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不審な行動 その1

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「ねえシン。ちょっとよいかしら?」
「どうしたんですか?ミリア。お嬢様なら少し前にどこかへ行きましたよ?行き違いのようですね。」
珍しく調理場にやってきたミリアの目的であろうクリステアが不在であることを告げる。
「ああ、やっぱりこちらに来ていたのね…。まったく、クリステア様ったら、今はマナー学の時間だというのに…。」
あとでお小言だわ、とつぶやくミリアを見て先ほど周りをうろちょろしていた時に仕込み中だからと放置せずに首根っこ捕まえてミリアに引き渡しておけば良かった…と申し訳ない気持ちになった。
「それは申し訳ない…。もし後で見かけたら捕まえておきますよ。」
「あら…いいえ。シンは悪くないもの。むしろクリステア様がお仕事の邪魔をしたんじゃないかしら、ごめんなさいね。」
もはやクリステアについては手を焼いている同志として通じ合うものがある2人は互いを労った。2人とも内心ではクリステアには後できつーく説教だな、と思いつつ。クリステアの自業自得である。
「ああ、ええと…クリステア様の居場所もだけど、実はシンに聞きたいことがあって。」
「…?何でしょう。」
ためらいつつ、シンに問いかけるミリアに先を促す。
「あの…ここのところ毎日、クリステア様が完全に行方不明になるの。そしてふらりと戻ってきたかと思えば、変な匂いをさせているのよ…。」
その時の匂いを思い出したのか、顔をしかめるミリア。
「変な匂い…ねぇ。俺のところに来る時は、特に気になりませんけど…。」
先ほど調理場をうろついていた時もそんな匂いなどさせていなかった。異臭など漂わせていればすぐにわかるし、そんな状態であればすぐさま調理場から追い出している。
そういえばいつも何かとあれ作れ、これ作れとうるさいのに、最近は周りをうろちょろするだけで、いつの間にかいなくなっているような気がする…あやしい。実にあやしい。
「そう…ですか。クリステア様ったらまた何かしでかしてるんじゃないかと心配で…。」
ミリアもシンと同じようなことを考えていたようだ。手がかりがつかめずしょんぼりとするミリアを励まし、見送った。

「まったく…あのお嬢様はまたなんかやらかそうとしてるな?」
はー…と、ため息をつきながら仕事に戻ろうとするシン。

「…あれ?スープストックに使おうと思ってた野菜クズがない…うっかり捨てちまったかな?」
この前もやらかしたみたいだし、最近うっかりが多いな、と首を傾げながらも次の仕事にとりかかるのであった。

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「…ふう。今日のところはこれでいいか。」
ひと仕事終えたと言わんばかりにつぶやくクリステア。
「…うん、もうじき本番に取りかかれそうね。」
にんまりと笑いながら、ふんふふーん♪と鼻歌混じりの軽い足取りで、その場を後にするのであった。

後でマナー学の授業をサボったことについて、ミリアとシンに説教されることも知らずに…。重ねて言うが、自業自得である。
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