~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女

にせぽに~

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帝国と王国の交声曲《カンタータ》

リーゼの武器強化

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「これは………ケジン、これ貴方が作ったの?」

リーゼが取り出した戦斧をみてマリーさんが珍しく驚いた顔をする。
まぁ驚くよね、大きさと言い長さと言いインパクト十分だもの、この戦斧。

「イィ~クザクトリ~ィ、これも僕のベスィ~トワ~クの1つだよマリ~♪
 だけど、な~ぜかこの娘以外にはキャンットハンド~ルだったんだよNE~」
「………そりゃそうでしょうよ、こんな馬鹿でかくて重そうな武器
 魔法の補助バフがあっても人間には扱えそうにないわよ
 まぁ、貴方らしい武器と言えば武器なんだろうけど」

マリーさんが呆れた声で呟く。

「貴方らしい武器って………やっぱりケジンさんの作る武器って
 扱いが難しいものばかりなんですか?」

ふと疑問に思ってマリーさんに尋ねる、マリーさんは苦笑しながら

「お察しの通りよ、ケジンのお爺様も同じような系統武器ばかり作ってたけど
 お爺様はまだくらいみたいだったけど
 ケジンのは基本『扱えない』レベルなのよ
 握っただけで周囲を爆発させる剣とか、色々な形状に変形するけど機構が
 緻密過ぎて1回攻撃しただけで壊れる槍とかね」

………成程ね、と言うかそれって完全に本末転倒だよね。
何でそんなのばかり作ってるんだろ、変人の考える事は理解できそうにないなぁ。

「ふ~むふむふむふむ………これは確かにプロ~フィシェンシーポイントが
 フルチャ~ジですNE!!
 オィケェイ!!これなら直ぐにでもリィ~ンフォ~スト可能ですYO!!」
「………との事ですがマスター、宜しいでしょうか?」

相っ変わらず分かり辛い喋り方だけど取り合えず強化可能って事なのかな?
正直どんな原理なのかさっぱりなんだけど、強くなるって言うなら
断る理由はないかな。

「うん、リーゼがいいなら私に反対する理由はないよ
 リーゼが強くなってくれたら私も助かるしね」
「了解しました、では………」
「あ、ちょっと待って~」

私が了承し、強化して貰う為にリーゼが戦斧を差し出そうとした瞬間
マリスが待ったをかける。

「どうしたのマリス、何か不都合でもあるの?」
「んにゃんにゃ、どうせ強化するならこれらが使えるよん」

そう言ってインベントリキューブを取り出し、中から物を取り出し
ゴトゴトと音を立てながら床に置く。

「あ、これって………」
「そ、こないだ討伐した二つ角のツインホーン・破壊槌ラムブックの素材だよん
 角を1本と骨10本、牙蹄がそれぞれ2本づつ、それと皮10枚だね~
 あ、肉は流石にマリスのキューブじゃ腐っちゃうんで
 フィルミールお姉ちゃんに渡してるよ」
「へぇ~、これがあの名在りネームドの素材なのね」

床に置いた素材をマリーさんが物珍しく覗き込む。

「流石に魔力は帯びてないから魔術的な物には使えそうも無いわね
 けど肉ならデューンが興味持つかも」

興味って………これ毒持ちモンスターの肉なんですけど。
とは言えポイズンライノの肉を食材にしてるデューンさんなら
何とか出来るのかな?

「食べられるかどうかは激しく疑問だけどね~、散々解毒魔法かけたのに
 まだ毒残ってるみたいだし」

うわ、まだ残ってるってどんだけ猛毒だったのアイツの血液
あんなの浴びて良く私生きてたよね………

「あらそうなの?けどまぁデューンの事だし何か使い道を
 思いつくかもしれないわね」

使い道って………まぁ普段から毒持ちモンスターを調理してる
デューンさんなら何とかしそうな気はするけども。

「料理人根性は凄いねぇ、んじゃ後でフィルミールお姉ちゃんに
 持ってくるよう言っとくよ」
「ん、お願いね」
「そんでケジン兄ちゃん、これらの素材って使える?」

マリスがケジンさんに水を向けると、ケジンさんは興味深そうに
素材を見定めてる。
そしてひとしきり凝視した後、がばっと顔を上げて

「ゥエックセレントッ!!これは素晴らしいマテ~リアルだNE!!」

偉くテンションの上がった声色で、そして何故か回転しながら叫ぶケジンさん。
………この人は一々奇怪な動きをしないと喋れないのかね。

「という事はこの素材は強化に使えるんだ」
「ィイクザクトリィ!!とても素晴らしいマテ~リアルだYO!!
 これを使えば単純なパゥワ~アップのみならず、なんと!!
 デッドリ~ポイズ~ン属性もエンチャント可能だYO!!」

デッドリーポイズン?という事は猛毒が武器に着くって事かな?
まぁ…卑怯と呼ばれる戦法ではあるけど、武器に毒を塗るのは
確かに効果的と言えば効果的だね。

「毒属性付与かぁ、効果的と言えば効果的だけど」
「ノンノン、そんなチージーな効果では無いですYO
 このマテ~リアルでパゥワ~アップさせた暁にはなんと!!
 常に辺り一帯デッドリ~ポイズ~ンを巻き散らす様になりマスッ!!」

ぶっ!!
ケジンさんの言葉を聞いた私は思わず吹き出す。
猛毒を巻き散らすって………それってリーゼは兎も角一緒に戦う私達まで
巻き込まれる気がするんですけど!!

「えっと…ケジン兄ちゃん、それってリーゼの意志で止めたりは………」
「HAHAHAHA!!勿論インポッシブルですYO!!」
「だよね~」

いやそれは流石に使えないでしょ、リーゼ1人で戦うなら兎も角
戦斧出しただけで猛毒を巻き散らすなんてとてもじゃないけど扱える気がしない。

「問題外ですね、マスターの力になるどころか害を及ぼす可能性がある代物など
 どれほど強力であろうとも必要ありません、他にはないのですか?」

リーゼはバッサリと提案を却下し他にないのかケジンさんに問いかける。
けど、ケジンさんは掌を上に向けて首を振り

「ソ~リィ~、このマテ~リアルはポイズンに特化してるから
 それ以外のエンチャントは出来ないヨ」
「ふむ、そうですか………」
「じゃあ仕方ないね、今回は普通の強化にとどめとこっか」
「それが無難かと、マスターそれで宜しいでしょうか?」

まぁ毒を巻き散らす以外出来ないのなら仕方ない、通常の強化とやらが
どんなものか想像はつかないけどマリスが提案するなら
危険物にはならないんだろう、なら断る理由はないね。

「うん、リーゼの都合のいい感じで構わないよ」
「有難うございます、では強化を依頼いたします」

私の許可を確認した後、リーゼは戦斧を指輪にしまいケジンさんに渡す。

「ん~、それがオ~ダ~なら仕方ないNE
 オ~ケ~、受けっっ賜りました~」

そして謎の踊りを踊りながら指輪を受け取るケジンさん。
この人常に派手に動き続けてるけど、もしかしてマグロみたいに
止まったら死ぬ体質なのかもしれない。

「それじゃマイハウスに帰って早速プロセスにとりかかるYO!!
 コンプリィ~ションは明日になるからここに届けにくるNE」
 それじゃ、アディォ~ス!!」

そう言いながらケジンさんは奇妙な仕草で工具をあっという間に仕舞い込み
高笑いをしながら店を後にしていった。

「………相っ変わらずキャラが濃すぎる人だね、会話について行くのが
 やっとだよ」

静まり返った店内を見て思わず呟く私。

「あはははは、まぁ傍から見てる分には面白い人だけど
 会話をするのはちょっとしんどいね~、マリーお姉ちゃんも
 よく付き合ってるよね」

マリスの問いかけに、マリーさんは少し苦笑を浮かべつつ

「デューンの数少ない友人だからね、邪険にする訳にはいかないわ
 ま、心根は善人だし仕事はきちっとやる男だから言動に慣れさえすれば
 付き合っていくのは楽になるわよ。
 あの様子だと、何かある度に貴方達の前に顔を出しそうだしね」

まぁ、リーゼの武器をメンテナンス出来るのはあの人だけだしねぇ………
当の本人のリーゼが何とも思ってないのが幸いかな。
けどフィルと顔を合わせるのはフィルの精神衛生上避けたほうがいいかもだね。

「と言うかケジンさん、デューンさんが昼食用意してるのに
 帰っちゃったんだけど………」
「それもまたいつもの事よ、後でデューンが届けるから心配無用よ」

そうなんだ………そう言う事を聞くとあの2人の付き合いも
長いんだなと実感する
………私にはそう言う付き合いの長い友人っていなかったから
ちょっと羨ましいかも。
流石にあんな会話が大変な人はちょっと遠慮したいかもだけど。

「さて、それじゃ人形をしまおうかしらね
 悪いけどリーゼ手伝って貰えるかしら?
 動作確認も兼ねて出す時は歩かせたけど、なるべく魔力温存したいから
 この子達をあそこの待機場まで運んでくれない?結構重いのよの子達」
「マスター、宜しいですか?」
「うん、マリーさんを手伝ってあげて
 私もデューンさんに何か手伝えることないか聞いて来るから」
「それじゃマリスはどうしよっかな~、今朝の件でフィルミールお姉ちゃんを
 驚かせるのも面白そうだけど♪」

皆がそれぞれの理由でフロアから移動しようとした時、店のドアが開く。
その瞬間………


            ゾクッ!!


全身の毛が粟立つ感覚に襲われる、この感覚って………
私は思わず店の入り口に振り向くと、そこには1人の男の人が
姿を見せていた。


………私は思わずその姿を見つめる。
背丈は180近くのやや長身、少し細身には見えるけど体幹自体はしっかりしてる
そしてその体幹の動きや足の配置からして間違いなく武芸の心得がある人だ。
けど、それ以上に感じるこの感覚は間違いなく………


「あ…そう言えばケジンが出てった後施錠してなかったわね
 御免なさい、今日はお店は休みなの」

その姿に気付いたマリーさんが青年に駆け寄りそう言う。
だけど男性は僅かに首を振り

「そうでしたか、休日中に突然の訪問申し訳ありません」

そう言って男性は慇懃に頭を下げる。
………なんか育ちの良さそうな印象を受けるね、着ている物も上品っぽいし
それに何よりかなり清潔感の漂うイケメンだ、普通の女の子なら
それだけで多分イチコロだろうね、けど………

「ですが、今日は食事に来た訳では無いんです
 こちらに僕の探し人が来ていると聞いたもので訪問させて頂いたのです」

青年はそう口にすると涼やかな微笑を浮かべた。
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