~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女

にせぽに~

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少女達の輪舞曲《ロンド》

課題と対策

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ベイザの町を出発してから3日経った。
私達3人は帝都と言う所を目指して街道を歩いていく。
まぁ、街道と言っても「馬車が通れる道」ってレベルなだけで
舗装されてたりはしていないただの道だ。
当然通行手段は徒歩、宿泊施設なんかないから野宿だ。
普通なら現代日本で育った若者は死ぬ思いになるんだろうけど
お爺ちゃんに鍛えて貰った私は割と平気だったりする。
まぁ、野生動物満載の山に1か月放り込まれた事もあったからね………
街道も平野だけじゃなくて森の中を通ったりするのでそこを住処にしている
魔物達に襲われてたりもする。
と言うか、現在絶賛戦闘中だったり………

「シャアアアア!!」
「ふっ!!」

がすっ!!

飛びかかってきた角の付いた大ウサギ(アルミラージって言うらしい)に
カウンター気味でその顔面に右肘を入れる。

「キュアアアァァァ………」

吹っ飛ばされたアルミラージは地面に転がる。
追い打ちをかけるために素早く駆け寄る、けど既に事切れていたらしく
アルミラージは動かなくなっていた。
ふぅ、一先ず何とかなったかな。

「ほう、やはり凄いのう嬢ちゃん」

私の少し後方で弓を持ったゼーレンさんが感心したようにつぶやく。

「そっちこそ、私が1体倒してる間に2体仕留めてたね、しかも1射づつで」

私の周辺に2体ほど額に矢を受けて絶命しているアルミラージが転がっている。

「嬢ちゃんが3体同時に釘付けしてくれたからの、お陰で楽じゃったわい」
「ウサギたちの動きが単純だったからね、思ったより鈍かったし」
「レン、怪我はない?」

ゼーレンさんのさらに後方で戦闘を見ていたフィルが駆け寄ってくる。

「うん、どこも怪我してないよ」
「怪我したら直ぐに言ってね、ある程度の傷ならすぐに治せるから」

改めて魔法って凄いと思う、この戦闘のちょっと前に大きな蛇と戦った際
判断ミスで牙を引っ掛けちゃったらフィルは大慌てで魔法をかけてきたんだよね。
そうしたらみるみる傷がふさがって戦闘中なのにちょっと吃驚した。
今まで戦闘中に傷を治すって行為は出来なかったから感動すら覚えたよ。
うん、こんなことが出来るなら確かに引っ張りだこだよ、フィル様々だね。

「それにしたってレンの回避能力は凄いわね、ここまでの戦闘で
 傷の追ったのはラージヴァイパーの1回だけだもの」
「まぁ、当たったら致命傷になるしこのくらいはね」
「勿体ないのう、その動きなら武具が装備出来ればもっと強いじゃろうに」

そうなのだ、あれから旅の準備として色々な必需品を買いに行ったが
何故が私は「武器・防具」にカテゴリされたものは
武器や防具を持とうとすると何故か握れない、ナイフ1本持てないのだ。
詳しい理屈は分からないけど、ゼーレンさん曰く、

「武具には装備レベルと言うものがあっての、武具を装備するのに相応のレベルが
 必要になるんじゃ、強い武器なら当然高いレベルが要求されるし
 弱い武器ならレベル1からでも装備出来る。
 じゃが0じゃ、だから装備できないのかも知れんのう」

という事らしい、短剣すら使えないのは結構しんどいかも。
戦う事自体に支障はないけど、保護具なしでの格闘戦は直ぐに
拳とかを痛めるんだよね。
そういう訳で今の私は手にバンテージ代わりに布をぐるぐる巻き状態にしてる。
やらないよりはマシだろうけど心もとないのは確かだ。
ちなみに防具も持てなかったけど服ならオッケーだった、流石に学生服
着っぱなしは乙女として勘弁して欲しかったので正直ほっとしてる。
まぁ、そのお陰で今の私の格好が結構恥ずかしいものになってるけど………

「でも、その衣装で戦うレンは素晴らしいわ
 新たなレンの魅力が発見できたし、頑張って選んでよかったわ♪」
「ほっほっほ、そうじゃのうそうじゃのう
 いやはや惜しい事をしたかもしれん、帝都に用が無ければ
 しばらく嬢ちゃん達に同行させて貰いたかったんじゃがなぁ」

フィルとゼーレンさんが好き勝手なことを言ってる。
そりゃね、確かに動きやすい服がいいって言いましたよ?
けどね、これ肩やお腹、太腿が剥き出しなんですけどー!!
ご丁寧にスリットも入ってて鼠径部の横まで切れ込んでるし………
これ絶対旅装束じゃないよね、風とか吹いたらめっちゃ寒いよね!!
………と思ってたけど、どうやらこれは本当に旅装束らしいんだよね。
何かずっと着っぱなしでも汚れない魔法の素材で、胸元の窪みに
魔晶石?ってのをはめ込むと寒暖を調節してくれて日焼けや凍傷も
防いでくれるとの事みたい。
フィル曰く最高級品らしいけど………絶対好みで選んでる気がする。
私の体なんて見ても面白くないと思うんだけどなぁ。

「よし、とりあえずアルミラージの魔晶石を取り出すから
 嬢ちゃん達は待っといてくれ」

ゼーレンさんはそう言うと懐からナイフを取り出し、アルミラージの
死骸に突き立てる。
この世界の動物………いわゆる魔物は体内に石、魔晶石と呼ばれる物を
持っていて、それがこの世界の主なエネルギー源になってるみたい。
一応全ての魔物に存在するらしいけど、強力な魔物には強力な魔晶石が
あるらしくて、それらを取ってくるのが冒険者の収入源1つみたい。
当然安定供給させるにはどうしても冒険者の数が必要らしく………
これがこの世界の国が冒険者を厚遇する理由の1つみたいだね。

「ふむ、アルミラージにしては結構良さげな魔晶石じゃの
 そら、嬢ちゃん達」

ゼーレンさんは取り出した魔晶石を全部私達に渡す。
最初の魔物を倒した時は等分しようと言ったんだけどゼーレンさんは首を振って

「儂には必要ないし、熟練冒険者が新人冒険者をフォローするのは
 ギルドの決まりでな、遠慮せずに持ってくとええ」

と言って受け取ってくれなかった。
私の事を凄いとは言ってるが、実際魔物を倒してるのはほぼゼーレンさんだ。
私は体格の都合上、徒手空拳だとどうしても打撃が軽く、魔物相手に
ダメージを与えることは余り出来ない。
さっきのアルミラージもカウンターで急所に全体重を乗せた肘を打ち込めたから
倒せたのであって、通常の打撃だと決め手になるかは怪しいところだ。
なので魔物を倒す役はゼーレンさんに任せ、私は牽制と足止めに徹していた。
そうやって足止めした魔物をゼーレンさんは全て1射で仕留めていく。
前線に絶え間なく動いてる私がいるのに寸分違わず魔物を射抜くなんて
この人やっぱりとんでもないね。
しかし、この先の事を考えるとこのままだとちょっとマズいかな………

「う~ん………どうしたものかな」
「どうしたのレン?」
「ちょっと冒険者になった後の事を考えてて、流石にフィルと2人だと
 少し厳しいことになるかなと思ってさ」
「レン………もしかして私に何か不満があるの!?」

フィルがこの世の終わりのような顔で私を見つめてくる。
そうじゃないから、だから涙目で顔を寄せてくるのは止めて
何だかわからないけど罪悪感がすごいから。

「フィルに何も不満は無いよ、と言うか付き合って貰ってるのに
 不満何て言ったら罰が当たるよ」
「だったら何が不安なの?」
「それは………」
「レン嬢ちゃんの攻撃力の問題じゃな」

私が感じていた不安をズバリ言い当てるゼーレンさん。

「確かにレン嬢ちゃんの戦闘技術は目を見張るものが在る、同じ冒険者でも
 素手で魔物と渡り合うことなどまず無理じゃろ」
「渡り合えるなら何も問題無いじゃない、怪我しても私がいれば治せるし」
、だけじゃダメなんじゃよ。レン嬢ちゃんは素手な分武器の攻撃力に
 頼ることが出来ない、なのでどうしても攻撃力不足になるんじゃ」
「そっか………武器が持てないんじゃ武器を鍛えることも出来ないものね」

ん?また変な言葉が出てきたような。
武器を鍛える?鍛冶屋さんで精錬でもするのかな?

「フィル嬢ちゃんがそれをフォローできる魔法が使えれば話は変わるんじゃがの」
「ごめんなさいレン、私が不甲斐ないばっかりに………」
「フィルが謝る必要なんてないよ、切り札があるだけでも十分なんだから」

前に熊と戦った時にフィルが使った魔法、【イラストリアス輝かしきブレッシング祝福】って
名前らしいんだけど、あれって魔法が掛かった人の身体能力が爆発的に上がる
代わりに、1日1回しか使えないらしい。
確かにあの魔法がずっと使えるなら魔物相手でもどうとでもなりそうだけど
無いものは仕方ないしね。

「まぁ、その辺りは帝都に行ってギルドに登録してから考えても遅くは無いじゃろ
 パーティ募集してる奴らがいるじゃろうし、仲間を集めるのは冒険者の
 基本じゃしの」

そっか、別に2人だけでずっと行動する必要は無いんだ。
ならゼーレンさんみたく同目的で一時行動を共にする人を探すのもいいかな。
私はそう思い、少しだけ軽くなった足で再び歩き始めた。
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