264 / 423
連載
ご機嫌とり
しおりを挟む
「さて、今日の晩ご飯は例のアレを使ってみますか」
いつもの割烹着を身にまとい、三角巾をキュッと締めてから食糧庫に向かい、必要な食材をピックアップする。
「ええと、じゃがいもと玉ねぎと、にんにく……」
黒銀が抱えたカゴにドサドサとそれらを放り込んでいく。
そのまま冷蔵室に移動しバターを取り出す。
「さてと。まずはじゃがいもを水から茹でてくれる? 皮はむかなくていいわ」
「りょうかい」
真白がじゃがいもをさっと洗って、皮付きのまま鍋に入れてから水を注いで魔導コンロに置いて着火する。
はじめは中火で、お湯が沸きはじめたら弱火でじっくりと。
沸騰したらさらに弱火にして茹で、串を刺して中まで火が通っていたら鍋から取り出して粗熱をとる。
「真白、魔法でじゃがいもを冷ましてくれるかしら?」
「まかせて」
氷魔法と風魔法を組み合わせてじゃがいもを冷ましてもらっている間に、インベントリからベーコンを取り出して2~3センチ幅に切り玉ねぎは縦に薄切りに。
「くりすてあ、これでいいかな?」
「ありがとう。ここに置いてくれる?」
じゃがいもは皮付きのまま1センチ幅の輪切りにしてっと。
それから、ニンニクは潰して荒みじんにしてからフライパンに油と一緒に入れて弱火で温める。
香りが立ったらベーコンと玉ねぎを中火で炒め合わせ、塩で味を調える。
玉ねぎに色がつきはじめたらじゃがいもを投入。
ベーコンがカリッとしてないのが好みならベーコンは後入れでもいいけど、私はカリッと派なので先入れにしている。
ベーコンから出た油をじゃがいもにからめるようにしてからバターを投入。これはコクを出したいから入れるので、少しでもいい。
あとは……
「これを入れて仕上げよ!」
瓶に入った黄金の粉……そう、シンが送ってくれたカレー粉だ。
香りがとんでしまわないよう、最後にこれを振り入れてから全体の味を調えて完せ……ああそうだ、採取の時にイタリアンパセリに似たハーブを見つけたのでこれを刻んでパラパラと散らばせて……と。
「カレー風味のジャーマンポテトの完成!」
ご飯やお味噌汁などは白虎様や朱雀様がミリアと一緒に作っておいてくれたので、あとはルビィも食べられるようにマリエルちゃんとセイがサラダを作ってくれたのでそれらを配膳台に並べ、各々が好きなように取ってもらういつものビュッフェスタイルだ。
「それでは皆さん、いただきましょう」
帰りが遅いニール先生の分は取り分けてあるので、余っている分は皆が争うようにおかわりするのであっという間になくなってしまう。
皆すごい食欲だなぁ……
たくさん作り過ぎたかなと思っても毎回ペロリと完食されるので嬉しい反面、もし私がステータスを確認できたのなら、称号に「給食のおばちゃん」とかついているんじゃないかと心配になってしまうのだった。
「くりふてははん、おいひいれふ!」
マリエルちゃんは久々のカレー風味に箸が止まらない様子。
口いっぱいに頬張って喋るのはお行儀が悪いわよ?
「刺激的な味だから、ワタシはたくさんはいらないけど……マリエルが喜ぶだけあって美味しいわぁ。サラダの合間に食べるくらいがちょうどいいわね」
ルビィは食べられないかと思いきや、これで体調を崩すことはないみたい。
そもそもカレーのスパイスはこの世界じゃ薬扱いのものがほとんどだものね。
「うめぇ! こりゃコメにも合うな! おっと、もう無くなっちまった、おかわり……」
「ちょっと待て白虎の。お前はもうすでにおかわりしたであろう。我が先だ」
「おれも!」
おかわりに立つ白虎様に続いて黒銀と真白が我先にと配膳台に急いだ。
「あ、わ、私も!」
マリエルちゃん……食いしん坊な聖獣様たちに張り合わなくていいのよ?
……っていうか、初めに山盛りにしてなかった……? もう食べたの?
「……俺も」
セイは黙々と食べていたけれど、スッと立ち上がるときれいに食べ終わった皿を手にスタスタと速足で向かったのがおかしかった。
カレー風味はこの世界でも大人気みたいね。
月に一回くらいなら、特別寮でカレーを作るのもいいかも。
実家の商会で売りに出せないかとカレー粉の材料を聞いて愕然としたマリエルちゃんに月イチでカレーの日を設けるのはどうだろうと持ちかけたら「学園の食事でそんな高級料理を……⁉︎ いやでも本来は庶民の味なはず……いやでもここでは高級素材……あああああでも食べたい……でも贅沢品……!」と苦悩していた。
とりあえずしばらくはカレー風味のスープとか、炒め物とか、少しのカレー粉で対応できるメニューにしましょうということで折り合いがついたのだった。
部屋に戻り、お風呂上がりに黒銀と真白、それから輝夜にブラッシングをした。
私がちゃんと構ってあげないから浮気がどうとか言われちゃうのよね。
しっかり丁寧にブラッシングして、そんな疑惑は払拭しないと!
「お痒いところはございませんか~?」
『うむ……問題ない。あ、そこはもっと強めにブラシをかけてくれ』
「はいはい」
『くりすてあー、つぎはおれ! くりすてあごのみのもふもふにして?』
「わ……わかったわ」
うぐぅ、真白め、私の膝に上半身を預けてきゅるんと上目遣いとか、あざとすぎるでしょうが!
こいつめ、こいつめぇ!
この後めちゃくちゃブラッシングした。
二人ともツヤッツヤのモッフモフになった。
私も二人も満足、満足。
それから、専用のカゴの中で丸くなって寝ていた輝夜を抱き上げ膝の上にのせてブラッシングを始める。
「いつも朱雀様のお相手ご苦労様」
ミリアの話によると、私が授業でいない時は結構な頻度で朱雀様に捕まっては着せ替え人形にされているらしい。
セイが学園に入学する前ごろから「もう変装はしたくない」といちまさんみたいに可愛かった「おセイちゃん」の姿になるのを拒否するようになったため、可愛いお着物を着せたい欲が輝夜に向いている模様。
『フン、そう思うんならおかかをもっと増量しなよ』
「はいはい」
『……まあ、最近は相手さえしてやりゃあ機嫌がいいからね。初めほど恐怖感はないよ』
「それならよかった」
神使としてセイに仕える四神獣の皆様は魔獣の輝夜からしてみれば「おっかない」存在のようで、初めの頃は大変だったものね。
でも同じような聖獣の黒銀と真白に対してはそこまで恐怖を感じないのはなぜかしら?
『神に近い存在のやつらとこいつらじゃ、格ってモンが違うんだよ。本能的なモンだからうまく説明できないけど……』
「うーん、わかったようなわからないような……」
『矮小な獣に成り下がったお主に舐められるような我ではないぞ?』
『おれだって』
聞き捨てならないとばかりに二人がゆらりと立ち上がり、輝夜に威圧する。
『……ッ!』
悲鳴こそ上げないものの、毛を逆立てる輝夜を落ち着かせるように撫でる。
「こら、二人ともケンカはダメって言ってるでしょう?」
二人をメッとしかると渋々とばかりに座り込んだ。
『我らはやつらよりも聖獣になったのが遥かに後ゆえ仕方あるまい』
『だね。でも、くりすてあをまもるためならやつらとだってたたかうからね』
『無論だ』
「いや戦う理由も必要もないからね⁉︎」
どうして君たちはそんなに好戦的なの⁉︎
白虎様やレオン様はすごく余裕がある感じなのにな。
……そこらへんが格の違いってやつなのかしら。
そんなことを考えていると、何かを察したのか二人が拗ねてしまったのでマッサージも追加するはめになってしまった。
……つ、疲れたぁ……!
正直採取より大変だったかもしれない……
いつもの割烹着を身にまとい、三角巾をキュッと締めてから食糧庫に向かい、必要な食材をピックアップする。
「ええと、じゃがいもと玉ねぎと、にんにく……」
黒銀が抱えたカゴにドサドサとそれらを放り込んでいく。
そのまま冷蔵室に移動しバターを取り出す。
「さてと。まずはじゃがいもを水から茹でてくれる? 皮はむかなくていいわ」
「りょうかい」
真白がじゃがいもをさっと洗って、皮付きのまま鍋に入れてから水を注いで魔導コンロに置いて着火する。
はじめは中火で、お湯が沸きはじめたら弱火でじっくりと。
沸騰したらさらに弱火にして茹で、串を刺して中まで火が通っていたら鍋から取り出して粗熱をとる。
「真白、魔法でじゃがいもを冷ましてくれるかしら?」
「まかせて」
氷魔法と風魔法を組み合わせてじゃがいもを冷ましてもらっている間に、インベントリからベーコンを取り出して2~3センチ幅に切り玉ねぎは縦に薄切りに。
「くりすてあ、これでいいかな?」
「ありがとう。ここに置いてくれる?」
じゃがいもは皮付きのまま1センチ幅の輪切りにしてっと。
それから、ニンニクは潰して荒みじんにしてからフライパンに油と一緒に入れて弱火で温める。
香りが立ったらベーコンと玉ねぎを中火で炒め合わせ、塩で味を調える。
玉ねぎに色がつきはじめたらじゃがいもを投入。
ベーコンがカリッとしてないのが好みならベーコンは後入れでもいいけど、私はカリッと派なので先入れにしている。
ベーコンから出た油をじゃがいもにからめるようにしてからバターを投入。これはコクを出したいから入れるので、少しでもいい。
あとは……
「これを入れて仕上げよ!」
瓶に入った黄金の粉……そう、シンが送ってくれたカレー粉だ。
香りがとんでしまわないよう、最後にこれを振り入れてから全体の味を調えて完せ……ああそうだ、採取の時にイタリアンパセリに似たハーブを見つけたのでこれを刻んでパラパラと散らばせて……と。
「カレー風味のジャーマンポテトの完成!」
ご飯やお味噌汁などは白虎様や朱雀様がミリアと一緒に作っておいてくれたので、あとはルビィも食べられるようにマリエルちゃんとセイがサラダを作ってくれたのでそれらを配膳台に並べ、各々が好きなように取ってもらういつものビュッフェスタイルだ。
「それでは皆さん、いただきましょう」
帰りが遅いニール先生の分は取り分けてあるので、余っている分は皆が争うようにおかわりするのであっという間になくなってしまう。
皆すごい食欲だなぁ……
たくさん作り過ぎたかなと思っても毎回ペロリと完食されるので嬉しい反面、もし私がステータスを確認できたのなら、称号に「給食のおばちゃん」とかついているんじゃないかと心配になってしまうのだった。
「くりふてははん、おいひいれふ!」
マリエルちゃんは久々のカレー風味に箸が止まらない様子。
口いっぱいに頬張って喋るのはお行儀が悪いわよ?
「刺激的な味だから、ワタシはたくさんはいらないけど……マリエルが喜ぶだけあって美味しいわぁ。サラダの合間に食べるくらいがちょうどいいわね」
ルビィは食べられないかと思いきや、これで体調を崩すことはないみたい。
そもそもカレーのスパイスはこの世界じゃ薬扱いのものがほとんどだものね。
「うめぇ! こりゃコメにも合うな! おっと、もう無くなっちまった、おかわり……」
「ちょっと待て白虎の。お前はもうすでにおかわりしたであろう。我が先だ」
「おれも!」
おかわりに立つ白虎様に続いて黒銀と真白が我先にと配膳台に急いだ。
「あ、わ、私も!」
マリエルちゃん……食いしん坊な聖獣様たちに張り合わなくていいのよ?
……っていうか、初めに山盛りにしてなかった……? もう食べたの?
「……俺も」
セイは黙々と食べていたけれど、スッと立ち上がるときれいに食べ終わった皿を手にスタスタと速足で向かったのがおかしかった。
カレー風味はこの世界でも大人気みたいね。
月に一回くらいなら、特別寮でカレーを作るのもいいかも。
実家の商会で売りに出せないかとカレー粉の材料を聞いて愕然としたマリエルちゃんに月イチでカレーの日を設けるのはどうだろうと持ちかけたら「学園の食事でそんな高級料理を……⁉︎ いやでも本来は庶民の味なはず……いやでもここでは高級素材……あああああでも食べたい……でも贅沢品……!」と苦悩していた。
とりあえずしばらくはカレー風味のスープとか、炒め物とか、少しのカレー粉で対応できるメニューにしましょうということで折り合いがついたのだった。
部屋に戻り、お風呂上がりに黒銀と真白、それから輝夜にブラッシングをした。
私がちゃんと構ってあげないから浮気がどうとか言われちゃうのよね。
しっかり丁寧にブラッシングして、そんな疑惑は払拭しないと!
「お痒いところはございませんか~?」
『うむ……問題ない。あ、そこはもっと強めにブラシをかけてくれ』
「はいはい」
『くりすてあー、つぎはおれ! くりすてあごのみのもふもふにして?』
「わ……わかったわ」
うぐぅ、真白め、私の膝に上半身を預けてきゅるんと上目遣いとか、あざとすぎるでしょうが!
こいつめ、こいつめぇ!
この後めちゃくちゃブラッシングした。
二人ともツヤッツヤのモッフモフになった。
私も二人も満足、満足。
それから、専用のカゴの中で丸くなって寝ていた輝夜を抱き上げ膝の上にのせてブラッシングを始める。
「いつも朱雀様のお相手ご苦労様」
ミリアの話によると、私が授業でいない時は結構な頻度で朱雀様に捕まっては着せ替え人形にされているらしい。
セイが学園に入学する前ごろから「もう変装はしたくない」といちまさんみたいに可愛かった「おセイちゃん」の姿になるのを拒否するようになったため、可愛いお着物を着せたい欲が輝夜に向いている模様。
『フン、そう思うんならおかかをもっと増量しなよ』
「はいはい」
『……まあ、最近は相手さえしてやりゃあ機嫌がいいからね。初めほど恐怖感はないよ』
「それならよかった」
神使としてセイに仕える四神獣の皆様は魔獣の輝夜からしてみれば「おっかない」存在のようで、初めの頃は大変だったものね。
でも同じような聖獣の黒銀と真白に対してはそこまで恐怖を感じないのはなぜかしら?
『神に近い存在のやつらとこいつらじゃ、格ってモンが違うんだよ。本能的なモンだからうまく説明できないけど……』
「うーん、わかったようなわからないような……」
『矮小な獣に成り下がったお主に舐められるような我ではないぞ?』
『おれだって』
聞き捨てならないとばかりに二人がゆらりと立ち上がり、輝夜に威圧する。
『……ッ!』
悲鳴こそ上げないものの、毛を逆立てる輝夜を落ち着かせるように撫でる。
「こら、二人ともケンカはダメって言ってるでしょう?」
二人をメッとしかると渋々とばかりに座り込んだ。
『我らはやつらよりも聖獣になったのが遥かに後ゆえ仕方あるまい』
『だね。でも、くりすてあをまもるためならやつらとだってたたかうからね』
『無論だ』
「いや戦う理由も必要もないからね⁉︎」
どうして君たちはそんなに好戦的なの⁉︎
白虎様やレオン様はすごく余裕がある感じなのにな。
……そこらへんが格の違いってやつなのかしら。
そんなことを考えていると、何かを察したのか二人が拗ねてしまったのでマッサージも追加するはめになってしまった。
……つ、疲れたぁ……!
正直採取より大変だったかもしれない……
208
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
婚約破棄? そもそも君は一体誰だ?
歩芽川ゆい
ファンタジー
「グラングスト公爵家のフェルメッツァ嬢、あなたとモルビド王子の婚約は、破棄されます!」
コンエネルジーア王国の、王城で主催のデビュタント前の令息・令嬢を集めた舞踏会。
プレデビュタント的な意味合いも持つこの舞踏会には、それぞれの両親も壁際に集まって、子供たちを見守りながら社交をしていた。そんな中で、いきなり会場のど真ん中で大きな女性の声が響き渡った。
思わず会場はシンと静まるし、生演奏を奏でていた弦楽隊も、演奏を続けていいものか迷って極小な音量での演奏になってしまった。
声の主をと見れば、ひとりの令嬢が、モルビド王子と呼ばれた令息と腕を組んで、令嬢にあるまじきことに、向かいの令嬢に指を突き付けて、口を大きく逆三角形に笑みを浮かべていた。
【完結・全3話】不細工だと捨てられましたが、貴方の代わりに呪いを受けていました。もう代わりは辞めます。呪いの処理はご自身で!
酒本 アズサ
恋愛
「お前のような不細工な婚約者がいるなんて恥ずかしいんだよ。今頃婚約破棄の書状がお前の家に届いているだろうさ」
年頃の男女が集められた王家主催のお茶会でそう言ったのは、幼い頃からの婚約者セザール様。
確かに私は見た目がよくない、血色は悪く、肌も髪もかさついている上、目も落ちくぼんでみっともない。
だけどこれはあの日呪われたセザール様を助けたい一心で、身代わりになる魔導具を使った結果なのに。
当時は私に申し訳なさそうにしながらも感謝していたのに、時と共に忘れてしまわれたのですね。
結局婚約破棄されてしまった私は、抱き続けていた恋心と共に身代わりの魔導具も捨てます。
当然呪いは本来の標的に向かいますからね?
日に日に本来の美しさを取り戻す私とは対照的に、セザール様は……。
恩を忘れた愚かな婚約者には同情しません!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。