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1.訪れの時
3.フェロモン・クエストへの挑戦
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サークルというかパーティの仲間という形で二人のパートナーを得て、神波はパーティの最初の活動として化学に本腰を入れることにした。入試科目の一つに化学を専攻した理由もあるが、化学を通じていろいろとやってみたいことがあったからだ。今、神波達が受けているのは「化学基礎・化学」という教科だが、まず初学者がつまづくのは組成式の書き方の理解からだ。これが簡単な様で意外と分かりにくい。
陽イオンの後に陰イオンを書く。ここまではいい。次に陽イオンと陰イオンの比を求めるわけだが、いきなり|陽イオンの電荷×陽イオンの数|=|陰イオンの電荷×陰イオンの数|という式が成り立つとか言われて、目が白黒しているうちにこの式をさらに比を求める式に変形?させて、|陽イオンの数:陰イオンの数|=|陰イオンの電荷:陽イオンの電荷|とかいう式が突然現れたかと思うと、先生曰はく「この様にして陽イオンの数と陰イオンの数の比を求めるのだ(コレでイイのだあ!と先生の心の声が聞こえるとか聞こえないとか)。」と結論づけることになって「ハイ、チャンチャン♬」と説明がまことしやかに終わる。神波が高校現役時代に教わった授業の説明は少なくともそうだった。
これは、要するに小学校時代の算数で習った「比例式」と言われるものの類の応用に過ぎない。小学校の時に比とか比率とか習った際にa:b=c:dのときにad=bcが成り立つ、つまり(内項の積)=(外項の積)という事項を教わったはずだ。この陽イオンの数と電荷、陰イオンの数と電荷それぞれの比もad=bcだからその逆にa:b=c:dも言えるよ~ん、ということを示しているに過ぎないのだ。だが、小学校時代の知識なんかもう忘れてしまっている方々もいるだろうに、高校の授業では「暗黙の了解」という摩訶不思議な掟があって、そんなこと小学校で習ったんだから高校の授業では知っているはずのことを前提としている知識は敢えて教えないよ~だ!という厳しい掟のために質問などしても、「バカモン!そんなことも分からないのか!。」と質問したこと自体で怒られてしまい、サッパリ分からないまま、授業だけがドンドン進行していくという仕組みになっているのだ(過去のことで思い当たるかも知れない)。
当然のことながら、そういう「暗黙の了解」が了解できないまま、たくさんの了解できないことが積み重なっていけば、授業はますます理解できないし質問すればするだけ怒られるだけだから、化学・化学基礎という教科科目自体もますますつまらないし面白くなくなるのは、当たり前と言えば当たり前だろう。その生徒自身が、分からないことで苦しむのをむしろ「快感」ととらえるマゾヒストでもない限りは・・・。
以上の例はなにも「化学基礎・化学」だけではない。特に理系の教科科目にはそういったことが原因で授業の落ちこぼれや理解できない者が出てくるのは多々あることだ。だが、どういうわけかそれを改善したり「掟」をやめようとする動きは、今の高校にも予備校の授業にも微塵も感じられないのは不幸なことだと神波は思うのだが、読者の方々はいかがだろうか。
さて、話を戻して神波はパーティを招集して勉強以外の化学に関するある活動を提案することにした。それは「素材」収集のクエストだった。ギルドでは、受験者達への生活支援の一環として企業からの仕事の依頼を「クエスト」と呼んで受験者にあっせんしている。クエストによる様々な仕事をあっせん、照会してくれるシステムが存在しているというわけだ。仕事の達成難易度に合わせて、通常はAランク(最高に難しい)からFランク(最もお手軽)まであるが、最上級に難しいランクにはSランク(超難関)というものもある。通常はAからFまでのランクが依頼の主流だが、Sランクはそれこそたまにしか依頼が来ないという状況になっているらしい。
今回、神波達が受けるクエストは、ある製薬会社からの依頼で化学に関する仕事だ。依頼した製薬会社によれば、昨今開発した新薬で異性誘因フェロモン剤(つまり媚薬なわけだが)の原材料の一つである「コプリン」(ゴブリンではない!)という物質を多量に含む毒キノコの一種「ビッグ・ヒトヨタケ」を素材として、たくさん収集してきて欲しいということだ。
ちなみに「コプリン」はヒトのフェロモン候補物質の一つで、分子式はC₈H₁₄N₂O₄。過去にはフランス製の香水にも添加されたこともある物質で、ヒトヨタケ属のキノコ(学名:コプリヌス・アトラメンファリス)に含まれている。
やっかいなのは、普通のヒトヨタケは白色で柄の長いヒョロリとした何の変哲も無いただの小さな毒キノコなのだが、今回クエストのターゲットである「ビッグ・ヒトヨタケ」は、人間大の大きさもあるキノコでヒトが近づくと毒の胞子を吹きかけて、異性を好きで好きでたまらなくさせてしまう眩惑に陥らせてしまうらしい。そういう少しやっかいなリスクを伴うものの、ランクとしては「F」で報酬はキノコ1本あたり金5万円というクエストなので、うちのパーティの学習資金としては申し分ないものと判断して引き受けることにしたのだ。
早速、提案したところ早瀬は簡単に同意してくれたが、恋町は当初不承不承というか、なんかしかめっ面で「仕方ないな・・・。」とこぼしていた。ところがこのクエストには「助っ人」としてどこで嗅ぎつけたのか、人形坂が加わる羽目になってしまった。
しかも「アタシ、手伝ってあげる。報酬はいらないわ。」とか人形坂は言うのだ。この助っ人の参加には恋町が大賛成で、男2人女2人のバランスがとれた?混成メンバーとなってしまった。
こうしてメンバーが決定したところで、ギルドに報告に行き計画書を提出する。ギルドで必要な資材や道具一式をレンタルし、いよいよスケジュールに従って出発することになった。目的地はニューギニア島のジャングル奥地だ。出発当日、まずは東京国際宇宙空港からスーパーシャトル便に乗って一旦、大気圏外まで出てニューギニア島の国際宇宙空港に到着する。この時代は宇宙にも進出していて、月には宇宙都市まで築かれているのだ。一行がニューギニア島まで到着するのに1時間とかからなかった。
国際宇宙空港のホテルで一泊した翌日、案内人が運転するジープに乗って現場の近くまで行く。そこからは緑の木々が鬱蒼と生い茂っているジャングルの奥地が続くばかりだ。パーティの一行はジープを降りた場所から徒歩で奥地へと進んで行く。先頭から神波、人形坂、恋町、早瀬の順での編成だ。先頭の3人は迷彩服を着てマスクとヘルメットを着用していたが、早瀬はマスク以外はいつもと変わらぬジャージと短パン姿だ。GPS移動位置確認装置を見ながら30分ほど歩くと、やがて大きな樹木の根元に高さが1メートル以上もある巨大な白いキノコの巨体が見えてきた。
「あ。アレだ。刈るぞ。」と神波が目くばせする。近づいて行くと突然、キノコからぷしゅーっとガスか何かが噴出する様な音がして、周囲に白い粉が飛散した。毒の胞子だ。慌てて、距離を取る。こちらも大きな長い柄のサイズを取り出して、キノコの根元を刈り取る。さいわいキノコ自体は柔らかく、スパッと刈り取ることに成功した。胞子もマスクを着用していたので影響は無かったようだ。胞子が飛散しないよう注意しながら、大きなケブラー繊維製の袋に二人がかりでキノコを入れ込む。こうして収穫第1号が無事終了した。収穫したキノコは帰りに運んでいくため、いったんはGPS装置で位置をマーキングした後でその場に置いておく。
「よし、次行くぞ。」
その日は順調にも3体のキノコが収穫できたので、ホテルでギルドあての宅配便で送ることにした。翌日もジープで同じ所まで行ってそこから徒歩でジャングルに分け入った。昨日よりもさらに奥深く進んだところでまだ何の収穫も無かったが、休憩を兼ねた昼食を摂ることにした。密林の中にも開けた場所があったのでそこで食事を摂る。大きな倒木があったので、そこに腰を降ろした瞬間だった。突然、背後でぷしゅーっと音がして白い粉がふり撒かれた。
例の巨大キノコだ。木の陰でこちらからは全く見えなかったのだ。ぷしゅーつ、ぷしゅーつとたちまち4人の全身に白い胞子の粉が浴びせられ、もんどり打って神波たちは倒れてしまった。倒れて手足をバタバタさせてもがいていても、キノコはさらに容赦なく胞子の粉を4人に浴びせ続ける。ついに4人とも全身、頭の先から足先まで真っ白になってしまった。しかも食事をするという油断からこの時ばかりは、マスクもヘルメットも装着していなかった。
「うわあー、く、苦しいっ・・・。」、「キャーッ」。早瀬も「苦しいようっ・・・だ、誰かたすけて・・。」とかすれた声で叫ぶのだった。神波はあまりの苦しさにフッと気が遠くなってしまった。
どれほどの時間が経過したことだろう。胸の辺りの圧迫感を感じてようやく神波は目を覚ました。
(アア、俺たちキノコにやられちゃったんだな。みんな大丈夫だろうか・・・。)と思い、ヒョイと顔を上げるとそこには異様な光景が繰り広げられていた。人形坂の顔が神波の胸の上にあった・・・。なぜか服がはだけて、神波の厚い胸板を愛撫する人形坂の恍惚とした表情がそこにはあった。
「うう・・・う、ううっ。」と押し殺したようなうめき声が近くから聞こえてくる。倒れたまま横を見ると、恋町が早瀬に倒れた体勢のまま抱きついて、彼の短パンの鼠径部に手を押しあてようとしている場面が目に入った。恋町の目はトロンとして何かに憑かれている様な表情をしている。一方、早瀬は目を閉じて恋町にされるがままになってしまい、顔を真っ赤にして何かに感じて耐えているかの様にしきりに呻いていたのだった。
(は、早くなんとかしなきゃ・・・。)と神波は体を動かさそうと試みてみたが、痺れてしまったかの様に感覚がなくなり、体を自由に動かすことができない。もがけばもがく程、ドロ沼に嵌っていくような気持ちだった。そしてしばらくすると、自分もなんだかイイ気分になって目の前の人形坂を抱きしめたい衝動に駆られてきた。心の中では必死に抵抗していても、体がだんだんと自分の意志とは全然別の方向へ行ってしまう様な感じだった。
(こ、このままじゃダメだ・・・ど、どうすればいいんだ・・。)心は焦るものの、神波の意識は再び奈落の底へ吸い込まれる様な感覚に襲われ始めていた。
陽イオンの後に陰イオンを書く。ここまではいい。次に陽イオンと陰イオンの比を求めるわけだが、いきなり|陽イオンの電荷×陽イオンの数|=|陰イオンの電荷×陰イオンの数|という式が成り立つとか言われて、目が白黒しているうちにこの式をさらに比を求める式に変形?させて、|陽イオンの数:陰イオンの数|=|陰イオンの電荷:陽イオンの電荷|とかいう式が突然現れたかと思うと、先生曰はく「この様にして陽イオンの数と陰イオンの数の比を求めるのだ(コレでイイのだあ!と先生の心の声が聞こえるとか聞こえないとか)。」と結論づけることになって「ハイ、チャンチャン♬」と説明がまことしやかに終わる。神波が高校現役時代に教わった授業の説明は少なくともそうだった。
これは、要するに小学校時代の算数で習った「比例式」と言われるものの類の応用に過ぎない。小学校の時に比とか比率とか習った際にa:b=c:dのときにad=bcが成り立つ、つまり(内項の積)=(外項の積)という事項を教わったはずだ。この陽イオンの数と電荷、陰イオンの数と電荷それぞれの比もad=bcだからその逆にa:b=c:dも言えるよ~ん、ということを示しているに過ぎないのだ。だが、小学校時代の知識なんかもう忘れてしまっている方々もいるだろうに、高校の授業では「暗黙の了解」という摩訶不思議な掟があって、そんなこと小学校で習ったんだから高校の授業では知っているはずのことを前提としている知識は敢えて教えないよ~だ!という厳しい掟のために質問などしても、「バカモン!そんなことも分からないのか!。」と質問したこと自体で怒られてしまい、サッパリ分からないまま、授業だけがドンドン進行していくという仕組みになっているのだ(過去のことで思い当たるかも知れない)。
当然のことながら、そういう「暗黙の了解」が了解できないまま、たくさんの了解できないことが積み重なっていけば、授業はますます理解できないし質問すればするだけ怒られるだけだから、化学・化学基礎という教科科目自体もますますつまらないし面白くなくなるのは、当たり前と言えば当たり前だろう。その生徒自身が、分からないことで苦しむのをむしろ「快感」ととらえるマゾヒストでもない限りは・・・。
以上の例はなにも「化学基礎・化学」だけではない。特に理系の教科科目にはそういったことが原因で授業の落ちこぼれや理解できない者が出てくるのは多々あることだ。だが、どういうわけかそれを改善したり「掟」をやめようとする動きは、今の高校にも予備校の授業にも微塵も感じられないのは不幸なことだと神波は思うのだが、読者の方々はいかがだろうか。
さて、話を戻して神波はパーティを招集して勉強以外の化学に関するある活動を提案することにした。それは「素材」収集のクエストだった。ギルドでは、受験者達への生活支援の一環として企業からの仕事の依頼を「クエスト」と呼んで受験者にあっせんしている。クエストによる様々な仕事をあっせん、照会してくれるシステムが存在しているというわけだ。仕事の達成難易度に合わせて、通常はAランク(最高に難しい)からFランク(最もお手軽)まであるが、最上級に難しいランクにはSランク(超難関)というものもある。通常はAからFまでのランクが依頼の主流だが、Sランクはそれこそたまにしか依頼が来ないという状況になっているらしい。
今回、神波達が受けるクエストは、ある製薬会社からの依頼で化学に関する仕事だ。依頼した製薬会社によれば、昨今開発した新薬で異性誘因フェロモン剤(つまり媚薬なわけだが)の原材料の一つである「コプリン」(ゴブリンではない!)という物質を多量に含む毒キノコの一種「ビッグ・ヒトヨタケ」を素材として、たくさん収集してきて欲しいということだ。
ちなみに「コプリン」はヒトのフェロモン候補物質の一つで、分子式はC₈H₁₄N₂O₄。過去にはフランス製の香水にも添加されたこともある物質で、ヒトヨタケ属のキノコ(学名:コプリヌス・アトラメンファリス)に含まれている。
やっかいなのは、普通のヒトヨタケは白色で柄の長いヒョロリとした何の変哲も無いただの小さな毒キノコなのだが、今回クエストのターゲットである「ビッグ・ヒトヨタケ」は、人間大の大きさもあるキノコでヒトが近づくと毒の胞子を吹きかけて、異性を好きで好きでたまらなくさせてしまう眩惑に陥らせてしまうらしい。そういう少しやっかいなリスクを伴うものの、ランクとしては「F」で報酬はキノコ1本あたり金5万円というクエストなので、うちのパーティの学習資金としては申し分ないものと判断して引き受けることにしたのだ。
早速、提案したところ早瀬は簡単に同意してくれたが、恋町は当初不承不承というか、なんかしかめっ面で「仕方ないな・・・。」とこぼしていた。ところがこのクエストには「助っ人」としてどこで嗅ぎつけたのか、人形坂が加わる羽目になってしまった。
しかも「アタシ、手伝ってあげる。報酬はいらないわ。」とか人形坂は言うのだ。この助っ人の参加には恋町が大賛成で、男2人女2人のバランスがとれた?混成メンバーとなってしまった。
こうしてメンバーが決定したところで、ギルドに報告に行き計画書を提出する。ギルドで必要な資材や道具一式をレンタルし、いよいよスケジュールに従って出発することになった。目的地はニューギニア島のジャングル奥地だ。出発当日、まずは東京国際宇宙空港からスーパーシャトル便に乗って一旦、大気圏外まで出てニューギニア島の国際宇宙空港に到着する。この時代は宇宙にも進出していて、月には宇宙都市まで築かれているのだ。一行がニューギニア島まで到着するのに1時間とかからなかった。
国際宇宙空港のホテルで一泊した翌日、案内人が運転するジープに乗って現場の近くまで行く。そこからは緑の木々が鬱蒼と生い茂っているジャングルの奥地が続くばかりだ。パーティの一行はジープを降りた場所から徒歩で奥地へと進んで行く。先頭から神波、人形坂、恋町、早瀬の順での編成だ。先頭の3人は迷彩服を着てマスクとヘルメットを着用していたが、早瀬はマスク以外はいつもと変わらぬジャージと短パン姿だ。GPS移動位置確認装置を見ながら30分ほど歩くと、やがて大きな樹木の根元に高さが1メートル以上もある巨大な白いキノコの巨体が見えてきた。
「あ。アレだ。刈るぞ。」と神波が目くばせする。近づいて行くと突然、キノコからぷしゅーっとガスか何かが噴出する様な音がして、周囲に白い粉が飛散した。毒の胞子だ。慌てて、距離を取る。こちらも大きな長い柄のサイズを取り出して、キノコの根元を刈り取る。さいわいキノコ自体は柔らかく、スパッと刈り取ることに成功した。胞子もマスクを着用していたので影響は無かったようだ。胞子が飛散しないよう注意しながら、大きなケブラー繊維製の袋に二人がかりでキノコを入れ込む。こうして収穫第1号が無事終了した。収穫したキノコは帰りに運んでいくため、いったんはGPS装置で位置をマーキングした後でその場に置いておく。
「よし、次行くぞ。」
その日は順調にも3体のキノコが収穫できたので、ホテルでギルドあての宅配便で送ることにした。翌日もジープで同じ所まで行ってそこから徒歩でジャングルに分け入った。昨日よりもさらに奥深く進んだところでまだ何の収穫も無かったが、休憩を兼ねた昼食を摂ることにした。密林の中にも開けた場所があったのでそこで食事を摂る。大きな倒木があったので、そこに腰を降ろした瞬間だった。突然、背後でぷしゅーっと音がして白い粉がふり撒かれた。
例の巨大キノコだ。木の陰でこちらからは全く見えなかったのだ。ぷしゅーつ、ぷしゅーつとたちまち4人の全身に白い胞子の粉が浴びせられ、もんどり打って神波たちは倒れてしまった。倒れて手足をバタバタさせてもがいていても、キノコはさらに容赦なく胞子の粉を4人に浴びせ続ける。ついに4人とも全身、頭の先から足先まで真っ白になってしまった。しかも食事をするという油断からこの時ばかりは、マスクもヘルメットも装着していなかった。
「うわあー、く、苦しいっ・・・。」、「キャーッ」。早瀬も「苦しいようっ・・・だ、誰かたすけて・・。」とかすれた声で叫ぶのだった。神波はあまりの苦しさにフッと気が遠くなってしまった。
どれほどの時間が経過したことだろう。胸の辺りの圧迫感を感じてようやく神波は目を覚ました。
(アア、俺たちキノコにやられちゃったんだな。みんな大丈夫だろうか・・・。)と思い、ヒョイと顔を上げるとそこには異様な光景が繰り広げられていた。人形坂の顔が神波の胸の上にあった・・・。なぜか服がはだけて、神波の厚い胸板を愛撫する人形坂の恍惚とした表情がそこにはあった。
「うう・・・う、ううっ。」と押し殺したようなうめき声が近くから聞こえてくる。倒れたまま横を見ると、恋町が早瀬に倒れた体勢のまま抱きついて、彼の短パンの鼠径部に手を押しあてようとしている場面が目に入った。恋町の目はトロンとして何かに憑かれている様な表情をしている。一方、早瀬は目を閉じて恋町にされるがままになってしまい、顔を真っ赤にして何かに感じて耐えているかの様にしきりに呻いていたのだった。
(は、早くなんとかしなきゃ・・・。)と神波は体を動かさそうと試みてみたが、痺れてしまったかの様に感覚がなくなり、体を自由に動かすことができない。もがけばもがく程、ドロ沼に嵌っていくような気持ちだった。そしてしばらくすると、自分もなんだかイイ気分になって目の前の人形坂を抱きしめたい衝動に駆られてきた。心の中では必死に抵抗していても、体がだんだんと自分の意志とは全然別の方向へ行ってしまう様な感じだった。
(こ、このままじゃダメだ・・・ど、どうすればいいんだ・・。)心は焦るものの、神波の意識は再び奈落の底へ吸い込まれる様な感覚に襲われ始めていた。
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