転生令嬢は庶民の味に飢えている

柚木原みやこ(みやこ)

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説得再び

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「まったく其方は…公爵令嬢としての自覚が足りぬ。授業はサボり、逃走手段として秘匿すべき隠し通路まで暴くとは…。」
はあ…とため息をつきながら説教するお父様。もちろん隣にはお母様が控えている。なんだかもう見慣れた光景のような気がするよ…。(白目)

だがしかし。今回バレたのは隠し通路を使ってサボっていた件についてのみ。
例のぬか漬けのツボについてはまだバレていないようでホッとした。お父様やお母様はあそこへ行くことはないだろう。
今回はおとなしく怒られて、後日念のため回収しておかねば…。

「クリステア。隠し通路で何をしていたのです?」
ギクッ!お母様ったらなんでこうも勘が良いんですかねぇ?!
「何を…とは?」
こてん、と首を傾げてとぼけてみる。
「ただ移動するには時間がかかりすぎなのではなくて?暗闇の中でぼんやり過ごすなどと、無駄な時間を嫌う貴女にしては珍しいこと。」
おおお…お母様鋭すぎです。
「それに、何です?その匂い。何とも形容しがたい匂いをさせて…。」
ん?さっきからずっと眉根を寄せて、機嫌が悪そうだと思ったら、匂い…?
あっぬか漬けの匂いか!
えっ?匂うの?やっぱ軽くクリアかけたくらいじゃ消えないのかな…?
すんすんと手の匂いを嗅いでいるとお母様がじっとその様子を伺っている。
ハッ!しまった…誘導か!
「クリステア、何を隠しているのかおっしゃい。」
決して目は笑っていない笑顔のお母様。ひいぃ!こわい!
うっうっ、これはもう隠しきれない…というか隠しててもいいことない展開じゃないか…。

「これを…作っていたのですわ。」
諦めてインベントリからぬか漬けを取り出す。
「空間収納…!マーレン師から報告を受けていたが…。」
「あなた、そんなこと今はどうでも良いわ。クリステア、この異臭を放つものは一体何?!」
ハンカチで鼻や口元を隠しながら言うお母様。特殊技能ともいえるインベントリをどうでもいいって…。まあそれほど異臭の元が気になるんですね。慣れたら気にならないけど嗅ぎ慣れないとまあそうなるよね。
「こちらは、ぬか漬けといいまして、ぬかを使って作る保存食ですわ。」
「ぬか?あのぬかがこんなに臭いなんて…腐っているのではなくて!?」
ツルツル美肌をもたらしてくれるあのぬかが、異臭を放つことに衝撃を隠せないお母様。そうでしょう、そうでしょう。でも美味しくて身体にいいんだよ。そこでハッと気がついた。
「いいえ。腐っているのではありません。これは美味しさと美容の元に変化したのですわ。」
発酵とか乳酸が…とか言ってもわからんだろうしなぁ…。やはりお母様には美容ネタで攻略するしかない。
「美容!?」
ほら、食いついた。
「ええ、お母様…ちょっとよろしくて?」

お父様を遠ざけ、小声でお母様と話し始める。
「お母様…最近お顔が少々むくみ気味ではございません?」
「えっ!?」
ギクリと両手で顔を覆うお母様。
「尾籠な話で申し訳ありませんが…お通じの調子がよろしくないのでは?」
「うっ!!」
ギクギクッとするお母様。図星か。

「おい、其方等2人で何をヒソヒソと…」
「「あなた(お父様)は黙っててくださいませ!!」」
「はいぃ!」
ひとり除け者が寂しかったのかもしれないけれど、今はお母様の攻略が先です!
お父様は後でおにぎりとぬか漬け食べさせたらいいんですから!おとなしく待っててください!!

「ねえお母様、あのぬか漬けで身体の中からきれいになりませんこと…?」
「身体の中から…?」
「ええ。」

結果だけ言うと、ぬか漬けも導入決定です。やったね!
ごはんのお供ができました!

余談だけど、この後サボりの罰として書き取りその他、無茶苦茶やらされた。うっうっ。
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