羽根の生えた日

あるす

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やっと見つけた……!

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毎日同じような事の繰り返しで、気分は萎えていて。
中学二年生の村主翼すぐりつばさは、黒くて長い髪の毛をサラサラとなびかせて、ため息を吐きながら登校する。

周りの生徒達みたいに、明るく元気に朝から騒げない。
よくある両親の喧嘩が、彼女のストレスだった。早く離婚して欲しい、と密かに願っていた。

学校の方が落ち着くけど、保健室が1番過ごしやすい。
教室の生徒達はかしましくて、やっぱりそのテンションにはついていけなかった。
少し幼稚だな、と思ってしまっていた。

今日は学校についたら保健室に直行しようと歩きながら決めていた。
その翼の姿を見詰める、4つの瞳、2人の影が、木の上に。

……やっと見つけた!

「あのだよ!たすく!」

耶弥耶翼かみやよくが、隣にいる鳳翼おおとりたすくに声をかけた。

「まだ力には目覚めてないみたいだな…」
「ぼく声かけてみるよ!」

たんっと、よくが、軽やかに地面に着地する。と、虹色に輝く小さな羽根が、ひらひらと舞い落ちた。

村主翼すぐりつばさは、保健室にいた。
何時もどおりの仮病だったが、保険医は注意することも、気に留めることもしてなかった。
少し開いた窓から、桜の花びらがひらひらと、白いベットに散り、美しく光が射していた。

良くも悪くもつばさに無関心な保険医が、用事で席を立つと、室内にはつばさの規則的な寝息が微かに響いた。少し身じろぐと、衝立に小柄なくまの帽子を被った少年の影が見えた。

「こんにちは、はじめまして」

ひょこっと、衝立の後ろから、ピンクブラウンの髪の毛をくまの帽子から覗かせた男の子が、満面の笑みで。

「は?誰?何??」

人懐こそうなタイプのショタが、握手を求めてきた。訳が分からない。
つばさは警戒して、両手でシーツを手繰り寄せ、口元を覆った。

「ぼくは、耶弥耶翼かみやよくと言います…大事な話があって来ました」
「は?告白かなんか??悪いけど、私知らない人とは付き合えないから…」

つばさは差し出された手を無視して、ベットから飛び降りた。

「え、いや、あの…」

赤くなって否定する姿に、何こいつと冷たい事を思う。
中身も知らないで、見てくれで声をかけてくるようなタイプの人間は嫌いだった。
下手すると私の名前すら知らないで、好きとか思ってるなんて吐き気がする。

「何度言われても変わらないから!」

そそくさと早歩きで、屋上へ向かう背中によくが、待って!と声をかける。

お父さんもお母さんも、あたしの気持ちなんて考えてない。
能天気なクラスメイト達もきっとあたしの気持ちなんて考えてない。

そう、誰も。

好きとか言う人だって。

毎日毎日窒息しそうだった。
誰でもいいけど、誰もが嫌だった。
透明な何かに閉じ込められてるみたいだった。

生きてる感じがしなかった。

誰かに助けて欲しい。

けど、でも。

どうしたらいいの?


追いかけてくる気配から、逃げるようにつばさは階段を上る。

ねぇねぇ
誰か

助けてよ

ドアを開ける、広い空を求めて。
何も掴めないの分かってるけど、フェンス越しの青に手を伸ばした。

お願い誰か、名前を呼んで。


つばさ!!!!」

ガタンっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

フェンスが勢い良く外れて、つばさの身体が校舎の外に投げ出される。

つばさ!!!!」

よくが心配そうに屋上から身を乗り出す、が、後から来た影が、それを止めた。

「もうちょっと…」

あたし、死ぬの???

死にそうな気分だったけど、まだ死にたくない。
最後に、名前を呼んでくれたのに。

でもなんで?誰なの???

バサッ!と背中から音がした。

生えた?何が?ツバサが???

「飛ぶんだ!!!」

飛ぶ??????
どうやって??

こんな小さいツバサじゃ無理!!!間に合わない!!!!

もうダメ!!!


思った瞬間、下からお姫様抱っこされた。
ふわりと、身体が浮いた。



バサバサと、羽ばたく音がした。

「大丈夫?俺は鳳翼おおとりたすく、君の仲間だ」
「仲間???」

お姫様抱っこをしてくれた人は、大人っぽくて、格好良かった。
黒緑色の髪の毛が、少し伸びて顔にかかっていて。
多分間違いなく年上で、ドキドキした。

恋の予感?なのだろうか???

たすくつばさを屋上に降ろすと、大きな羽根をしまった。

「天使?なの??」
「天使じゃないよ」

よくが苦笑いして否定した。

「どちらかと言うと鳥人間だな」
「は?鳥??」

鳥人間ってよくコンテストしてるアレじゃないの???

「そ、君も仲間だよ」

よくが笑顔で言った。

あたしが、鳥人間!?????????????????????

理解の追いつかない頭に、破けた制服のシャツから出た小さな羽根が、あたしに事実を伝える。

「ぼく達は理由があって、仲間を探してたんだ」

そういうと可愛いショタが、やたらと紳士な態度で、カーディガンをかけてくれた。

「羽根をしまって」
「俺達の話を聞いて欲しい」

イケメンのお兄さんが、そう言って真剣な顔をした。

毎日同じような事の繰り返しで、気分は萎えていた、けど。
新しい何かが、始まりそうだった。

この2人が、知らない世界に、連れて行ってくれるような気がした。
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