3 / 15
プレミアムなフライデーな新世界
……飲み屋が教団本部になっていた
しおりを挟む
「「おお……」」
「「神よ———」」
今日の「新世界」は一味違う。
レトロな雰囲気を残した、小さなガード下の飲み屋だったはずなのに、ヨーロッパあたりの古城よろしく全面・石造り。
コの字型のカウンターも丸イスも厨房も壁のメニューも一切合切取っ払って、あるのは正面の入り口(扉なし)から俺の方に伸びてくる赤絨毯のみという内装の潔さ。
壁の高いとこに点々と据え付けられたろうそく風の黄色い灯りが、ファンタジー調の演出に一役買っている。
うん、そう、総括すると、結婚式挙げるチャペルあるよな。罰当たりかもしれないけど、アレの天井を下げに下げて、必要な灯りと、最低限の赤絨毯だけは置いときましたっつう感じ。
こんなところでお二人の門出を祝おうものなら、新郎新婦もとより参列者も諸々の意味で涙を禁じ得まい。
で、周りと比べてちょっと高くなっている祭壇の中央に俺が立ってて、普段なら手酌でビール飲んでるスーツ着たおっちゃんのかわりに、やたら黒い司祭服? っていうの? あんな感じの服を着たオッサンが眼下にズラーッと整列していた。
ぱっと見10人いるかいないかくらい。そこそこ部屋のスペースが余ってる。
すっげえなー。だいぶ思い切った改装をしたもんだな。
でも俺、ちょっと思い切りが良過ぎたんじゃないかと思うんだ。いやだってコレ、どうやって酒とか料理とか提供するの?
テーブルも無いし、手元も暗くてよく見えないし、この高そうな赤絨毯に酒ぶちまけそうでメッチャこえーよ俺。
それにほら、変に教会風にして宗教色出しちゃったせいかさ、集まってくるお客さんもなんかご専門の方が揃っちゃてるよ。
それともあれは新しく雇った従業員なの? 「いらっしゃいませー」とか言うかわりにどよめいたり神の名を呟いたりするの?
いやー、現代は確かにスピリチュアルな何かに救いを求める風潮が流行ってるって言うけどさ、これはちょっと時代を先取り過ぎてるよー。飲み屋っていうか教団本部だよ。アハハー。
笑えねえ。
笑ってる場合じゃねえ。
まず間取り以前に空間がおかしい。店は客が7、8人も入ればいっぱいなのに、ここは10人くらい居ても部屋の五分ほどスペースが余ってる。
あとは音も振動もほとんどない。空気もなんか冷たくて重い。上を電車が通ってたらありえないくらいの静寂さだ。
極め付けにどの顔見ても一見さんしかいねえ。客はともかく、ちゃきちゃきと気のいいおばーちゃん(女将)の顔くらい、ローブ着てようが、フード被ってようが、形容し難いカカシみてえなポーズをキメてようがいたらすぐわかる。
ここはいったい何なんだ?
入った店の名前は確かに「新世界」だけど、俺は別にこんな新世界なんて求めてねえ。
俺はただ、仕事帰りに一杯ひっかけるつもりで飲み屋に入ったはずなんだ。
そうだ。その証拠に、立て付けの悪い引き戸をガラガラ開けた時のまま、俺の右手は宙に浮いてる。
足を踏み出した体勢でつっ立ってることを鑑みるに、俺は店に一歩踏み入れた瞬間こうなったらしい。
どうなってんだコレ。
誰か説明してくれ。
てゆうか帰りたい。帰って何事もなかったことにしたい。
とりあえず棒立ちして、漠然と眼下に広がるオッサン集団を見渡したのち、ふと目線を落とすと、俺の目の前にも人がうずくまっていた。
修道服っぽいナニカを着て、その上からフード付きの紫色のマント(無地)を羽織ってる。それにこの人はオッサンじゃない。
つま先を立てた正座で、指を組んで、
(>_<)
みたいな顔して祈りを捧げている17、8くらいの娘だ。フードからのぞく髪の毛と睫毛の色は、暗いからよくわからないけど、たぶん赤みがかってる。
強いて言えば赤味噌みたいな色だけど、なんにしても迷子。人種が迷子。
とりあえず君は祈るより先に、俺がこの後とるべき行動を教えて欲しい。俺はどうすればここを退出して都会の雑踏と喧騒に再びログインできるんですか。
そんな俺の心の声に応えるように、目の前の娘がおずおずと目を開き、俺の方を見上げた。
それからまんまるな金色の目を見開いて、どういうワケか必死だった表情がぱっと明るくなった。
え、え? 何? その期待の眼差しは何?
娘は両手を組んだままぐいっと立ち上がり、そのまま俺の方にぐいっと近づく。
そして、(俺の方が背が高いから、)ちょっと見上げながら、言った。
「お願いします勇者様!どうか、私たちをお救いください!」
—どさっ。
俺は思わず、手にしていたビジネスバッグを落としていた。
「「神よ———」」
今日の「新世界」は一味違う。
レトロな雰囲気を残した、小さなガード下の飲み屋だったはずなのに、ヨーロッパあたりの古城よろしく全面・石造り。
コの字型のカウンターも丸イスも厨房も壁のメニューも一切合切取っ払って、あるのは正面の入り口(扉なし)から俺の方に伸びてくる赤絨毯のみという内装の潔さ。
壁の高いとこに点々と据え付けられたろうそく風の黄色い灯りが、ファンタジー調の演出に一役買っている。
うん、そう、総括すると、結婚式挙げるチャペルあるよな。罰当たりかもしれないけど、アレの天井を下げに下げて、必要な灯りと、最低限の赤絨毯だけは置いときましたっつう感じ。
こんなところでお二人の門出を祝おうものなら、新郎新婦もとより参列者も諸々の意味で涙を禁じ得まい。
で、周りと比べてちょっと高くなっている祭壇の中央に俺が立ってて、普段なら手酌でビール飲んでるスーツ着たおっちゃんのかわりに、やたら黒い司祭服? っていうの? あんな感じの服を着たオッサンが眼下にズラーッと整列していた。
ぱっと見10人いるかいないかくらい。そこそこ部屋のスペースが余ってる。
すっげえなー。だいぶ思い切った改装をしたもんだな。
でも俺、ちょっと思い切りが良過ぎたんじゃないかと思うんだ。いやだってコレ、どうやって酒とか料理とか提供するの?
テーブルも無いし、手元も暗くてよく見えないし、この高そうな赤絨毯に酒ぶちまけそうでメッチャこえーよ俺。
それにほら、変に教会風にして宗教色出しちゃったせいかさ、集まってくるお客さんもなんかご専門の方が揃っちゃてるよ。
それともあれは新しく雇った従業員なの? 「いらっしゃいませー」とか言うかわりにどよめいたり神の名を呟いたりするの?
いやー、現代は確かにスピリチュアルな何かに救いを求める風潮が流行ってるって言うけどさ、これはちょっと時代を先取り過ぎてるよー。飲み屋っていうか教団本部だよ。アハハー。
笑えねえ。
笑ってる場合じゃねえ。
まず間取り以前に空間がおかしい。店は客が7、8人も入ればいっぱいなのに、ここは10人くらい居ても部屋の五分ほどスペースが余ってる。
あとは音も振動もほとんどない。空気もなんか冷たくて重い。上を電車が通ってたらありえないくらいの静寂さだ。
極め付けにどの顔見ても一見さんしかいねえ。客はともかく、ちゃきちゃきと気のいいおばーちゃん(女将)の顔くらい、ローブ着てようが、フード被ってようが、形容し難いカカシみてえなポーズをキメてようがいたらすぐわかる。
ここはいったい何なんだ?
入った店の名前は確かに「新世界」だけど、俺は別にこんな新世界なんて求めてねえ。
俺はただ、仕事帰りに一杯ひっかけるつもりで飲み屋に入ったはずなんだ。
そうだ。その証拠に、立て付けの悪い引き戸をガラガラ開けた時のまま、俺の右手は宙に浮いてる。
足を踏み出した体勢でつっ立ってることを鑑みるに、俺は店に一歩踏み入れた瞬間こうなったらしい。
どうなってんだコレ。
誰か説明してくれ。
てゆうか帰りたい。帰って何事もなかったことにしたい。
とりあえず棒立ちして、漠然と眼下に広がるオッサン集団を見渡したのち、ふと目線を落とすと、俺の目の前にも人がうずくまっていた。
修道服っぽいナニカを着て、その上からフード付きの紫色のマント(無地)を羽織ってる。それにこの人はオッサンじゃない。
つま先を立てた正座で、指を組んで、
(>_<)
みたいな顔して祈りを捧げている17、8くらいの娘だ。フードからのぞく髪の毛と睫毛の色は、暗いからよくわからないけど、たぶん赤みがかってる。
強いて言えば赤味噌みたいな色だけど、なんにしても迷子。人種が迷子。
とりあえず君は祈るより先に、俺がこの後とるべき行動を教えて欲しい。俺はどうすればここを退出して都会の雑踏と喧騒に再びログインできるんですか。
そんな俺の心の声に応えるように、目の前の娘がおずおずと目を開き、俺の方を見上げた。
それからまんまるな金色の目を見開いて、どういうワケか必死だった表情がぱっと明るくなった。
え、え? 何? その期待の眼差しは何?
娘は両手を組んだままぐいっと立ち上がり、そのまま俺の方にぐいっと近づく。
そして、(俺の方が背が高いから、)ちょっと見上げながら、言った。
「お願いします勇者様!どうか、私たちをお救いください!」
—どさっ。
俺は思わず、手にしていたビジネスバッグを落としていた。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました
チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。
完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。
【捕食】
それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。
ゴブリンを食べれば腕力を獲得。
魔物を食べれば新スキルを習得。
レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。
森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。
やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。
これは――
最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる