感情下手な神泉さんは、危機を救ってくれた目立たない彼にベタ惚れの様です〜素直になれません!〜

松原 瑞

文字の大きさ
6 / 26

連絡先交換大作戦②

しおりを挟む
◇◇◇
~翌朝~

「はぁ……」

 結局昨日もライン聞けなかった……。たかが『ライン交換しよ』の一言じゃん。何でその一言が言えないんだろう。
 こんなんじゃ、仮にラインの交換ができたとしても、果たして常日頃から連絡を取り合うことはできるのだろうか? まぁ多分できないよね! 想像しただけで悶絶しちゃうもの! 朝起きて『おはよう』って送ったり、特に用事がなくても『今なにしてる?』とか相手の行動が気になっちゃったりとかキャーーーー!!!! 想像しただけでエキセントリック何ですけどぉ!!!!

「……落ち込んでたと思えば急にカバンに顔埋めて悶絶している栞里ちゃん、頭大丈夫?」
「駄目だと思う」

 だって想像しちゃったらしょうがないじゃん。好きな人とお話できるってのは、本当に胸がドキドキすることなんだよ? 抑えきれない気持ちってのは、どうしても顔に出ちゃうの。表情豊かな女の子なら、きっと幸せそうに愛でたくなる表情をするのだろうけど、私みたいな表情の硬い女子は見るに耐えない顔をしてしまうだろう。だからついついカバンという密閉空間に顔を埋めてしまうのだが。

「……? あれ?」
「どしたー栞里」

 カバンに顔を埋めたことにより、違和感を一つ覚える。

「あれ? あれれ?」

 スポンっとカバンから顔を抜いた私は、カバンの口をチャック全開で開け、中身を確認する。
 ない、ないない。やはりない。

「今日、お弁当忘れちゃったみたい」

 よくよく今朝の事を思い返すと、昨日のダメージが抜けきれていないからか、フラフラと支度をして家を出た気がする。お弁当をカバンに入れた記憶は当然ない。

「お昼は購買に行ってパン買わないと……はぁ、やってしまった」
「まぁたまにはパンもいいじゃない」
「じゃあお昼、佐奈も一緒に買いに来てくれる?」
「お昼のパン争奪戦覚えてないの? あたしゃあお弁当あるから行かないよ」
「ケチ……」

 普通の学校である我が校には、当然学食など存在しない。故に、お弁当を忘れた者、そもそもお昼は購買頼りの者等、お昼を調達する人間は全て購買に集中するのだ。
 この学校に入学してすぐ、学校でパンを買うという一つの憧れめいたものにかられ、佐奈とお昼に購買へ行ったらひどい目に合ったのを今でも覚えている。

「帰ってくるの待っててあげるから頑張りなさい」
「うぅ……お昼休みになったらダッシュで行かないと……」

 最悪の事態(パンの売り切れ)を想定しつつ、気合を入れる私であった。

◇◇◇
~お昼休み~

 購買の前までやって来た私は、ただでさえ小さな瞳をさらに丸くした。

「え、こ、購買ってこんな人すごかったっけ」

 そこには長蛇の列……なんて行儀の良いものはなく、我こそは先にと人を退け合うおぞましい戦場ができていた。

「学校側はこれ放置してて良いのかな? いつか怪我人が出ると思うけど……」

 しかし、現状に文句を言っていてもパンは手に入らない。この人だかりを見るに、あと10分もしたらコッペパンすら売り切れてしまうだろう。
 一番人気は昔ながらの焼きそばパンやコロッケパンらしい。だが、正直焼きそばパンとかコロッケパンに魅力をそこまで感じない私は、最前列にいる必要がないことが唯一の救いである。

「なんか美味しそうなの……明太パンとか、チーズのパンとか、あんぱんとかがあれば良いかな」

 それくらいなら中間くらいでもまだ間に合うだろう。取り敢えず最後尾についてみる。

「……」

 中々進まない。

「…………」

 全然進まない。

「………………」

 本当に進まない!
 どうしようこのままじゃあ今日のお昼コッペパンだ! いやまぁコッペパンでも食べれるだけマシなんだけどね。最悪お昼抜きになってしまう! それは辛いよぉ……。

「と、取り敢えず突っ込んでみよう……えい!」

 壁のようになっている人だかりに突っ込んでみるが、やはり進まない。それに、人を押しのけて中に割って入るというのは、どうしても気が引ける。

「あの、すみません……すみません……通してくださ……すみません!」
「ん? ひっ!? ごごごめん! 俺なんかした!? 怒ってる!?」

 前の男の人が私の顔を見るなり謝って来た。たぶん一生懸命になってたから、眉間にシワがよってかなり怖い目つきになっていたんだろうなぁ……。
 久しぶりに人を怖がらせてしまった。何だか申し訳ないし、やっぱりちょっと落ち込む。

 もう今日はお昼良いかな。この人だかりが消えて、もしパンが余ってたらそれで良いし、なくなったらなくなったで良いや。お弁当忘れた私がいけないんだし。
 行列から離れ、最後尾から少し離れた壁に寄りかかり列を見る。何だか少しブルーなのは、お腹が減って来たからかなぁ。

「はぁあ、ツイてないな」

 スマホを取り出し、佐奈に遅れるから先に食べててとラインをする。待たせたら悪いしね。
 佐奈からすぐに返事は来た。苦戦することは予定通りだから待ってるとのこと。何だかんだで、佐奈は優しいのである。やだ泣きそう。
 私が返事を返そうとスマホに注視していると、視界の角で誰か立っている。気になった私は顔をあげると、目の前にはいくつかのパンを購入していた倉敷くんが立っていて。

「どうしたの、神泉さん?」

 私を心配しているのだろうか。少しオロオロしている倉敷くんは非常に可愛い。

「え、あの、えぇと、パンを買いにね」
「あぁ~……」

 私の一言で察したのか、倉敷くんは人の壁を一度見やると、優しい笑顔で私の方へ振り返り。

「あの、神泉がよかったらなんだけど、俺が買ってこようか?」
「え?」

 少しハニかんだ倉敷くんの笑顔に、私のブルーな気持ちはすっかりピンク色に煌めいていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

【完結】竜王の息子のお世話係なのですが、気付いたら正妻候補になっていました

七鳳
恋愛
竜王が治める王国で、落ちこぼれのエルフである主人公は、次代の竜王となる王子の乳母として仕えることになる。わがままで甘えん坊な彼に振り回されながらも、成長を見守る日々。しかし、王族の結婚制度が明かされるにつれ、彼女の立場は次第に変化していく。  「お前は俺のものだろ?」  次第に強まる独占欲、そして彼の真意に気づいたとき、主人公の運命は大きく動き出す。異種族の壁を超えたロマンスが紡ぐ、ほのぼのファンタジー! ※恋愛系、女主人公で書くのが初めてです。変な表現などがあったらコメント、感想で教えてください。 ※全60話程度で完結の予定です。 ※いいね&お気に入り登録励みになります!

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

処理中です...