羽根の生えた日

あるす

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お前をチキンにしてやるぞ、からの

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野道が三雪をおんぶして駆け付けると、時既に遅く、よくが高津に負けた後であった。

「三雪ちゃんは無事だから、落ち着け、高津」

ハァハァとまだ肩で息をしている興奮状態の高津とボロボロになったよくに野道は眉根を寄せて顔をしかめた。

野道におんぶされて眠る妹をみて、高津は安堵の表情を浮かべる、よくは薄く目を開けて、野道に視線を向けた。それに応えるように話し出す。

「よく、よっくん、聞いてる?」ついでに高津お前も聞けよな、と野道は言う。

「大事な話だ。実はつばさちゃんが捕まったのは、俺と彼女の作戦なんだ。つばさちゃんは、事件の情報を探りに潜入したってわけ。そして、彼女を捕まえる事で沙花凪さかなぎの奴に俺は信用される作戦だったわけ。よっくんに話さないでいたのは作戦ミスだったよ」

ごめん、と野道は謝った。

「でも三雪の事があったから、作戦を知っててもぶちのめしてたかもしれない」

高津が言うとよくが、勘弁してよ、と力無く苦笑いした。

「高津、お前はそのまま、よっくんをつばさちゃんの閉じ込められてる場所に連れて行ってくれ。2人は責任もって逃がすよ。なぁ高津?」

「理解した、協力するよ」

高津は三雪を優しく撫でた後、苦笑いした。



沙花凪さかなぎつばさに迫っているところに、高津が

「失礼します、鳥を捕らえました」

とやって来て、2人の影は離れた。

「捕らえたか、よくやったな」

ゴロン、と転がされたよくを見て、つばさが青ざめる。

「酷い!よく!!大丈夫!?しっかりして!!」

よくは薄く目を開けて、視線をつばさに合わせると、力無く薄く笑ってウィンクした。
その後、直ぐに気絶しているフリをする。

……私の為にこんなに……

つばさは泣きそうになって唇を手で覆う。

「その小鳥は邪魔だな」

沙花凪さかなぎは呟いた。

「邪魔者は殺すまで」

物騒な台詞に、慌てて高津は

「コイツは俺の獲物です。初めて狩った鳥だし、好きにして良いですか?」

と口から出任せを言った。
よくの首にある傷をみて、沙花凪さかなぎは少し笑ったように見えた。

「喰いたいのか?」
「はい」

迷わずに真っ直ぐ瞳を見詰めてこたえる。

「お前も猫の本能に目覚めたってわけだな」
「元々鳥肉好きですし、食べてみたいです」

嘘か本当か分からない会話に、つばさは困惑していたが。

「よし来い、お前をケンタにしてやる」

あぁ、大丈夫だ、と思った。
確かによくはボロボロだし、高津コイツが痛めつけたんだけど、あのよくのウィンクはなんか策があるに違いない、多分。

ボロボロのよくを再び担いで、高津が部屋を後にした。
足早に向かうのは、三雪を預かる野道の居る部屋だった。

「殺されそうだったから、俺が喰うって事にして連れてきた」
「ナイス判断」

高津が言うと野道が褒めた。

「怪我の治療もしないとだしねぇ」
「あ、応急処置だけで良いよ」

自分達には琳紗りんささんと言う癒しのパワーを持つ綺麗なお姉さんがついている、と思ったが

「まぁ僕も消毒して包帯巻く位しかしてあげれないけどね……」

と、野道が独りごちた。

「で、つばさちゃんはどうしてた?」

よくに応急処置をした野道が訊ねると、怪訝な表情で高津は言う。

「なんか、あれだな、違う意味で喰われそうだったな」
「なにそれえっち」

野道が言うと、静かに寝かされていた筈のよくがガバッと飛び起きて

「絶対許せない!」

と大声で言った。

「しーっ!」

野道が慌てて口を塞ぐ。

「お前は今チキンにされてる筈なんだから大人しくしてろ」
「いや、もう死んだ事にして逃がしちゃえば?」

高津が言った。

「よっくん、お前、痛くない?動ける?」
「痛いけど動けるよ」

よくはこたえた。
高津が三雪をつれて見送り、その間に野道はつばさの様子を見に行く。

「気をつけて行けよ」
 翼つばさをよろしく」

くれぐれも、と念をおして、よくは屋敷の外に出る。
と、見知った顔が丁度空から舞い降りた。

よく!大丈夫か?」
「うん、かなりやられたけど…」

イテテ、と言いながら呟く。と

「2人とも早く帰ろ!」

つばさが後から出てきて、鳥族2人は驚いた。

「意外と早く逃げれたね」
「まぁね、あの猫の人気分が悪くなったとか言ってどっか行ったからその隙に…逃げて来たの」

どこか呑気に話すつばさよくに、たすくが、話は帰ってからだ、と早口で呟いて、傷付いて飛べないよくを抱き上げた。

 翼つばさ、飛んでついて来れる?」
「……やってみます!」

バサッと大きな黒い羽根を、たすくは背中から出した。
それより幾分小さめの白い羽根を、 翼つばさは出す。

余り飛んだ事はないけど、きっと今なら飛べる気がする、と黒い羽根を追いかけて、羽ばたいた。

高級マンションのベランダに到着すると、淡い金色にウェーブがかかった髪を揺らしながら、心配そうな顔をしていた琳紗りんさの表情が少し和らいだ、かの様に見えたが、よくの傷を見て、急いで治療するからとベッドに促した。

美人なお姉さんだな、とつばさは思った。
この美人がきっと、たすく先輩が言ってた能力者なんだろう。

護ったり、癒したり出来るのね……。

世の中には自分の知らない世界があって、そこに確かにでも存在する事をつばさは嫌という程痛感した。

よくを心配しながら、部屋にあった食べかけのショートケーキをこの美人と食べていたのは、やっぱりたすく先輩なんだと溜息を吐いた。

こんな事考えてる場合じゃないのに、やっぱりイケメンには私みたいのじゃなくて琳紗りんささんみたいな美人なお姉さんなんだろうな、と思ったら、なんだか胸が傷んだ。

「さて、一体全体今日は何があったのか話して貰っても良いかしら?」

琳紗りんさが一頻り癒し終わり、疲労で寝ているちびっ子セコムに変わって、つばさに2人分の視線が注がれた。
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