感情下手な神泉さんは、危機を救ってくれた目立たない彼にベタ惚れの様です〜素直になれません!〜

松原 瑞

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初めてのライン

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 佐奈とお洋服を選びに行ったせいで、すっかり遅くなってしまった。とは言ってもまだ20時前だが、学校帰りでこの時間というのは中々ない。幸いにもお父さんとお母さんの帰りは遅いので、別にバレるということはないのだが、決められた門限は守ってしまう。

「お兄ちゃんただいま~」
「おうおかえり。ほら夕飯のまかない飯あるから、温めて食べろよ」
「はーい」

 リビングでくつろいでいたお兄ちゃんが、テーブルの上にあるご飯を指差す。
 大学生の兄は、駅のそばにある隠れ家的なカフェでバイトをしています。というのも、そこのお店の店長はうちの隣に住んでいる娘さんで、昔からの顔なじみなのだ。
 私も人手が足りない時に頼まれて、お手伝いしたことがあった。だが、オーダーを取りに行けば緊張して怖がられ、厨房に入れば軽いボヤ騒ぎになるわ食器を割るはで大惨事。
 店長の真澄ますみ 絵里香えりかさんは昔から私たち兄弟を可愛がってくれていたので怒らないでくれたが、それ以来お手伝いの依頼が来なくなってしまった……。
 お兄ちゃんは私と同じ三白眼で、顔も割と似ている。だが、お兄ちゃんは普通に笑顔もできるし、何でもそつなくこなしてしまうので、絵里香さんから正式にバイトとして雇われているのだ。前遊びに行った時、お客さんからイケメン店員扱いされててちょっとビックリしたけど。

 とりあえずテーブルにあったロコモコ丼を温め直し、夕飯とする。

「そういえば、最近絵里香さんと会ってないなぁ」
「あ~、そういえば寂しがってたぞ。たまにはお店に行ってやれ」
「私今金欠だから、短期で雇ってくれないかな……」
「……いいか栞里、人には向き不向きってのがあってな?」
「身内すら内定拒否!?」

 うわああん! と泣きながらロコモコ丼を胃に流し込みました。相変わらず絵里香さんのご飯は美味しいなぁ。
 すると、テーブルの上に置いてあった私のスマートフォンが静かにバイブ音を鳴らす。おそらく佐奈からだろう。私にラインしてくる人はだいたい限られてい……——、

「倉敷くん!?!?!!??」
「な、何だぁ!?」

 私の大声に、リビングのソファで寝転がっていたお兄ちゃんも跳ね上がっていた。

「あ、いっいや、ごめん何でもない。ききき気にしないで」
「いやめっちゃ動揺してるじゃねーか! 小さい瞳がすごい勢いで左右に動いてんぞ!」
「小さいって言うな!」

 そりゃ動揺するでしょーよっアンタ! 相手誰だかわかってんの? 倉敷くんよ、く・ら・し・き・くん! わかる? わかんないかふはは! ふわぁぁぁぁあ変な汗かいてきたぁ! 顔が熱いよぉ!
 ととと、とりあえず内容を確認しないと……。えぇと、

『こんばんわ神泉さん。初ラインだね!』

 んん……、可愛い!! わわわ、私もなんか返さなきゃ!」

『こんばんわ』

 ラインでもかっ! 私は電子世界でも無表情なのかオイ! 何で? 佐奈とラインするときはもっと普通……いやこんな感じだったわ。
 ロコモコ丼が喉を通らない。私の意識はすっかりスマホの画面に注力されていた。心臓の鼓動が鳴り止まない。ずっとバクンバクン言っている。なんて寿命の縮みそうなライン何だ……。
 その態勢のまま5分ほど経過しただろうか、握りしめたスマホは振動を手の平に伝え、画面には倉敷くんの文字が浮かんでいた。

『今日のことなんだけど、神泉さんが俺に気を使ってくれてコッペパン美味しいって言ってくれたの、嬉しかった! ありがとう!』

 こちらこそありがとうですよぉ! 私の為にあんな人混みに突っ込んでくれるのは貴方くらいですよぉ! 本当に美味しかったんだからね! 嘘偽りないからね?

『いや、こちらこそありがとう。大変だったでしょう』

 んん……素っ気ない……素っ気ないけど一応気にかけてる文面は書けてるし……まだ良い方なハズ……。

『全然! 次こそは明太パンゲットするから、いつでも頼って!』

 頼りますぅ! あ、でも本当に頼ったら迷惑かな。でもそう言ってくれること自体が嬉しいから大丈夫!

『うん。ありがとう』

 そして素っ気ない返事の私。もうこれは諦めるしかないのか? ずっとこのままなのだろうか。
 私がご飯をそっちのけで、おそらくすごい表情をしていたのだろう。スマホに噛り付いている私をお兄ちゃんがチラチラ伺っているけど、今は無視。

『それで昼休みに約束したことなんだけど、神泉さん何か食べたいものや、好きなものある?』

 好きなものですかぁ、ありますよぉ。貴方でーーーーーす、フゥゥゥぅ!
 ……てまぁ、興奮冷めやまないのは山々何だけど、それはさておき、好きなものかぁ。どうしよう、こういう時どこに行くのが良いんだろう。
 ファミレス? いやぁそれはちょっと雰囲気が……。フレンチ? きっと高いだろうし、どうしよう。
 悩みすぎて辺りを見回す。すると、視線を落とした先、スマホの隣にある丼を見つけた私は、これだと閃く。
 そして今もチラチラこちらを見ているお兄ちゃんに向かって、

「お兄ちゃん、ゴールデンウィークのシフト……教えて」

 お兄ちゃんのシフトが入っていない日を指定し、絵里香さんのお店『カフェ
Quiet Forest』を紹介した。
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