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プロローグ【ちぐはぐタイトルの謎】
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「このタイトル、なんか間違ってないか? 」
中学の部活動として、同好会昇格を目指すミステリー愛好会。メンバーは、勇・忠宏・僕の二年生三人組。
担任の先生から許可をもらい、いつものように放課後、教室に残ってミステリー小説を読み合っていた時のことだ。
眉根を寄せた勇が差し出してきたその本のタイトルは――『トキメキの面影~ルノワールのグランドジャットの日曜日』。
「え、そうなの? もしかして、トキメキがカタカナだと違和感あるとか、またまたそんな細かいことを――」
「そうじゃなくて」
にこやかにつっこむ忠宏を遮って、勇は真剣な眼差しを向けた。
「副題として付けられた「ルノワールのグランドジャットの日曜日」が、だよ」
美術にあまり興味のない僕は名前くらいしか聞いたことがなかったんだけど。
勇いわく、ルノワールは19世紀から20世紀初頭に活躍したフランス印象派画家の一人らしい。
そして、「グランドジャットの日曜日」はパリ西部のセーヌ川に浮かぶグランドジャット島を舞台に日曜午後の風景を描いた、同年代の作品。こちらは、いつだったか僕も目にした覚えはある。
あれ? でも――
「そう。だから、これはルノワールの作品じゃなくて――」
勇の熱弁は続く。ミステリーだけじゃなく、美術にも相当な思い入れがあるみたいだ。
「へぇ、そうなんだ」
けど、仮にもちゃんと本になっているものだしなぁ……そんな初歩的なミスがノーチェックのままなんてことがあるのだろうか。
――なんて、ついさっき、勇の力説を聞くまでは気が付かなかった僕が言うのもなんだけどさ。
「なんでこんなタイトルなのか、ちょっとした謎だよね」
忠宏は、きらきらと目を輝かせている。
たぶん、この本自体は、ミステリー小説として書かれたわけではないのだろうけれど。アンバランスなタイトルの謎は、僕も気になるところだ。
「そうだな、読んでみたら分かるかもな」
勇もその気のようだ。
こうして僕たちは、ちょっぴりドキドキしながら、手元の本を開いたのだった――
中学の部活動として、同好会昇格を目指すミステリー愛好会。メンバーは、勇・忠宏・僕の二年生三人組。
担任の先生から許可をもらい、いつものように放課後、教室に残ってミステリー小説を読み合っていた時のことだ。
眉根を寄せた勇が差し出してきたその本のタイトルは――『トキメキの面影~ルノワールのグランドジャットの日曜日』。
「え、そうなの? もしかして、トキメキがカタカナだと違和感あるとか、またまたそんな細かいことを――」
「そうじゃなくて」
にこやかにつっこむ忠宏を遮って、勇は真剣な眼差しを向けた。
「副題として付けられた「ルノワールのグランドジャットの日曜日」が、だよ」
美術にあまり興味のない僕は名前くらいしか聞いたことがなかったんだけど。
勇いわく、ルノワールは19世紀から20世紀初頭に活躍したフランス印象派画家の一人らしい。
そして、「グランドジャットの日曜日」はパリ西部のセーヌ川に浮かぶグランドジャット島を舞台に日曜午後の風景を描いた、同年代の作品。こちらは、いつだったか僕も目にした覚えはある。
あれ? でも――
「そう。だから、これはルノワールの作品じゃなくて――」
勇の熱弁は続く。ミステリーだけじゃなく、美術にも相当な思い入れがあるみたいだ。
「へぇ、そうなんだ」
けど、仮にもちゃんと本になっているものだしなぁ……そんな初歩的なミスがノーチェックのままなんてことがあるのだろうか。
――なんて、ついさっき、勇の力説を聞くまでは気が付かなかった僕が言うのもなんだけどさ。
「なんでこんなタイトルなのか、ちょっとした謎だよね」
忠宏は、きらきらと目を輝かせている。
たぶん、この本自体は、ミステリー小説として書かれたわけではないのだろうけれど。アンバランスなタイトルの謎は、僕も気になるところだ。
「そうだな、読んでみたら分かるかもな」
勇もその気のようだ。
こうして僕たちは、ちょっぴりドキドキしながら、手元の本を開いたのだった――
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