96 / 423
連載
有力な情報だわね
しおりを挟む
「……とまあ、そういう話を冒険者ギルドの買い取りカウンターで聞いた、と食材の納品に訪れた者が与太話として話していたのです」
「え? その話は全部嘘なの?」
なんだ、臓物の処理については納得がいったし、身なりの良い謎の人物については、ちょっと怪しげな事件の匂いがする! とドキドキしたのに。
「ああ、いえ。臓物の処理に貧民街の者を使っていることは間違いありませんし、実際に貧民街の者はそれ以来、臓物処理の依頼を熱心に行うようになったそうです。ただ、謎の人物の正体は未だ誰も知らないそうで……実在するのかすら怪しいと」
「まあ、そうなの……」
とりあえず、臓物が食べられているという事実がある点については朗報だ。
謎の人物が正体不明っていうのは残念だけど……
「私も今までただの与太話と思っておりましたが、クリステア様から聞かれて思いだしたのです。こんなことならよく話を聞いておくべきでした……」
しょんぼりと凹んだ様子の料理長を見て慌ててフォローした。
「いいえ。料理長のお陰で有力な情報を得られたわ。もしまた何かわかったら教えてちょうだいね」
「はいっ! かしこまりました! 納品の担当者をとっ捕まえて吐かせます!」
料理長はワンッ! と、耳や尻尾がピーン! と立ってそうな勢いで復活した。
ちょ、待ってよ。業者さんをとっ捕まえてどうするつもりなの?
このままじゃ料理長が犯罪者になりかねないじゃないの!
「そんな無理はしなくていいから! 世間話でもした時に耳に入れば程度でいいから!」
「しかし、クリステア様のためなら……」
「いいから! ほら、根掘り葉掘り聞けば怪しまれて逆に何も聞けなくなるかもしれないじゃない? それに、臓物のこと以外でも、珍しい食材がないか探ってみてくれるとありがたいわ。何か新作のヒントになるかもしれないから」
「かしこまりました!」
「あくまで自然にね?」
「もちろんでございます!」
はあ……料理長ったら目的のためなら手段は問わない感じで恐ろしいわ。
有力な情報が手に入ったのは良かったけれど、料理長に何かを聞いたり頼んだりするのは慎重にしないといけないのかも。
「頼むわね。ねえシン、領地の冒険者ギルドでは臓物の処理はどうしていたの?」
すっかり空気と化していたシンに話題を向けると、まさかここで話が振られるとは思ってもみなかったようで、ビクッとされた。
「……冒険者が獲物を仕留めてその場で解体するなら、基本深く穴を掘って埋めるか、焼却処分かな。たくさん物が入るアイテムバッグ持ちは冒険者ギルドにそのまま持ち込んで解体に出してるはずだが、臓物の処理は街中だと匂いが出るから街のはずれに持って行っていたと思う。そういう仕事は下町の定職につけない奴らが小金稼ぎにやってたんじゃないかな」
なるほどね。貧民街はないものの、そういう仕事はあったわけか。
その人たちが貧民街の人たち同様に臓物を食べていたかはわからないけれど。
今度ギルドマスターのティリエさんに詳しく聞いてみたいな。
「そう、ありがとう。また何か聞きたいことがあったらよろしくね」
そう言って立ち去ろうとした私に、料理長がワクワクとした視線で質問した。
「あの、クリステア様は臓物で何かレシピをお考えで?」
う、期待たっぷりの視線が。
「いえ、あの、そう。臓物も食べる地域があると噂で聞いて興味が湧いただけなの。でも、内容が内容だから、内緒にしてもらえるかしら?」
「そうなのですか……もし、新作のアイデアが浮かびましたらご相談ください!」
「ありがとう。じゃあ、失礼するわね」
私は、これ以上根掘り葉掘り聞かれる前にと、そそくさと調理場を後にしたのだった。
---------------------------
お知らせ
レジーナブックス様より拙作「転生令嬢は庶民の味に飢えている」三巻が、7月下旬に発売します!
レジーナのサイトに刊行予定としてアップされております。書影掲載はしばしお待ちくださいませ( ´ ▽ ` )
http://www.regina-books.com/content/recentl
詳細な情報はまた解禁になりましたら都度近況ボード等でお知らせしますね。
もしかしたらアルファポリスまたはレジーナのメルマガに登録されると私より早く情報が入るかもしれません。
レジーナに登録していると、過去の発売時に発表した番外編のSSが読めます。
どれも主人公以外の視点で描く番外編です。
今回も番外編あります。誰視点かは公開されてからのお楽しみです。
単体でもお楽しみいただけると思いますが、三巻の後だとより楽しめるかと。
読者の皆様に色々と楽しんでいただけるといいな( ´ ▽ ` )
発売まであと少し。
何卒よろしくお願いいたします~!
「え? その話は全部嘘なの?」
なんだ、臓物の処理については納得がいったし、身なりの良い謎の人物については、ちょっと怪しげな事件の匂いがする! とドキドキしたのに。
「ああ、いえ。臓物の処理に貧民街の者を使っていることは間違いありませんし、実際に貧民街の者はそれ以来、臓物処理の依頼を熱心に行うようになったそうです。ただ、謎の人物の正体は未だ誰も知らないそうで……実在するのかすら怪しいと」
「まあ、そうなの……」
とりあえず、臓物が食べられているという事実がある点については朗報だ。
謎の人物が正体不明っていうのは残念だけど……
「私も今までただの与太話と思っておりましたが、クリステア様から聞かれて思いだしたのです。こんなことならよく話を聞いておくべきでした……」
しょんぼりと凹んだ様子の料理長を見て慌ててフォローした。
「いいえ。料理長のお陰で有力な情報を得られたわ。もしまた何かわかったら教えてちょうだいね」
「はいっ! かしこまりました! 納品の担当者をとっ捕まえて吐かせます!」
料理長はワンッ! と、耳や尻尾がピーン! と立ってそうな勢いで復活した。
ちょ、待ってよ。業者さんをとっ捕まえてどうするつもりなの?
このままじゃ料理長が犯罪者になりかねないじゃないの!
「そんな無理はしなくていいから! 世間話でもした時に耳に入れば程度でいいから!」
「しかし、クリステア様のためなら……」
「いいから! ほら、根掘り葉掘り聞けば怪しまれて逆に何も聞けなくなるかもしれないじゃない? それに、臓物のこと以外でも、珍しい食材がないか探ってみてくれるとありがたいわ。何か新作のヒントになるかもしれないから」
「かしこまりました!」
「あくまで自然にね?」
「もちろんでございます!」
はあ……料理長ったら目的のためなら手段は問わない感じで恐ろしいわ。
有力な情報が手に入ったのは良かったけれど、料理長に何かを聞いたり頼んだりするのは慎重にしないといけないのかも。
「頼むわね。ねえシン、領地の冒険者ギルドでは臓物の処理はどうしていたの?」
すっかり空気と化していたシンに話題を向けると、まさかここで話が振られるとは思ってもみなかったようで、ビクッとされた。
「……冒険者が獲物を仕留めてその場で解体するなら、基本深く穴を掘って埋めるか、焼却処分かな。たくさん物が入るアイテムバッグ持ちは冒険者ギルドにそのまま持ち込んで解体に出してるはずだが、臓物の処理は街中だと匂いが出るから街のはずれに持って行っていたと思う。そういう仕事は下町の定職につけない奴らが小金稼ぎにやってたんじゃないかな」
なるほどね。貧民街はないものの、そういう仕事はあったわけか。
その人たちが貧民街の人たち同様に臓物を食べていたかはわからないけれど。
今度ギルドマスターのティリエさんに詳しく聞いてみたいな。
「そう、ありがとう。また何か聞きたいことがあったらよろしくね」
そう言って立ち去ろうとした私に、料理長がワクワクとした視線で質問した。
「あの、クリステア様は臓物で何かレシピをお考えで?」
う、期待たっぷりの視線が。
「いえ、あの、そう。臓物も食べる地域があると噂で聞いて興味が湧いただけなの。でも、内容が内容だから、内緒にしてもらえるかしら?」
「そうなのですか……もし、新作のアイデアが浮かびましたらご相談ください!」
「ありがとう。じゃあ、失礼するわね」
私は、これ以上根掘り葉掘り聞かれる前にと、そそくさと調理場を後にしたのだった。
---------------------------
お知らせ
レジーナブックス様より拙作「転生令嬢は庶民の味に飢えている」三巻が、7月下旬に発売します!
レジーナのサイトに刊行予定としてアップされております。書影掲載はしばしお待ちくださいませ( ´ ▽ ` )
http://www.regina-books.com/content/recentl
詳細な情報はまた解禁になりましたら都度近況ボード等でお知らせしますね。
もしかしたらアルファポリスまたはレジーナのメルマガに登録されると私より早く情報が入るかもしれません。
レジーナに登録していると、過去の発売時に発表した番外編のSSが読めます。
どれも主人公以外の視点で描く番外編です。
今回も番外編あります。誰視点かは公開されてからのお楽しみです。
単体でもお楽しみいただけると思いますが、三巻の後だとより楽しめるかと。
読者の皆様に色々と楽しんでいただけるといいな( ´ ▽ ` )
発売まであと少し。
何卒よろしくお願いいたします~!
207
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
【完結・全3話】不細工だと捨てられましたが、貴方の代わりに呪いを受けていました。もう代わりは辞めます。呪いの処理はご自身で!
酒本 アズサ
恋愛
「お前のような不細工な婚約者がいるなんて恥ずかしいんだよ。今頃婚約破棄の書状がお前の家に届いているだろうさ」
年頃の男女が集められた王家主催のお茶会でそう言ったのは、幼い頃からの婚約者セザール様。
確かに私は見た目がよくない、血色は悪く、肌も髪もかさついている上、目も落ちくぼんでみっともない。
だけどこれはあの日呪われたセザール様を助けたい一心で、身代わりになる魔導具を使った結果なのに。
当時は私に申し訳なさそうにしながらも感謝していたのに、時と共に忘れてしまわれたのですね。
結局婚約破棄されてしまった私は、抱き続けていた恋心と共に身代わりの魔導具も捨てます。
当然呪いは本来の標的に向かいますからね?
日に日に本来の美しさを取り戻す私とは対照的に、セザール様は……。
恩を忘れた愚かな婚約者には同情しません!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。