~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女

にせぽに~

文字の大きさ
119 / 208
軌跡への遁走曲《フーガ》

危なげなき戦い

しおりを挟む
「ほい、レンお姉ちゃんの強化完了っと
 それじゃ一番槍は貰ったよ~
 めんどいので術式融合、【フレア・サークル業火の滅結界】!!」

マリスは速攻で私に強化魔法をかけた後、次の瞬間に周囲に様々な
幾何学文字や魔法陣が浮かび上がる。
その全てが一度に光り輝いた後、カマキリ達の周りに円柱状の光の壁が現れる。

「!?」

いきなりの事で驚いたのか周囲を見回すカマキリ、その瞬間
地面から発生した燃え盛る火炎が渦を巻いて噴き上げていく。
これ、確かあの再生しまくるトロールと戦った時にやった魔法だよね。
けどあの時ってマリス色々魔法を発動させてたような………

「術式融合って、ホントコイツは何処まで………」

あ、何かフィルか頭を押さえてる。
となるとマリスがまた非常識な事をやってるって事か。
………うん、いつも通りだね。

「フィル、頭を抱えてるとこ悪いんだけど強化魔法お願い」
「………ええ、分かってるわ」

フィルはそう言うと少し頭を振り、そして祈るような仕草をし
祝詞の様な詠唱を始める。
直ぐに詠唱は完成し、私の両腕が光の膜を纏う。

「これでレンの腕力は相当底上げされたはずよ
 ………何をするのか知らないけど、絶対無事に帰って来て」
「ん、努力はするよ」

フィルの切実な表情につい安心させるようなことを言ってしまいそうになるが
戦いにおいてイレギュラーはつきものだ、絶対大丈夫なんて言えない。

「………ホント、レンは意地悪ね」

フィルがぼそりと呟く、うん…ゴメンねフィル。

「そろそろ魔法の効果が終わるよ~、ブレスの準備はオッケーかなリーゼ?」
「言われるまでもありません、行きます!!」

魔法の効果が切れた瞬間、リーゼの口が開き炎が勢いよく躍り出て
マリスの魔法によって炎に包まれていたカマキリ達を再度炎の奔流に叩き込む。
………さて、前回のトロールは耐えきったコンビネーションだけど
あのカマキリはどうかなっと。
十数秒後…リーゼのブレスが終わり、周囲には焼けた跡と結構な
焦げた臭いが広がってる。
さて、カマキリ達はっと………

「む~、やっぱり本命には効果なしか」

マリスの唸る声が聞こえる、盛大に焼き焦げた地面の中心に
他所通りデカカマキリが鎮座している、元の色が黒かった為
焼け焦げてるのか判別が出来ないね。

「………流石にここまでレベル差が開いてると
 我のブレスすら抵抗レジストしますか、正直屈辱です」

流石にドラゴンのプライドが傷つけられたのか、リーゼが珍しく
凄い顔でデカカマキリを睨みつけてる。

「ふむ、とは言え雑魚は全滅した様じゃの
 となれば次は儂の出番じゃな」

私の少し後方で既に弓を引き絞ってるゼーレンさんが言う。

「嬢ちゃん達の突撃を合図に第一射を放つぞい
 レン嬢ちゃんは何があっても真っ直ぐ敵へ向かってくれ、そうすれば
 その後の状況が楽になるからの」

ゼーレンさんが私にそんな指示を飛ばす、真っ直ぐ敵に向かえって
言われなくてもそうするつもりだけど、ゼーレンさんが敢えてそう言ってるって
事は何か意図があるんだろう。

「分かった、それじゃリーゼ行くよ!!」
「はい、マスター!!」

私は溜めていた左足を踏みしめ、体勢を低くしカマキリに向かって駆け始める。
その少し後ろををリーゼが駆ける、さて…カマキリはどっちを狙うのかな?
突然の不意打ちに辺りを見回していたらしきカマキリだけど
近づいてくる私達に気付いたのかこちらに頭を向ける。
む…リーゼじゃなく私の方に向いてきたか、まぁ中身ドラゴンなリーゼよりも
私の方が弱い雰囲気だからターゲットをこちらに向けて来たって感じかな。
それならばと鎌の攻撃が届きにくい懐に飛び込んで行こうかと
更に踏み込みに力を込めた瞬間………


   ゴォウッッッ!!


私の頭上を大きな音を立てながら何かが通過する。
これは………ゼーレンさんの放った矢かな?
間近に迫りつつあるカマキリの方に目をやると盛大な金属音らしきものを立てながら
カマキリの胴体が仰け反ってる、どうやら胴体に命中したみたいだけど
ゼーレンさんが放った矢自体は刺さらず弾かれた様だ、着弾時の金属音からするに
コイツの外骨格は予想以上に固いみたい………
カマキリが仰け反ってる間に懐に入り込んだ私はカマキリが体勢を立て直す前に
踏鳴を入れ、左腕の付け根部分に打撃を入れる。
ズンとした柔軟性のある手ごたえが帰ってくる、よし…予想通り。
その間にカマキリは体勢を立て直し頭をこちらに向けてくる。
おや…目が真っ赤っかになってギチギチと耳障りな音を口から放つ。
ありゃ、アレは怒ってるのかな?
体格差からして私の打撃が効くとは思えない、そもそもさっきの打撃はある事を
確認するためのモノだから本気の拳打じゃない。
となればゼーレンさんの射撃が私の攻撃だと認識してるって感じなのか
成程、私をデコイにして弓を放って私に敵対心を集めた訳だね。
確かにそれなら私に攻撃が集中し戦いやすくなる、やるねゼーレンさん。
とは言えそれは私がカマキリの攻撃を捌き切れれるという前提の話なんだけど。
拳を引き、カマキリの出方を見ようと若干下がろうと瞬間
金切り音が消え、口から勢いよく液体を吐き出して来た!!

「うわっと!?」

思わず後方に飛んで躱す私、液体は地面に着弾し
そこから少しづつ小さな穴が開き始める。
うわ、コイツこんな攻撃もするの!?
溶解液を吐き出すカマキリとは………やっぱりこの世界の生物って殺意が高いなぁ。
しかしカマキリの攻撃はそれで終わらない、思わず飛び退いてしまって
未だ空中にいる私に間髪入れず左鎌の追撃が来る!!

「やばっ!!」

まずっ、このままじゃモロに喰らってしまう!!
私は何とか体勢を変えようとするもも鎌の先端が腹部を狙っていて避けきれない。
せめて急所の直撃は避けようと腕でガードすようとするも
鎌の到達の方が一瞬早く………


  ガキィ!!


迫りくる痛みに耐える為歯を食いしばった瞬間、前方から金属音が鳴り響く。

「大丈夫ですか!?マスター!!」

とっさに私とカマキリの間に割り込んだリーゼが戦斧を盾にして
鎌を防いでくれている。

「ありがとリーゼ、助かった!!」

無事に地面に着地してリーゼに礼を言う。
今のは危なかった、予想してなかった攻撃が来たとは言え
リーゼが防いでくれなかったら切り裂かれて大怪我、下手すればそのまま
真っ二つにされてお陀仏だ。
全く、油断ならないねホントに。

「はぁっ!!」

戦斧で受け止めた鎌を力任せに押し返すリーゼ、流石に力勝負では
リーゼに分があるらしくカマキリは鎌を跳ね上げられて後ろに後退させられる。
お……これはチャンス!!

「リーゼ!!悪いけどまた踏み台にさせて貰うよ!!」

私はとっさにそう叫ぶとリーゼの返答を待たず背中を駆け上がり
肩を踏み台にして跳躍する。

「マスター!?何を!?」

リーゼの驚く声が後方より聞こえる、流石にこれで2度目だから後で怒られるかな。
そんな事を思いながらも私は視線の先にある跳ね上げられた鎌に飛びつき
刃の反対側を渾身の力で掴む。
そのまま体の勢いを殺さず、鎌の真上に逆立ちするような体勢を作り………

「さて、じゃ片一方の鎌貰っていくよ!!」

そのまま全体重をかけ、鎌の柄を握ったまま
鉄棒の大車輪の如く体を後方に勢い良く振り下ろす!!


   バギャアァ!!


私の大車輪によってカマキリの鎌の部分に繋がる関節が無理矢理回転させられ
1回転もしない内に捩じ切られる!!


  ギイイイィィィィィ!!


片腕をもぎ取られたカマキリが叫び声らしきものを上げ
切断面から盛大に体液を振りまきながら仰け反る。

「うっは、レンお姉ちゃんまた豪快な事するねぇ!!」

後方で興奮気味のマリスの声が聞こえる、まぁ大道芸っぽいことやったしね。
これで最大の武器の1つは奪い取った、後はこのまま畳みかけるのみ。

「ゼーレンさん!!」
「応!!」

私の声にゼーレンさんが応え、直後に第二射が放たれる。
放たれた矢は私の横を勢いよく通り過ぎ、光の軌跡を描きながらカマキリの
胴体に向かっていき………第一射とほぼ同じ所に直撃する!!
前回は弾かれた場所だけど、第一射で脆くなっていたのか
矢は弾かれることなくカマキリの体内を貫き、胴体を両断するほどの大穴を開ける。

「すご………」

一部始終を見ていたフィルの呟きが聞こえる、そしてカマキリは
ゆっくりと体を傾け、地面に倒れ込んだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

処理中です...