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第四章

陽斗の想い ③

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 思わず手をとって、美織の頬に そっと口づけた。
 やばい! キスなんて初めてで、すっげぇ緊張する。はにかむ美織が、一段と可愛い!
 俺たちは、自然と唇を重ね合った。
 ドキドキとともに美織の柔らかな温もりが伝わってくる。
 体の中が どんどん、心の奥までが じわじわと熱くなっていく。このままずっと、触れ合っていたいと感じる。

 美織は、あまり長い時間 体を起こしていることが出来ない。
 いつもなら、辛くならない内に横になれるよう手助けをしているのに。今日は遅れてしまったみたいだ。
 少し息の上がってきた彼女を慌ててベッドへ寝かせた。
 幸い すぐに落ち着いたみたいで、美織は「大丈夫、大したことない」って明るく言ってくれたけど。俺は心配でたまらなかった。
 美織を守るなんて大言吐いたくせに。もっと しっかりしなくちゃいけないよな。

 面会時間が終わりに近づいた。
 まだまだ傍にいたい気持ちは ぐっと抑えて、
「また来るから」と声を掛け立ち上がる。
「うん、待ってるね」
 布団から出した手を小さく振りながら、美織は微笑んでくれた。


 美織を守れるほどの力が欲しいと、強く思った。
 大切な人を もう二度と失いたくない。
 彼女が助かる方法は、ただ ひとつ――臓器移植の手術を受けることだけ。でも、それはとても難しいことで……

 美織の為に何か出来ることはないかと考え、俺はドナー登録をすることにした。そうしたからといって美織が治ることと結びつくとは限らないけど、何かしないではいられないんだ。
「生きたい」という美織の願いを叶えてやりたい……

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 このページを最後に、陽斗の文章は途絶えていた。
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