感情下手な神泉さんは、危機を救ってくれた目立たない彼にベタ惚れの様です〜素直になれません!〜

松原 瑞

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お天気大作戦

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◇◇◇
~放課後~

 クラスメイトもまばらな教室に、私と佐奈は何をするでもなく駄弁っていた。窓の外をぼんやり見つめると、灰色の雲が空を覆っている。今朝の天気予報で、午後は雨が降ると言っていたっけ。

「もうすぐ四月も終わりかぁ」

 早いもので、私が倉敷くんと出会ってからもうすぐ一ヶ月が経ちます。いや、まぁ正確には入学当初から会っているんだけど、私は倉敷くんのこと知らなかったからなぁ。クラスも違ったし、同じクラスに佐奈がいたからクラス間の移動もあまりしなかったし。

「栞里にとっては心臓がバクバクな一ヶ月だったねぇ」
「佐奈のせいで、あれからあんまり倉敷くんとお話できていないんだからね」
「だからごめんて~。そんな気にすることじゃないと思うよ?」

 先日倉敷くんに色々質問した際に、自覚なく変な質問をしたことが後に発覚し、一方的に私が気まずくなっているのです。倉敷くんはどう思っているんだろう。やっぱり変な子って思われたりしたのかな。ハシタないって思われたりしたのかな。
 はぁ………………。

「そんなため息付いてたら、せっかくの可愛い顔が台無しだぞ」
「ほっぺプニプニしないで」
「ん~栞里ちゃんはツン期のようですね」

 何だか私の変な周期を作られた気がするけど、いつものことなので触れないでおこう。
 佐奈からそっぽを向いたついでに倉敷くんの席を見る。当然、もう倉敷くんはいない。まぁもう帰りのホームルーム終わって結構経っているしね。今日は帰りの挨拶できなかったな。
 私が物想いにふけっていると、佐奈が急に席を立つ。

「さて、あたしゃこれから委員会があるから、栞里は先に帰ってててね」
「えっ!? 佐奈、時間潰すために私を残してたの!?」
「委員会が微妙な時間だったからね。ごめんね~栞里。今度ステバの飲み物でも奢るからさ」

 そう言い残すと、佐奈は足早に教室を後にしたのだった。
 佐奈は本当に自由人だ。まぁだからこそ、最初から私のこと怖がらずに接してくれて、今では一番の理解者になってくれているんだけど。

「でも最近すごく自由すぎる気がする」

 半分おもちゃにされているような気もしなくはないが、考えても仕方ないので私も帰ることにした。
 廊下を歩いていると、窓から見える校庭では野球部やサッカー部、陸上部などが何やら急いで片付けているようだった。この時間ならいつもまだ練習しているハズなのに。
 よく見ると、ポツポツと雨が降り出していたようだ。天気予報通りである。
 私は靴に履き替え、昇降口のドア前から外を見ると。

「結構強く降ってきたなぁ」

 雨は次第に強くなり、数秒でも傘をささなければ頭の先はびしょ濡れになってしまうだろう。周りを見渡すと、まばらに居る生徒のうち何人かは傘を忘れたのか、諦めたように雨の中を走って行く者も居た。

「ふふ、私はちゃんと用意してあるもんね」

 誰に言うでもないが、一人得意げになった私は、カバンの中から折り畳み傘を取り出す。
 折り畳み傘って、結構小さいんだよね。大きい物もあるだろうけど、そうすると可愛いのないし。

「あぁ、やっぱり雨降ってるよ。どうしようかな」

 男の人用の折り畳み傘は大きくて、ちょっと羨ましい。女性用のは小さくて、案外カバンとかはみ出て濡れちゃうんだよね。次からはやっぱりちょっと大きめな折り畳み傘を持ってこようかな……——。あれ? 今の声って……?
 すごく聞き覚えのある声が隣から聞こえた。私は心臓を跳ね上げながら、まるで壊れたロボットのように首を原因の方へ向けると、そこには倉敷くんが立っていて。

「あ、あれ、くく倉敷くん? なな何で」
「ん? あ、神泉さん。今帰りなの?」
「えぁ、う、うん……。佐奈と喋ってて」
「そか」

 くくく倉敷くんが何でここに居るのぉぉぉ!?
 若干パニックになっている私に気づいた倉敷くんは、明るい表情を私に見せてくれると、外の雨に顔を向ける。何やら困っている様子だ。

「俺も委員会で残っててさ。いざ終わったらこの雨だから参っちゃうよね」

 苦笑いする倉敷くん、カワイイっ!
 でも参っちゃうって、もしかして倉敷くん、傘ないのかな?

「よ、予報だとこの雨、夜まで止まないみたいだよ」
「え、本当? うわぁ、俺今日傘忘れたんだよなぁ。いよいよ覚悟を決めなきゃかぁ」

 あ、やっぱり傘忘れたんだ。どうしよう、私も傘一つしかないし、何とか倉敷くんを助けたいけど、私にできることは……。
 ある、一つだけある。ででで、でも今の私にはちょっとハードルが高いかも……いや、でもここは勇気を出して……、でも恥ずかしいっ!

「じゃ、俺は行くね! 神泉さんも濡れて風邪引かない様にね! それじゃ!」
「え、あ……——」

 すると、倉敷くんはリュックを頭の上に担ぐと、雨の中へと走り出してしまった。
 こんな雨の中、駅まで走ったら倉敷くんが風邪引いちゃう。風邪引かれたら、何日か会えなくなるんだよね? ……それは寂しいなぁ。会えないのはイヤ。だから、私はさっき思い付いたことを実行しなくちゃ。
 そう、これは恥ずかしくない……これは善意。人としての当然の善意何だから、決して恥ずかしくない。さぁ言うのよ私、声を高々に、倉敷くんに良いところを見せるの!

「あ、あのっ!」
「ん?」

 私の上ずった声に、倉敷くんが雨の中立ち止まり、私の方を見てくれた。

「あ、あの、雨に濡れるのが嫌なら、わ、私の傘に入れてあげても良いんだけど?」

 バカかわたしゃあ! そんな上から目線で好きな人にアピールする奴があるかぁ! あぁもう恥ずかしいやばい耳が熱い! あ、でもこの感じはやっぱりいつもの無表情状態だ! ……余計上から目線っぽいじゃんかぁコレ!

「え、い、良いの神泉さん?」
「う、うん」
「じ、じゃあお邪魔します……」

 あ、でも来てくれた倉敷くん来てくれたぁ! ……ち、ちか!? え、自分で言っといて何だけど、相合傘ってこんな距離近いの!? ダメダメ頭おかしくなりそうあ~もう無理だコレ、ほぼ肩と肩当たってるんですけどぉ!?
 私がワタワタしていると、倉敷くんはちょっと困ったようにこっちを見ていて。

「あの神泉さん、やっぱり俺走って行こうか?」
「だ!? だだだ……駄目っ!!」
「駄目!?」

 駄目って何やねんヤバい近すぎて思考が回らない……。一旦冷静に、冷静になるのよ栞里!
 落ち着いて、落ち着いて! ハイ深呼吸、1・2・3・4~。

「あ、いや、だい……じょうぶ。私は平気だから、気にしないで」

 ぃよし! 今度は大丈夫だった!

「本当? じゃあ俺の方が背ちょっと高いし、俺の身長に合わせて傘さすのは神泉さん大変だろうから、俺が傘持つね」
「ん、……ありがと」

 やっさしぃ!? ホント? そんな気遣いまでしてくれるの倉敷くん。優しすぎて私の心が浄化されそう何ですけど? 嬉し恥ずかしすぎて顔が見れないや、どうしても俯いてしまう。
 あぁ、今日は何て良い日何でしょう。倉敷くんと一緒に帰れるなんて、佐奈……今日も私を振り回してくれてありがとう……。
 楽しいなぁ、楽しいなぁ……——。

「…………」
「…………」

 楽……しい? いや、私は楽しいよ? 一緒にいるだけで幸せだし、何なら今時間が止まって永遠に動かなくても良いくらい楽しいよ?
 でも倉敷くんはどうなんだろう。いきなり私なんかと一緒に帰ることになって、どう思っているんだろう。
 ヤバい、このままつまらないって思われたら悲しい。何か話題をっ!

「「あ、あのっ!」」

 カブった……。あるよねぇこう言うこと……。それまで結構間はあったのに、いざ話そうとすると何故か同じタイミング。どうしよう勢いがなくなっちゃった。

「あ、どうぞ」
「あ、うん。あの、この前神泉さん僕に色々質問してきてたじゃん?」
「あれは忘れてください」
「うぇ!?」

 その節はどうも申し訳ありませんでしたぁ! いくら無自覚とはいえ、倉敷くんに置きましては本当に失礼なコトをば……。

「い、いや、あのね? 神泉さんに色々俺のコト聞かれて、実は嬉しかったんだ」
「え、……嬉しい?」
「あ、あの事ではないよ!? えっと、神泉さんが俺の事について聞いてくれて、俺の事を知ろうとしてくれてるってのが、俺本当に嬉しくてさ」
「……」

 え、そうなの? 倉敷くん、喜んでくれていたの? そっか、それなら私も嬉しいかも。
 嬉しくて、相変わらず倉敷くんの顔は見れないけど、聞いてるよって意思表示するために首をコクコク揺らしてみたりして。

「だから、俺も神泉さんの事色々知りたくてさ、俺もこの前の質問を神泉さんにしたいんだけど、良いかな?」

 その答えとして、私はもっとたくさんコクコクしました。
 あぁ、何だか雨が好きになりそう。雨のおかげで、私は倉敷くんに少し近づけた
気がします。
 これから持ち歩く折り畳み傘は、やっぱり小さめな物にしよう。
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