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お疲れ様です。

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食堂で皆とお弁当を食べていると、ニール先生が疲れた様子で食堂に入ってきた。
「あ~、外出から戻ってきたら寮監に報告するようにね……と言っても僕も今戻ってきたばかりなんだけどね……」
先生がよろよろとテーブルに近づいてきたので、インベントリから先生の分のお弁当を出すと、ミリアが手早くお茶を煎れてお弁当の横に置いた。
「うわ~、ありがとう。昨日も今日もろくに食べてなかったから嬉しいよ~」
「え、どうしてですか?」
そんなに大量お茶会の招待状が届いたのだろうか。だとしたら、大変だったんだろうな。
「いや~……秘密にしとくのも何だから言っちゃうけど。魔獣を連れてきて特別寮に編入させろとか言う生徒が何人かいてね……その対応に追われてたんだよ」
「えぇ……?」
正攻法おちゃかいがダメなら絡め手でってこと⁉︎
それにしたって、昨日の今日でいきなり魔獣を連れてくるって対応早すぎない⁉︎
「どうやら君たちのことが知られた時点で、冒険者ギルドに小さな魔獣の生け捕りの依頼が複数あったみたいでね。まったく、自分で契約テイムしたわけでもない、世話の仕方もわからないような魔獣を連れてきてどうするのって話なんだけどねぇ」
ニール先生は、はあぁ……と盛大にため息を吐いた。
「自分で餌の確保をはじめとした世話を全てできるのかと問えば、自分で世話はしたくないだの、専用の世話係を雇えだの…… ペットの持ち込みは禁止だから、自宅に連れ帰るか、僕の研究室のある棟で預かるから世話しに通いなさいと言えば、もういらないと言って魔獣を置いて行くしで……さっきまで学園長たちと生徒の処分について話し合いしたり、置き去りにされた魔獣の世話をしたりしてたんだ」
ニール先生、この二日間は大変だったのね。
「連れてきた生徒は話を聞くより先に入寮希望届を書かせておいたから、置き去りにした生徒はわかってるんだ。それを元に該当生徒の処分、そして学園から保護者に厳重注意することになったよ。それから、全員貴族だったから、陛下に事の経緯とどの家の者かリストにして渡すことになった」
うんうん、そのくらいしなきゃまた同じことをする生徒が後を絶たないでしょうからね。
「先生、その魔獣はどうなるのですか?」
セイは怒りをにじませた声で質問する。
確かに、どうなるのかしら。
「いらない」って置いていったんだから引き取りになんてこないだろうし……
「うーん、このまま世話しようにも前からいた子も含めると僕の手に余るんだよね。引き取り手を探そうにも、素材としての引き取り希望しか今のところいなくてね。冒険者に元の場所に戻してくれ、なんて依頼をしても受けちゃくれないからねぇ。そのまま素材になるだけだろうし」
素材……生け捕りで連れてこられて、生きたままならいらないけど、素材としてなら引き取るよって? そんなのひどい……
「置き去りにされた子たちは、どれも魔獣といってもさほど強い個体じゃないし、ペットにしようと思えば調教次第で飼えなくもないんだよね。中には毛皮の質がいいから、王都では素材として人気があるのもいたよ」
うーむ、このままじゃ良い結果にならない気がする。
「欲しい生徒に譲渡してもいいけど、その生徒が素材として売りに出さないとは限らないし……できれば、元の森に戻したいんだけどね。あ、この魚、もしかしてシャーケン⁉︎」
ニール先生が食べたおにぎりの具はシャーケンのほぐし身だ。よくわかったね⁉︎
「美味しいなぁ。あれ? この肉……これ、コ、コカトリス⁇」
あ、コカトリスの唐揚げをお弁当用に少し残しておいてもらったのよね。冷めても美味しくなるように味付けしてるから、お弁当にもぴったりなのよ。
……じゃなくて。このままだと素材にされちゃうよ!
「あの、私たちで世話するわけには……?」
「それは無理じゃないかな?」
「だめに決まっておろう」
「くりすてあ、うわきしちゃ、だめ!」
ニール先生の返事に被せるように黒銀くろがね真白ましろの待ったがかかった。
いや真白ましろ、浮気って……
「ほらね。契約者に対する独占欲は聖獣様も魔獣も変わらないよ。それに弱い個体だからね、聖獣様達の気配にあてられて、大変なことになっちゃうよ」
そういえば、輝夜かぐやも白虎様たちのこと、ひどく恐れてるものね。
「でも、私だけなら……」
「いやいや、絶対ついてくるに決まってるし。たとえついてこなくても、気配が残ってるからそれだけで怯えると思うよ? うちの子たちもそうだからね。今少しずつ慣らしてるところだけど、大変だよ?」
……そういえば私、黒銀くろがね真白ましろにマーキングされてるんだっけ……
「捕獲された場所はわかってんのか?」
お弁当を食べ終わった白虎様がお茶をすすりつつ聞いてきた。
おとなしいと思ったら、黙々と食べてたのか。
「ええと……冒険者ギルドに照会すれば大体の捕獲場所はわかるかと思いますが」
「それなら俺が戻してやってもいいけど」
「え⁉︎ 本当ですか!」
「俺は転移魔法が使えるから、大体のところなら連れていけるぜ。ただ、俺がそいつらをつかんだら気絶しちまうだろうから、そのまま転移先に放置できないのが難点だな」
「あっ……そうですね。気絶したままだと他の魔物の餌になるか、場合によってはつかまれた時点で恐怖のあまりショック死してしまうかもしれないので、やめたほうが……」
「だよなあ」
却下! それ絶対あかんやつ!
私は断固反対しますからね!
「個体によっては私に考えがございますけれど……」
これまたお弁当を完食してお茶をすすっている朱雀様が発言した。
「お考えとは……?」
朱雀様は湯呑みを置くと、胸元に落ちた髪を後ろに払った。
「ええ。私たちで使役するのです」
「えっ?」
朱雀様が使役テイム
「個体によって相性もありますが……私たちの配下として使役して野に放ち、彼らの縄張りの偵察役とするのです。そこで何か異変が有れば私たちに伝わるし、それ以外の時は今まで通りなので私たちの世話は必要ありません」
「お、それいいな」
白虎様はナイスアイデアとばかりに頷いた。
「そ、そんな方法が……」
ニール先生はポケットからメモを取り出してガリガリと書き込み始めた。先生ェ……
結局、他にいい方法が思いつかなかったので、数日様子を見てから実行することになったのだった。
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