15 / 73
第一章 最強呪符使い故郷を追われる
VS借金まみれのジェニファー①
しおりを挟む
階段を降り修練場に足を踏み入れると、借金まみれのジェニファーさんが、剣を片手に持ちボクのことを待っていた。
「よく来たなぁクソガキちゃん? なんでも俺に勝つ算段があるとかないとか……。しかし、そんなことはどうでもいい」
「ええ、その通りどうでもいいことですね。それでは、これよりリーメイの実技試験を行います。リーメイはDランク冒険者のジェニファーを試験官として希望致しました。両名とも準備はよろしいですか?」
受付嬢さんはジェニファーさんの話をバッサリ切り捨てると、準備はいいかと聞いてきた。
当然、よくない。
実技試験の課題を知らないからだ。
「えっと、実技試験ってなにをするんですか?」
「えっ? ジェニファーから聞いていないのですか? 実技試験の試験官としてジェニファーを指定したので、てっきり知ってるものかと……」
「えっと、すいません。知らないです」
受付嬢さんはジェニファーを睨み付けると、咳払いして実技試験の内容を教えてくれた。
「実技試験は、冒険者としての資質を測るため、二回に分けて試験が行われます。一つ目の試験が現役の冒険者を相手とした戦闘試験。二つ目がダンジョン内でのサバイバル能力を見るためのサバイバル試験。今から行われる戦闘試験は現段階の基礎能力を確認するための試験なので、勝つ必要はありません。負けを認めてもサバイバル試験が合格水準にあれば冒険者になることができます。ですので、どうか無理はしないようにして下さい。万一の時は止めに入ります」
「わかりました。説明、ありがとうございます」
なるほど、要は受付嬢さんと試験官であるジェニファーさんに自分の力を見せつければいいのか……。
「……武器や呪符は使っても問題ありませんか?」
「呪符? はい。勿論問題ありませんが……」
「わかりました。それじゃあ、すぐに準備しちゃいますね!」
宙をなぞり亜空間から妖刀ムラマサを取り出すと、呪符を周囲に浮かべ、その中から『身体強化』の呪符を選択すると身体を強化し、刀を斜めに構える。
「お待たせしました。もう大丈夫です!」
「ち、宙から武器を取り出した……? い、いえ、失礼しました。それでは、実技試験を始めます。もう一度だけ申し伝えますが、この試験の目的はあくまでも冒険者としての戦闘能力の有無を確認するものです。これ以上は危険だと判断した場合、すぐに止めさせて頂きます。よろしいですね?」
受付嬢さんはジェニファーさんに視線を向ける。
ボクへの説明というより、ジェニファーさんに対する説明だったようだ。
いや、やり過ぎないようにという注意喚起かな?
「うるせぇなぁ。わかったよ」
ジェニファーさんが剣を構えると、受付嬢さんが手を高く上げる。
「それでは、戦闘試験。始め!」
試験開始の合図と共に、ジェニファーさんが向かってくる。
「ぐははははっ! ぶち殺してやるぜぇ。クソガキちゃん!」
言ってることが中々、物騒だ。
ボクが思うに殺す気で行くから、そっちも殺す気で来いとそういうことだろう。
流石は冒険者ギルドの戦闘試験。実践的だ。
「わかりました! それじゃあ、こっちも殺す気で行きますねっ!」
「はあっ? なにを言って……」
ジェニファーさんの言葉を待たずして開合を唱える。
『開孔せよ。ムラマサ』
すると妖刀ムラマサの刀身から黒い瘴気が湧いてきた。
『殺す気で』とは言ったけど、本当に死なれたら試験にならない。
だからボクは、ジェニファーさんの足元に向かって妖刀ムラマサをゆっくり薙いだ。
その瞬間、『ズンッ!』といった音と共に修練場が大きく揺れる。
「ほえっ?」
突如、足元に発生した深い裂け目。
勢いよく駆け出したジェニファーは、その裂け目に思い切りダイブした。
壁はほぼ垂直であるため、落下すれば引っかかることもなく真っ直ぐと下へ落ちていく。
とはいえ、威力は控えめにしたから、そこまで深くはないはずだ。
「ぎゃあああああっ!? ぐべっ??」
叫び声を上げ、五メートルほど落下したジェニファーは、おおよそ、人が出しちゃいけない声を出し地面の底に激突した。
「そ、そこまでっ! 誰かっ、誰かロープを持ってきてっ!」
試験官であるジェニファーさんが裂け目に落下し、気絶していることを確認した受付嬢さんはこれ以上の試験は不可能と判断し終了を宣言する。
多くの人が集まり、なんだか大事になってきた。
裂け目から救出されたジェニファーさんは気絶したまま動かない。
なんなら、受け身も取れず裂け目に落下した為、ボロボロだ。
もしかしたら、骨とか折れているかもしれない。
ジェニファーさん。大丈夫だろうか?
「えっと、リーメイ君? ちょっといいかしら?」
担架で運ばれていくジェニファーさんを横目に、受付嬢さんが声をかけてくる。
「はい。なんでしょうか?」
「えっと、先に戦闘試験の結果だけ伝えるわね。戦闘試験は合格よ。問題は次に行うサバイバル試験についてなんだけど……」
受付嬢さんの歯切れが悪い。一体どうしたというのだろうか?
「よく来たなぁクソガキちゃん? なんでも俺に勝つ算段があるとかないとか……。しかし、そんなことはどうでもいい」
「ええ、その通りどうでもいいことですね。それでは、これよりリーメイの実技試験を行います。リーメイはDランク冒険者のジェニファーを試験官として希望致しました。両名とも準備はよろしいですか?」
受付嬢さんはジェニファーさんの話をバッサリ切り捨てると、準備はいいかと聞いてきた。
当然、よくない。
実技試験の課題を知らないからだ。
「えっと、実技試験ってなにをするんですか?」
「えっ? ジェニファーから聞いていないのですか? 実技試験の試験官としてジェニファーを指定したので、てっきり知ってるものかと……」
「えっと、すいません。知らないです」
受付嬢さんはジェニファーを睨み付けると、咳払いして実技試験の内容を教えてくれた。
「実技試験は、冒険者としての資質を測るため、二回に分けて試験が行われます。一つ目の試験が現役の冒険者を相手とした戦闘試験。二つ目がダンジョン内でのサバイバル能力を見るためのサバイバル試験。今から行われる戦闘試験は現段階の基礎能力を確認するための試験なので、勝つ必要はありません。負けを認めてもサバイバル試験が合格水準にあれば冒険者になることができます。ですので、どうか無理はしないようにして下さい。万一の時は止めに入ります」
「わかりました。説明、ありがとうございます」
なるほど、要は受付嬢さんと試験官であるジェニファーさんに自分の力を見せつければいいのか……。
「……武器や呪符は使っても問題ありませんか?」
「呪符? はい。勿論問題ありませんが……」
「わかりました。それじゃあ、すぐに準備しちゃいますね!」
宙をなぞり亜空間から妖刀ムラマサを取り出すと、呪符を周囲に浮かべ、その中から『身体強化』の呪符を選択すると身体を強化し、刀を斜めに構える。
「お待たせしました。もう大丈夫です!」
「ち、宙から武器を取り出した……? い、いえ、失礼しました。それでは、実技試験を始めます。もう一度だけ申し伝えますが、この試験の目的はあくまでも冒険者としての戦闘能力の有無を確認するものです。これ以上は危険だと判断した場合、すぐに止めさせて頂きます。よろしいですね?」
受付嬢さんはジェニファーさんに視線を向ける。
ボクへの説明というより、ジェニファーさんに対する説明だったようだ。
いや、やり過ぎないようにという注意喚起かな?
「うるせぇなぁ。わかったよ」
ジェニファーさんが剣を構えると、受付嬢さんが手を高く上げる。
「それでは、戦闘試験。始め!」
試験開始の合図と共に、ジェニファーさんが向かってくる。
「ぐははははっ! ぶち殺してやるぜぇ。クソガキちゃん!」
言ってることが中々、物騒だ。
ボクが思うに殺す気で行くから、そっちも殺す気で来いとそういうことだろう。
流石は冒険者ギルドの戦闘試験。実践的だ。
「わかりました! それじゃあ、こっちも殺す気で行きますねっ!」
「はあっ? なにを言って……」
ジェニファーさんの言葉を待たずして開合を唱える。
『開孔せよ。ムラマサ』
すると妖刀ムラマサの刀身から黒い瘴気が湧いてきた。
『殺す気で』とは言ったけど、本当に死なれたら試験にならない。
だからボクは、ジェニファーさんの足元に向かって妖刀ムラマサをゆっくり薙いだ。
その瞬間、『ズンッ!』といった音と共に修練場が大きく揺れる。
「ほえっ?」
突如、足元に発生した深い裂け目。
勢いよく駆け出したジェニファーは、その裂け目に思い切りダイブした。
壁はほぼ垂直であるため、落下すれば引っかかることもなく真っ直ぐと下へ落ちていく。
とはいえ、威力は控えめにしたから、そこまで深くはないはずだ。
「ぎゃあああああっ!? ぐべっ??」
叫び声を上げ、五メートルほど落下したジェニファーは、おおよそ、人が出しちゃいけない声を出し地面の底に激突した。
「そ、そこまでっ! 誰かっ、誰かロープを持ってきてっ!」
試験官であるジェニファーさんが裂け目に落下し、気絶していることを確認した受付嬢さんはこれ以上の試験は不可能と判断し終了を宣言する。
多くの人が集まり、なんだか大事になってきた。
裂け目から救出されたジェニファーさんは気絶したまま動かない。
なんなら、受け身も取れず裂け目に落下した為、ボロボロだ。
もしかしたら、骨とか折れているかもしれない。
ジェニファーさん。大丈夫だろうか?
「えっと、リーメイ君? ちょっといいかしら?」
担架で運ばれていくジェニファーさんを横目に、受付嬢さんが声をかけてくる。
「はい。なんでしょうか?」
「えっと、先に戦闘試験の結果だけ伝えるわね。戦闘試験は合格よ。問題は次に行うサバイバル試験についてなんだけど……」
受付嬢さんの歯切れが悪い。一体どうしたというのだろうか?
2
あなたにおすすめの小説
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~
テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。
しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。
ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。
「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」
彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ――
目が覚めると未知の洞窟にいた。
貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。
その中から現れたモノは……
「えっ? 女の子???」
これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。
死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった!
呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。
「もう手遅れだ」
これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい
夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。
彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。
そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。
しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる