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で……でかっ!
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大歓声に包まれた演習場は、想像以上の広さだった。
前世のほら、あれよ、ローマ帝国時代のコロッセウム。
あの円形闘技場の縮小版みたいな感じ。
その客席に全生徒と職員が集まったんじゃなかろうかと思うほどの人で埋め尽くされていた。
これ、午後の授業を中止して全生徒集めたんじゃないの……?
大歓声に思わず怯んだものの、学園長が中央に進んだので私とセイは並んでその後に続いた。
行きたくないけど、行かなきゃ終わらない。
面倒ごとはこれで終わりにしたいから頑張ってこの空気に耐えるしかない。
中央に進んでいるうちに、観客席の皆は聖獣の姿が見えないことに気づいたようで、歓声が徐々に小さくなった。
ざわめく空気の中、学園長が立ち止まり、私とセイは打ち合わせたとおり左右に分かれて並んだ。
扉を閉めてすぐに私たちの後を追いかけてきたニール先生が、手にしていたカード状の魔導具を口元に当てた。
あれは声を遠くまで届ける拡声の魔導具で、会場内に設置されているスピーカー的な魔導具に音声を転送するんですって。
「皆さん、静粛に! ただいまより、聖獣契約者二名と、契約している聖獣様をご紹介します! まず学園長からのお話をどうぞ!」
ニール先生はノリノリで学園長に拡声の魔導具を渡すと、そのままウキウキした足取りで私の隣に立った。
学園長は小さく咳払いをして拡声の魔導具を口元へ寄せた。
「……今回、急ぎ皆に集まってもらったのは、聖獣をぜひこの目で見たいと希望する生徒や教師が殺到したためだ。このまま放置すればいずれ聖獣契約者である新入生二名の負担となると我々は憂慮し、やむを得ず二人に依頼して場を設け、皆に披露することにした」
ニール先生のテンションとは裏腹に、学園長の静かな口調に場内は次第に静まりはじめた。
学園長は観客席をぐるりと見回してから続けた。
「新学期早々このような騒ぎになったことは遺憾に思う。今後は伝統あるアデリア学園に在籍する者として相応しい振る舞いを念頭に置き、新入生二人にこれ以上の負担を強いることがないように。これ以上我々の目に余る行動だと判断した場合、該当者は処分の対象となるので、そのことを努努忘れぬように」
おわぁ……学園長ったらしっかり釘を刺してくださったよ、ありがたい!
処分されると聞いて場内がざわめいた。
観客席を見ると明らかに顔色が変わった人や、特に変化なく聖獣の登場を今か今かと待ち構えている人とその様子はさまざまだ。
今の言い方だと聖獣のことだけに言及してないから、うっかり私たちに手を出そうもんなら処分されかねないもんね。
これで私たちに下手に手出しはできないと大半の貴族の子たちが理解しただろうし、何か利用できないかと目論む商人の子たちも同様だろう。
でもね学園長、まずはニール先生をどうにかしてほしいと思うのは私のわがままでしょうか……?
ニール先生ってば、私の横で「うんうん、その通り!」とか頷いてるんですけど?
ニール先生、自分は処分の対象にならないと思ってません⁉︎
目に余るようなら学園長に直談判しますからね⁉︎
思わずニール先生をジト目で睨みそうになるのをぐっと堪えて前を向いていると、学園長がニール先生に目配せして拡声の魔導具を渡した。
「学園長、ありがとうございました。それでは、いよいよ聖獣様のお披露目となります!新たな聖獣契約者として我学園に入学した新入生、クリステア・エリスフィード公爵令嬢、そして留学生のセイノゥシィン・シキシィマ君です!」
ニール先生が変わらぬテンションで宣言すると、場内からワアアーッ!と歓声があがった。私は冷静に、ゆっくりと淑女の礼をし、セイはドリスタン王国の礼、右手を胸においてスッと綺麗なお辞儀をした。
「さあ、二人とも。聖獣の皆様を呼んでくれたまえ!」
ニール先生の合図で、セイは「トラ、朱雀。疾く来よ」と呟いた。
私も「黒銀、真白」と呼んだ。
刹那、皆が聖獣の姿で現れた。
白虎様はいつもの子虎の姿ではなく、巨大で獰猛な虎の姿で、朱雀様は緋色の羽を広げ、大きな美しい鳥の姿で優雅に私たちの頭上を翔んでいた。
朱雀様の聖獣の姿は私も初めて見た……!
うわあ、すごく綺麗……!
そして、黒銀もいつもよりはるかに大きな姿で現れ、真白は……なんと、成獣の姿で現れた!
真白、こ、こんなに大きかったの⁉︎
前世のシロクマどころのサイズじゃないんだけど⁉︎
そういえば、初めて会った時、もっと大きくなれるよって言ってたっけ……まさか、ここまで大きくなれるだなんて思わなかった!
迫力がありすぎて、いつもの可愛い真白の姿が恋しいよ!
いきなり転移で現れた四体の聖獣に、場内は騒然となった。
悲鳴をあげたり、失神しかける女生徒がいるかと思えば、臨戦態勢に入ったり、目を輝かせて前のめりでこちらを見る男子たちもいたり。
うーわー……カオスな状態って、こういうのを言うのかも。
普段、小型の魔獣すら見たことない人がほとんどだろうから、そりゃこんなにいたら驚くよね。
怖いもの知らずな物見高い生徒は最前列まで駆け降りて障壁にへばりつくようにしてこちらを見ていた。
そんな中を教師や一部の上級生が落ち着くようにと大声で注意して回っていた。
黒銀と真白は大きな姿のまま私にピタリと寄り添い、護るように周囲を見回していた。
私はモフモフに挟まれ、普段なら抱きついてモフり倒すのにそれができないから内心ソワソワするのを抑えるのが大変だった。
後で……後で絶対モフり倒してやるんだからね!
セイにも白虎様がピタリと隣につき、朱雀様は白虎様の背中に降りたった。
「静粛に! 聖獣の皆様は契約者の二人を護る時以外は温厚だ。襲われたりしないので安心しなさい!」
ニール先生から魔導具を受け取った学園長の言葉で、ようやく場内は落ち着きを取り戻しはじめた。
「その通りだ! 契約した聖獣は契約者を害さない限り我々に対して寛容だ。私の言葉を信じて落ち着いてくれ」
学園長の言葉に続いて、レイモンド王太子殿下の声が場内に響き渡った。
皆の視線が一斉に向かう先を見ると、拡声の魔導具を持つレイモンド王太子殿下、その隣にお兄様がいた。
皆が顔を見合わせそろそろと席に戻り、落ち着きを取り戻したところで、レイモンド王太子殿下がこくりと頷いてお兄様と一緒に席に座った。
「聖獣の皆様は見てわかるように契約者を護るために動くことはあっても無闇に君たちを襲うことはない。それはレイモンド王太子殿下のおっしゃった通りだ。そして、ずっとこの姿でいらっしゃるわけではない」
学園長がそう言うや否や、黒銀や真白、白虎様はいつもの姿に、朱雀様ももっと小さくなってふわりとセイの肩にとまった。
その途端、またもや歓声が上がった。
中には「きゃーっ! 可愛い!」とか「うおおおかっけー!」とか興奮した様子の声もあった。
「可愛い!」は真白に対する感想だろうな。うんうん、うちの子可愛いからね!(主人ばか)
真白も満更ではないのか、私の前に仁王立ちになってドヤ顔している。
黒銀は私の隣に座り、尻尾を私の足に巻きつけた。
背後からの攻撃も弾いてやると言わんばかりだ。
「皆わかったと思うが、彼らはそれぞれ複数の聖獣様と契約をしている稀な例だ。複数の聖獣と契約することで得る圧倒的な力はどれほどのものか計り知れぬ。それゆえに国王陛下や聖獣レオン様からも彼らには手出し無用と直々のお言葉をいただいている」
学園長の言葉に場内がどよめいた。
陛下のみならず聖獣レオン様からも容認されているとお墨付きがあったのだから、確かに驚くよね。
これでますます私たちに手を出すのはヤバいと周知されたことだろう。
そこまで聞いてヤバいとわかってても私たちに手を出しちゃうような人間は、手段も問わない本当にヤバい輩だろうから、その場合は聖獣の皆が私たちを護るための行動をとってもお咎めなしと、学園長室で打ち合わせ中に確約を得たばかりだったりする。
「ここにいる皆が賢い選択をするだろうと私は信じている。私からは以上だ」
学園長はそこで言葉を切ると、セイの方、正しくは白虎様の方を向いた。
セイの隣にちょこんと座っていた白虎様はグルル……と唸り声を上げてから立ち上がり、パッと人型の姿をとった。
それを合図に朱雀様はセイの肩から降り立ち、いつものナイスバディな人型に、黒銀や真白もいつもの姿に変化した。
え? え? と何が起こったのかわからず戸惑う観客席をよそに、白虎様は学園長から魔導具を受け取るといつもの調子で発言した。
「ま、そんなわけで俺たちは主人に手を出さなきゃ何もしねぇから安心してくれや。普段はさっきの姿かこの姿でいるからよろしくな!」
か……軽い! もう少し聖獣の威厳ってやつを出そうよ⁉︎
白虎様は満足そうに学園長に魔導具を返すとセイの隣に立ち、セイの肩に手を回した。
セイは一瞬ピクリと眉を顰めたようだけれど黙って前を向いていた。
それを見ていた場内は一瞬静まり返った後、またもや大歓声に湧いた。
「えっ……うそ、なにあれ⁉︎ 聖獣様が人の姿に⁉︎ どういうことなの⁉︎」
「やだ……っ! かっこいい!」
「いやーん、どっちの姿も可愛い!」
「おおおおお! 素敵だー!」
「はあああん、お姉様と呼ばせてくださーい!」
「俺のこと踏んでくださいー!」
口々に叫ぶ声が聞こえてきたけど……一部ヤバいのなかった?
……聞かなかったことにしていいかな?
「……ゴホン、皆静粛に! これにて披露目を終了する。先ほどの注意をよく胸に刻み、行動するように!」
学園長はそう言って魔導具をニール先生に渡すと、私たちに目配せしてから入場した扉に向かって歩き出したので、私たちも軽く一礼してからそれに続いた。
「はい、皆静かにー! まだ席を立たないように! 退場は生徒会の指示に従って順に出るようにね! じゃあ生徒会の皆、後をよろしく!」
ニール先生はそう言って駆け足で私たちの方に向かって走ってきた。
いや、ニール先生はこの場の監督をした方がいいんじゃないかな⁉︎
少し間をおいて背後からお兄様が退場についてアナウンスしているのが聞こえた。
そういえばお兄様は生徒会に在籍しているんだったわ。
レイモンド王太子殿下が生徒会長なのよね。
この後、この騒ぎを抑えて退場させるのか……た、大変そう。
今度お兄様たちにご迷惑をかけたことをお詫びしなくっちゃ。
でもとりあえず私たちがここを早く立ち去るのが先決よね。
私はいつもより足早に、でもできるだけ優雅に見えるように気をつけつつ出口へ急いだのだった。
前世のほら、あれよ、ローマ帝国時代のコロッセウム。
あの円形闘技場の縮小版みたいな感じ。
その客席に全生徒と職員が集まったんじゃなかろうかと思うほどの人で埋め尽くされていた。
これ、午後の授業を中止して全生徒集めたんじゃないの……?
大歓声に思わず怯んだものの、学園長が中央に進んだので私とセイは並んでその後に続いた。
行きたくないけど、行かなきゃ終わらない。
面倒ごとはこれで終わりにしたいから頑張ってこの空気に耐えるしかない。
中央に進んでいるうちに、観客席の皆は聖獣の姿が見えないことに気づいたようで、歓声が徐々に小さくなった。
ざわめく空気の中、学園長が立ち止まり、私とセイは打ち合わせたとおり左右に分かれて並んだ。
扉を閉めてすぐに私たちの後を追いかけてきたニール先生が、手にしていたカード状の魔導具を口元に当てた。
あれは声を遠くまで届ける拡声の魔導具で、会場内に設置されているスピーカー的な魔導具に音声を転送するんですって。
「皆さん、静粛に! ただいまより、聖獣契約者二名と、契約している聖獣様をご紹介します! まず学園長からのお話をどうぞ!」
ニール先生はノリノリで学園長に拡声の魔導具を渡すと、そのままウキウキした足取りで私の隣に立った。
学園長は小さく咳払いをして拡声の魔導具を口元へ寄せた。
「……今回、急ぎ皆に集まってもらったのは、聖獣をぜひこの目で見たいと希望する生徒や教師が殺到したためだ。このまま放置すればいずれ聖獣契約者である新入生二名の負担となると我々は憂慮し、やむを得ず二人に依頼して場を設け、皆に披露することにした」
ニール先生のテンションとは裏腹に、学園長の静かな口調に場内は次第に静まりはじめた。
学園長は観客席をぐるりと見回してから続けた。
「新学期早々このような騒ぎになったことは遺憾に思う。今後は伝統あるアデリア学園に在籍する者として相応しい振る舞いを念頭に置き、新入生二人にこれ以上の負担を強いることがないように。これ以上我々の目に余る行動だと判断した場合、該当者は処分の対象となるので、そのことを努努忘れぬように」
おわぁ……学園長ったらしっかり釘を刺してくださったよ、ありがたい!
処分されると聞いて場内がざわめいた。
観客席を見ると明らかに顔色が変わった人や、特に変化なく聖獣の登場を今か今かと待ち構えている人とその様子はさまざまだ。
今の言い方だと聖獣のことだけに言及してないから、うっかり私たちに手を出そうもんなら処分されかねないもんね。
これで私たちに下手に手出しはできないと大半の貴族の子たちが理解しただろうし、何か利用できないかと目論む商人の子たちも同様だろう。
でもね学園長、まずはニール先生をどうにかしてほしいと思うのは私のわがままでしょうか……?
ニール先生ってば、私の横で「うんうん、その通り!」とか頷いてるんですけど?
ニール先生、自分は処分の対象にならないと思ってません⁉︎
目に余るようなら学園長に直談判しますからね⁉︎
思わずニール先生をジト目で睨みそうになるのをぐっと堪えて前を向いていると、学園長がニール先生に目配せして拡声の魔導具を渡した。
「学園長、ありがとうございました。それでは、いよいよ聖獣様のお披露目となります!新たな聖獣契約者として我学園に入学した新入生、クリステア・エリスフィード公爵令嬢、そして留学生のセイノゥシィン・シキシィマ君です!」
ニール先生が変わらぬテンションで宣言すると、場内からワアアーッ!と歓声があがった。私は冷静に、ゆっくりと淑女の礼をし、セイはドリスタン王国の礼、右手を胸においてスッと綺麗なお辞儀をした。
「さあ、二人とも。聖獣の皆様を呼んでくれたまえ!」
ニール先生の合図で、セイは「トラ、朱雀。疾く来よ」と呟いた。
私も「黒銀、真白」と呼んだ。
刹那、皆が聖獣の姿で現れた。
白虎様はいつもの子虎の姿ではなく、巨大で獰猛な虎の姿で、朱雀様は緋色の羽を広げ、大きな美しい鳥の姿で優雅に私たちの頭上を翔んでいた。
朱雀様の聖獣の姿は私も初めて見た……!
うわあ、すごく綺麗……!
そして、黒銀もいつもよりはるかに大きな姿で現れ、真白は……なんと、成獣の姿で現れた!
真白、こ、こんなに大きかったの⁉︎
前世のシロクマどころのサイズじゃないんだけど⁉︎
そういえば、初めて会った時、もっと大きくなれるよって言ってたっけ……まさか、ここまで大きくなれるだなんて思わなかった!
迫力がありすぎて、いつもの可愛い真白の姿が恋しいよ!
いきなり転移で現れた四体の聖獣に、場内は騒然となった。
悲鳴をあげたり、失神しかける女生徒がいるかと思えば、臨戦態勢に入ったり、目を輝かせて前のめりでこちらを見る男子たちもいたり。
うーわー……カオスな状態って、こういうのを言うのかも。
普段、小型の魔獣すら見たことない人がほとんどだろうから、そりゃこんなにいたら驚くよね。
怖いもの知らずな物見高い生徒は最前列まで駆け降りて障壁にへばりつくようにしてこちらを見ていた。
そんな中を教師や一部の上級生が落ち着くようにと大声で注意して回っていた。
黒銀と真白は大きな姿のまま私にピタリと寄り添い、護るように周囲を見回していた。
私はモフモフに挟まれ、普段なら抱きついてモフり倒すのにそれができないから内心ソワソワするのを抑えるのが大変だった。
後で……後で絶対モフり倒してやるんだからね!
セイにも白虎様がピタリと隣につき、朱雀様は白虎様の背中に降りたった。
「静粛に! 聖獣の皆様は契約者の二人を護る時以外は温厚だ。襲われたりしないので安心しなさい!」
ニール先生から魔導具を受け取った学園長の言葉で、ようやく場内は落ち着きを取り戻しはじめた。
「その通りだ! 契約した聖獣は契約者を害さない限り我々に対して寛容だ。私の言葉を信じて落ち着いてくれ」
学園長の言葉に続いて、レイモンド王太子殿下の声が場内に響き渡った。
皆の視線が一斉に向かう先を見ると、拡声の魔導具を持つレイモンド王太子殿下、その隣にお兄様がいた。
皆が顔を見合わせそろそろと席に戻り、落ち着きを取り戻したところで、レイモンド王太子殿下がこくりと頷いてお兄様と一緒に席に座った。
「聖獣の皆様は見てわかるように契約者を護るために動くことはあっても無闇に君たちを襲うことはない。それはレイモンド王太子殿下のおっしゃった通りだ。そして、ずっとこの姿でいらっしゃるわけではない」
学園長がそう言うや否や、黒銀や真白、白虎様はいつもの姿に、朱雀様ももっと小さくなってふわりとセイの肩にとまった。
その途端、またもや歓声が上がった。
中には「きゃーっ! 可愛い!」とか「うおおおかっけー!」とか興奮した様子の声もあった。
「可愛い!」は真白に対する感想だろうな。うんうん、うちの子可愛いからね!(主人ばか)
真白も満更ではないのか、私の前に仁王立ちになってドヤ顔している。
黒銀は私の隣に座り、尻尾を私の足に巻きつけた。
背後からの攻撃も弾いてやると言わんばかりだ。
「皆わかったと思うが、彼らはそれぞれ複数の聖獣様と契約をしている稀な例だ。複数の聖獣と契約することで得る圧倒的な力はどれほどのものか計り知れぬ。それゆえに国王陛下や聖獣レオン様からも彼らには手出し無用と直々のお言葉をいただいている」
学園長の言葉に場内がどよめいた。
陛下のみならず聖獣レオン様からも容認されているとお墨付きがあったのだから、確かに驚くよね。
これでますます私たちに手を出すのはヤバいと周知されたことだろう。
そこまで聞いてヤバいとわかってても私たちに手を出しちゃうような人間は、手段も問わない本当にヤバい輩だろうから、その場合は聖獣の皆が私たちを護るための行動をとってもお咎めなしと、学園長室で打ち合わせ中に確約を得たばかりだったりする。
「ここにいる皆が賢い選択をするだろうと私は信じている。私からは以上だ」
学園長はそこで言葉を切ると、セイの方、正しくは白虎様の方を向いた。
セイの隣にちょこんと座っていた白虎様はグルル……と唸り声を上げてから立ち上がり、パッと人型の姿をとった。
それを合図に朱雀様はセイの肩から降り立ち、いつものナイスバディな人型に、黒銀や真白もいつもの姿に変化した。
え? え? と何が起こったのかわからず戸惑う観客席をよそに、白虎様は学園長から魔導具を受け取るといつもの調子で発言した。
「ま、そんなわけで俺たちは主人に手を出さなきゃ何もしねぇから安心してくれや。普段はさっきの姿かこの姿でいるからよろしくな!」
か……軽い! もう少し聖獣の威厳ってやつを出そうよ⁉︎
白虎様は満足そうに学園長に魔導具を返すとセイの隣に立ち、セイの肩に手を回した。
セイは一瞬ピクリと眉を顰めたようだけれど黙って前を向いていた。
それを見ていた場内は一瞬静まり返った後、またもや大歓声に湧いた。
「えっ……うそ、なにあれ⁉︎ 聖獣様が人の姿に⁉︎ どういうことなの⁉︎」
「やだ……っ! かっこいい!」
「いやーん、どっちの姿も可愛い!」
「おおおおお! 素敵だー!」
「はあああん、お姉様と呼ばせてくださーい!」
「俺のこと踏んでくださいー!」
口々に叫ぶ声が聞こえてきたけど……一部ヤバいのなかった?
……聞かなかったことにしていいかな?
「……ゴホン、皆静粛に! これにて披露目を終了する。先ほどの注意をよく胸に刻み、行動するように!」
学園長はそう言って魔導具をニール先生に渡すと、私たちに目配せしてから入場した扉に向かって歩き出したので、私たちも軽く一礼してからそれに続いた。
「はい、皆静かにー! まだ席を立たないように! 退場は生徒会の指示に従って順に出るようにね! じゃあ生徒会の皆、後をよろしく!」
ニール先生はそう言って駆け足で私たちの方に向かって走ってきた。
いや、ニール先生はこの場の監督をした方がいいんじゃないかな⁉︎
少し間をおいて背後からお兄様が退場についてアナウンスしているのが聞こえた。
そういえばお兄様は生徒会に在籍しているんだったわ。
レイモンド王太子殿下が生徒会長なのよね。
この後、この騒ぎを抑えて退場させるのか……た、大変そう。
今度お兄様たちにご迷惑をかけたことをお詫びしなくっちゃ。
でもとりあえず私たちがここを早く立ち去るのが先決よね。
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