転異世界のアウトサイダー 神達が仲間なので、最強です

びーぜろ

文字の大きさ
196 / 486
第八章 フェロー王国動乱編

第249話 ドレークとの戦い⑤

しおりを挟む
 ドレークさんは怒りに任せ〔ゲイボルグ〕を投擲してくる。
 俺の作成したネタ武器〔ゲイボルグ〕の特性は分裂。

 ケルト民族伝承によれば、その穂先は怪魚の骨から造られており、投げると30本の鏃となって相手に降り注ぎ、突くと相手の体内で30本の刺となって炸裂すると言われている。

 俺は〔ゲイボルグ〕を使い捨ての槍と定義するに辺り、投擲すると30本の鏃に分裂するだけでは少し弱いのではないか、そう判断し、投擲するとその1,000倍の 30,000本の鏃に分裂するよう試行錯誤を繰り返し、ロキや土地神、屋敷神の手を借りる事でそれを成し遂げた。

 そんな苦労をして作成した〔ゲイボルグ〕をまさか製作者である自分に向かって投げられるとは……。
 作成した当時はこんな事になるなんて思いもしなかった。

 世の中何が起こるかわからないものだ。

 そうこう考えている内に〔ゲイボルク〕が30,000本もの鏃に分裂し襲い掛かってくる。
 〔ゲイボルク〕は伝承上の武器を模して制作した武器でありながらロキや土地神、屋敷神の力を借りて作成した正しく神器と言っていい性能を誇る使い捨てのネタ武器。

 使い捨てであるが故、拘りに拘って別次元の力を持った武器であるが故に、その力は製作者の一人である俺を以ってしても計り知れない。

 正直、物理・魔法攻撃を無効化する〔影纏〕であの神器クラスの力を持った〔ゲイボルク〕を防げるかは未知数……。というより試した事がない。

 何せこの武器作成にはロキが絡んでいる。
 あのロキの事だ。〔影纏〕を突破する様な力を〔ゲイボルク〕に込めていないとも限らない。

 こんな事なら、作成時に一度試しておけば良かった。

 仕方がない……。というより、こうするより他ない。

 俺は〔影潜〕で自分の影に沈むと、〔ゲイボルク〕をやり過ごす。
 そして俺の居なくなった廃坑内に〔ゲイボルク〕の黒い鏃が降り注いだ。

 ドレークさんが〔ゲイボルク〕を俺に向かって投擲してから十数秒後、影の中から這い出るとそこには夥しい数の鏃が辺り一面を削り尽くしていた。
 流石は神達と共に作った〔ゲイボルク〕。使い捨ての武器とは思えない。とんでもない威力だ。

 周囲を見渡すと、パラパラと上から小石が降ってくる。
 ふと、背後に視線を向けると、俺の背後にあった柱が三本瓦礫の山を造っていた。

 恐らく30,000本に及ぶ〔ゲイボルク〕の鏃が廃坑内を支える柱を根元から削りとってしまったのだろう。
 ドレークさんめ。とんでもない事をしてくれたものだ。

 本来、〔ゲイボルク〕は廃坑内で使う事を想定していない。
 ちゃんと説明書を読んでいれば、〔ゲイボルク〕がこんな所で使っていいものでない事がわかったはずだ。
 思えば〔アイアースの盾〕を使った時も、〔アイギスの盾〕を使った時でさえちゃんと使いこなせている様には見えなかった。説明書をパラ読みして使いこなせる気になった揚句、やっぱり使えませんでした。そんな感じに見える。

「あ、ああっ……。なんて事を……」

 こうなった以上、戦いなんか止めて、さっさとこの廃坑内から逃げた方が良さそうだ。
 既にこの廃坑内を支えている柱の内、四つが瓦礫の山となっている。
 いつ崩れてもおかしくはない。

 俺はドレークさんに視線を向けると、大きな声で話しかけた。

「ドレークさん! こんなくだらない勝負もう止めましょうよ! 見て下さい。この瓦礫を! 元は柱であったこの瓦礫をドレークさんが作り出したんですよ! どーしてくれるんですか! このままじゃ、崩落です。崩落しちゃいますよ! というより、なんで廃坑内でゲイボルクなんて使うんですか! 言っちゃなんですけど、ちゃんと説明書を読んでいるんですか? まさかとは思いますけど、説明書をちょっとパラ読みして使える気になっていたなんて事はないですよね? まさかそんな事ないですよね? ちょっとなんで何も言わないんですか! もしかして説明書すら読んでないんですか? 嘘ですよね。Sランク冒険者で何となく、ギルドマスターのヨルズルさんよりも偉そうな態度を取っているドレークさんが説明書も読まずに踏ん反り返っているなんて、そんな事ないですよね! あっ……」

 よく考えてみれば、ドレークさんは国語能力が弱い。そんな事をヨルズルさんが言っていた。
 もしかしたら本当に国語能力が弱く。武器や防具に添付された説明書が読めなかったのかもしれない。
 それならば、まだ理解する事ができる。

 俺がドレークさんに話しかけていると、何故かヨルズルさんが仲裁に出てきた。

「え、えっと……。ゆ、悠斗君? 彼は……。ドレーク君は元S級冒険者ですよ? 説明書……ですか? 読んでいるに決まっているじゃないですか。ねえ、そうですよねドレーク君?」

 するとドレークさんが肩を震わせている。

『ヨ、ヨルズルさん! ドレークさん絶対、その説明書ってやつ読んでないですよ。空気読んで下さいよ! 今、ドレークさん肩を震わせたじゃないですか! 絶対怒ってますよ。あれ!』

 レイさんが何やらヨルズルさんに話しかけている。
 話し声が小さ過ぎてよく聞こえない。

『ヨルズルさん! 謝って! ドレークさんに謝って下さい! 何を仲裁に入った気になって火に油を注いでくれているんですか!』

『で、でも仕方がないじゃありませんか! どうしろと言うんですこの空気! 大丈夫です。何の話をしているかは全くよく分かりませんでしたが、何かしらの説明書とやらを読んでいないかの話でしょう? ドレーク君の事です。読んでいるに決まっているじゃありませんか!』

 するとここで、沈黙を守っていたマークさんが話に加わった。
 相変わらず話し声が小さ過ぎて良く聞こえないけど……。

『……ヨルズルさん。ドレークさんの武器や防具は商人や冒険者から奪った物だから、恐らく説明書とやらは見ていないかと……』

『な、なんですって!?』

 マークさんに話しかけられたヨルズルさんが驚愕の表情を浮かべている。
 そして、ドレークさんに視線を向けるとドレークさんは怒りの表情を浮かべていた。
しおりを挟む
感想 3,253

あなたにおすすめの小説

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。