったく、亜人と精霊のことなんて放っておけば良いのに。
まったく……この黒コショウのアクセントが美味いな」
半熟卵を落としたサラダに、スライム乾燥させたパンの角切りをトッピング。
ドレッシングはまだ研究中のため、シーザーもどきとなった。
「お姉ちゃん、私もおかわり」
ラビもまた食欲は旺盛。
食べ盛りといえばそれまでだが、基本的に人外は人間よりも多く食べるのだろうか?
「美味しいでしょ。
この間教えてくれたマテリアの使い方のおかげで、卵が手に入るようになったから」
「うむ。野菜は好かんが、これはなかなか良い。
……いや、それは今はどうでも良いのだが」
とにかく食事の話をしていても埒があかないと、大事な話の内容を教えてもらうことにした。
今回、ドラーニアからギルドへ依頼した内容はダンジョンの解放である。
それは凍花およびラビとその従魔を好きに行動させよというもの。
そも理由がドラジェの怒っている理由でもあるのだが、ただ純粋に『強くなって戦おう』というもの。
長年、世界を見守っていると暇で暇で仕方ないらしい。
「でも何で私たちなのよ?」
そこが凍花の疑問である。
確かに召喚できるスキルはチートくさいが、オークだってエルフだっている世界で選ばれる理由がわからない。
「それは、トウカがラビと共にいるからだよ。
通常、亜人と精霊が手を組むなどあり得んからな」
フォークの先を凍花に向けて睨むドラジェの、その口元には卵黄の黄色が付いて見える。
そもそも世界には人間と魔物の他に『精霊種』と『亜人種』が存在していた。
エーテルを取り込みながら存在する精霊種は、魔法を使い亜人種からマテリアを奪い成長する。
逆にマテリアを糧として生きる亜人種は、スキルを用いて精霊種からエーテルを刈り取る。
そんなお互いに争い続ける二つの種族だったが、いつからか少しずつお互いの力が混ざり合った種も出てくるようになった。
それが妥協の称号を持つ人精霊。
そしてその精霊が受け入れてしまった寄生の称号を持つ兎亜人である。
「おおかた、寄生されてもお互いに強くなるなら構わないという気持ちだったのだろうが。
言っておくが、トウカのスキルのほとんどはラビに吸われているぞ?」
「別に私は困ってないから良いわよ」
今更何を言っているのだろうか?
リンクスキルがレベル2になった時に散々疑ったとも。
人間に嫌われている理由も考えたが、そちらは未だに不明だが……
「さ、さすが妥協の使徒だな。
スキルも魔法もろくに扱えないのに、周りに与える力だけは何にも勝るとは聞いていたが……」
食べるだけ食べて酷い言いようである。
「つまり何が言いたいのよ?」
食後にと思いハーブティーを用意したが、凍花はそれを持ったままドラジェに訊ねる。
「なに、そういった化学反応で何が起きるかと期待をしているのだろうさ。
それにしても長い間、精霊種が亜人種を追い詰める形で世界は動いていたからな。
何の気の迷いで、トウカのような使徒を産んだというのだろうか……」
凍花も座って一緒にハーブティーを飲む。
とにかく今からやるべきことは店の経営だ。
なぜなら、それをドラーニアが望んでいるから。
これまで、凍花は『精霊種』『亜人種』関係なくダンジョンを屠ってきた。
オークは亜人種、エルフとストーンゴーレムの時は精霊種だったそうだ。
そしてニクスもまた精霊種。
「相手の殺意を感じた時に警告を感じたことはないのか?
使徒同士の争いでは、必ず何かしらの前兆はあるものなのだが……」
精霊種同士では感じない何かがオーク戦の時にあったかどうか。
と言われても、何も思い当たるものはないし、必死だったので見落としたのかもしれない。
その後ラビと出会い、凍花自身は新しく召喚できる魔物は増えずにいた。
しかも、ダンジョンを潰して得た力も少しづつラビに吸われているそうだ。
だから第三者目線で見れば、ラビが力を増すために凍花が張り切っているように見えている。
「いや、ラビも頑張ってるし、別にそれでも良いじゃん。
ちなみに、すでにその話は済んでいるのよね」
「ん? どういうことだ?」
「だから、ラビが私に寄生してるのを承知で私は旅をしてるし、ラビも私がいる限りは強くなれるんだから裏切るつもりは無いってこと。
そうねぇ……ラビがもしドラーニアさんくらい強くなったら、私なんてどうでもよくなって殺しちゃうかもしれないけど」
「そ、そんなことしないですっ!」
いつぞやに本音をぶち撒けたのは、村人に殺意を抱いた時であろうか。
それでも一緒にいると言ったラビが、村の冒険者のために身を犠牲にしていた。
それすらもあざといと感じたのも伝えたが、正直人間の命などどうでも良く、凍花にとって理想の姿でありたいと思っただけのことだと伝えられた。
「貴女たち……本当に敵対している使徒同士なのですか?」
ドラジェが怪訝そうな表情をしていた。
凍花がラビの顔を見ると、ラビは軽く俯いて喋り始めた。
「私は……別にどっちでも良いんです。
ただ、お姉ちゃんは優しいし、一緒にいて楽しいことも多いから。
だから、次のダンジョンが亜人種のものでも多分……」
ラビが言い終わる頃、凍花はふんぞり返って自信満々にドラジェにこう伝えた。
「ほら、ラビだってこう言ってるんだし。
ドラーニアさんのお望み通り、鍛えてこの世界で最強を目指してあげるわよ!」
「ちょ、ちょっとお姉ちゃんっ?!」
ーー1章 完ーー
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(……一度やったから第二次改造はしないかも知れない……)
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……あ、これ、寄生も強化というか相乗効果というか……。
というか、さらなるこうかが……?
依頼②
ストーンゴー レムうい見送って凍花たちは、後を任せ て宿へと戻るのであった。
↓
ゴーレム『を』
収納無しは大変そうだけど、荷物持ちが出せる分大丈夫かな。
主人公が楽しそうで良いです。