35 / 73
第一章 最強呪符使い故郷を追われる
サバイバル試験⑲(禁忌的荒魂、クッコロ)
しおりを挟む
オークロードの案内で洞窟内に入ると、洞窟の中から悲鳴と嬌声が聞こえてくる。
この洞窟には、ダンジョンコアが安置してあったはず。
おそらく、オークロードに取り憑いている荒魂は、洞窟の奥に安置してあるダンジョンコアを介してなにか良からぬことを企んでいるのだろう。
「豚ちゃん。『命令』だよ。誰か、洞窟の奥の様子を先行して見てきてくれないかな?」
「フゴッ、フゴッ(わかりました……)」
「うん。よろしくね……」
『命令』した結果、一体のオークロードが先行して、奥の様子を見に行ってくれることになった。オークロードが返事代わりに『フゴッ』と鳴く。
「それじゃあ、ボク達はここで待機。先行した豚ちゃんの報告を待とうか」
「「フゴッ、フゴッ」」
しばらくの間、その場で待機していると、先行したオークロードが戻ってくる。
「フゴッ、フゴッ(人間の前でゴブリンキングがゴブリナと交尾してました)」
「えっ? 人間とゴブリンキングがいた?」
最後の方、単語がよく聞き取れなかったけど、なんで人間とゴブリンキングが洞窟の奥に……。
ここは冒険者ギルドが管理するダンジョン。
つまり、洞窟の奥にいる人間というのは、まず間違いなく冒険者ギルドの関係者だろう。そして、ゴブリンキングは恐らくボクが『隷属』したゴブリンキングに違いない。
『隷属』中のオークロード先導の下、洞窟の奥へと進んでいくと、ボク達の気配を察知したのかゴブリンキング達の嬌声が段々静かになっていく。
洞窟の奥に足を踏み入れると、そこには顔を紅潮させたゴブリンキングとゴブリナ、そして、目を瞑り悲鳴を上げる人達がいた。
「あれー? 皆さん。なにをやってるんですかー?」
とりあえず、そう声をかけるとゴブリンキング達がボクに対して敬礼し、冒険者と思わしき人達は唖然とした表情を浮かべる。
それにしても、ゴブリンキング達はここで何をしていたのだろうか?
オークロードのように荒魂に操られている様子はないように思える。
首を傾げて様子を窺っていると、冒険者と思わしき人達がポツリと『助かったのか?』と呟いた。
「えーっと、そちらに座っている皆さんは冒険者さんで間違いないですか?」
「あ、ああっ、そうだ。君達を助けにきた……つもりだったんだが……」
冒険者さんが、なんとも言い辛そうにそう呟く。
「……助けてくれ。トレントの毒で身体が動かないんだ」
「あ、ああ、そうなんですか……わかりました」
助けてくれとは、本末転倒の様な気がしないでもないけど、仕方がない。
宙をなぞると亜空間から『治癒』と『解毒』の呪符を取り出す。
「……それじゃあ、動かないで下さいね」
『治癒』と『解毒』の呪符を冒険者さん達に貼ると、冒険者さん達は瞬時に回復する。
「す、凄いな、これは……」
「ああ、その呪符、自家製の呪符なんですよー。もし良かったらいかがです? 格安でお譲りしますよ?」
元々、この呪符はアクバ王国にいた頃、お守り代わりに流通していたもの。
なぜか、貼って使う人はあまりいなかったけど、一般的に出回っているものだ。
「い、いいのかいっ!?」
「ええっ、でもその前に……」
冒険者さん達と話をしている内に、どんどん、オークロード達に取り憑いている荒魂の力が増していくのを感じる。
危険を感じたボクは宙をなぞり亜空間から呪符を取り出すと、『魔力増強』と『身体強化』を身体に付し、ゴブリンキングと冒険者さん達の前に『守護』の呪符を展開した。
その瞬間、洞窟の奥に安置されていたダンジョンコアが黒い輝きを放つと、オークロードから荒魂が抜け出し、黒い人型の影が顕れる。
「あ、あれは、まさかっ……!?」
荒魂のアラミーちゃんの悪友にして、まだ十代前半のボクを性的快楽に誘おうとする禁忌的荒魂――クッコロちゃんだ。
これは本格的にあのダンジョンの封印が解かれたと見て間違いないかもしれない。
アラミーちゃんよりもより強固に……ガチガチに封印したはずの倫理観皆無の荒魂、クッコロちゃんまで解放されているだなんて、いま、一体なにが起こっているんだ……。
『クコクコクコクコッ! マタ会エタネ! マタ会エタッ!』
「ボクは会いたくなかったよ。クッコロちゃん……」
クッコロちゃんの厄介な所、それは……近くにいる人達を性的快楽に誘おうとする所だ。
周りを見ると、オークロードやゴブリンキングにゴブリナ、そして冒険者達の様子がおかしい。みんな、ガクガク震え悶えている。
ゴブリンキングは、ゴブリナに対して劣情を抱き、オークロードも同じく目をギラギラさせている。対照的に、冒険者達はゴブリナを見て涙を流し、嘔吐しながら悶えていた。
「げ、げぼぉっ! ……ゴ、ゴブリナに劣情を抱くなんて、俺は自分自身が許せない……殺せよっ! いますぐ殺してくれよぉ!」
「ぐうあっ! 目がっ、目がぁぁぁぁ! ゴブリナが可愛い女に見えるっ!? なんでだよ。なんでなんだよっ!」
「殺せって言ってるだろう!! こんちくしょうがぁぁぁぁ!!」
――と、いったように涙を流し叫びながら……。
正直、見るに堪えない。
荒魂に対する抵抗力を持たない人ほど、荒魂の気持ちに流されやすい。
多分、冒険者さん達はゴブリナに対して劣情を抱いてしまった自分が許せないのだろう。自分でそう叫んでいたし、血の涙を流しながら、抵抗を試みている。
この洞窟には、ダンジョンコアが安置してあったはず。
おそらく、オークロードに取り憑いている荒魂は、洞窟の奥に安置してあるダンジョンコアを介してなにか良からぬことを企んでいるのだろう。
「豚ちゃん。『命令』だよ。誰か、洞窟の奥の様子を先行して見てきてくれないかな?」
「フゴッ、フゴッ(わかりました……)」
「うん。よろしくね……」
『命令』した結果、一体のオークロードが先行して、奥の様子を見に行ってくれることになった。オークロードが返事代わりに『フゴッ』と鳴く。
「それじゃあ、ボク達はここで待機。先行した豚ちゃんの報告を待とうか」
「「フゴッ、フゴッ」」
しばらくの間、その場で待機していると、先行したオークロードが戻ってくる。
「フゴッ、フゴッ(人間の前でゴブリンキングがゴブリナと交尾してました)」
「えっ? 人間とゴブリンキングがいた?」
最後の方、単語がよく聞き取れなかったけど、なんで人間とゴブリンキングが洞窟の奥に……。
ここは冒険者ギルドが管理するダンジョン。
つまり、洞窟の奥にいる人間というのは、まず間違いなく冒険者ギルドの関係者だろう。そして、ゴブリンキングは恐らくボクが『隷属』したゴブリンキングに違いない。
『隷属』中のオークロード先導の下、洞窟の奥へと進んでいくと、ボク達の気配を察知したのかゴブリンキング達の嬌声が段々静かになっていく。
洞窟の奥に足を踏み入れると、そこには顔を紅潮させたゴブリンキングとゴブリナ、そして、目を瞑り悲鳴を上げる人達がいた。
「あれー? 皆さん。なにをやってるんですかー?」
とりあえず、そう声をかけるとゴブリンキング達がボクに対して敬礼し、冒険者と思わしき人達は唖然とした表情を浮かべる。
それにしても、ゴブリンキング達はここで何をしていたのだろうか?
オークロードのように荒魂に操られている様子はないように思える。
首を傾げて様子を窺っていると、冒険者と思わしき人達がポツリと『助かったのか?』と呟いた。
「えーっと、そちらに座っている皆さんは冒険者さんで間違いないですか?」
「あ、ああっ、そうだ。君達を助けにきた……つもりだったんだが……」
冒険者さんが、なんとも言い辛そうにそう呟く。
「……助けてくれ。トレントの毒で身体が動かないんだ」
「あ、ああ、そうなんですか……わかりました」
助けてくれとは、本末転倒の様な気がしないでもないけど、仕方がない。
宙をなぞると亜空間から『治癒』と『解毒』の呪符を取り出す。
「……それじゃあ、動かないで下さいね」
『治癒』と『解毒』の呪符を冒険者さん達に貼ると、冒険者さん達は瞬時に回復する。
「す、凄いな、これは……」
「ああ、その呪符、自家製の呪符なんですよー。もし良かったらいかがです? 格安でお譲りしますよ?」
元々、この呪符はアクバ王国にいた頃、お守り代わりに流通していたもの。
なぜか、貼って使う人はあまりいなかったけど、一般的に出回っているものだ。
「い、いいのかいっ!?」
「ええっ、でもその前に……」
冒険者さん達と話をしている内に、どんどん、オークロード達に取り憑いている荒魂の力が増していくのを感じる。
危険を感じたボクは宙をなぞり亜空間から呪符を取り出すと、『魔力増強』と『身体強化』を身体に付し、ゴブリンキングと冒険者さん達の前に『守護』の呪符を展開した。
その瞬間、洞窟の奥に安置されていたダンジョンコアが黒い輝きを放つと、オークロードから荒魂が抜け出し、黒い人型の影が顕れる。
「あ、あれは、まさかっ……!?」
荒魂のアラミーちゃんの悪友にして、まだ十代前半のボクを性的快楽に誘おうとする禁忌的荒魂――クッコロちゃんだ。
これは本格的にあのダンジョンの封印が解かれたと見て間違いないかもしれない。
アラミーちゃんよりもより強固に……ガチガチに封印したはずの倫理観皆無の荒魂、クッコロちゃんまで解放されているだなんて、いま、一体なにが起こっているんだ……。
『クコクコクコクコッ! マタ会エタネ! マタ会エタッ!』
「ボクは会いたくなかったよ。クッコロちゃん……」
クッコロちゃんの厄介な所、それは……近くにいる人達を性的快楽に誘おうとする所だ。
周りを見ると、オークロードやゴブリンキングにゴブリナ、そして冒険者達の様子がおかしい。みんな、ガクガク震え悶えている。
ゴブリンキングは、ゴブリナに対して劣情を抱き、オークロードも同じく目をギラギラさせている。対照的に、冒険者達はゴブリナを見て涙を流し、嘔吐しながら悶えていた。
「げ、げぼぉっ! ……ゴ、ゴブリナに劣情を抱くなんて、俺は自分自身が許せない……殺せよっ! いますぐ殺してくれよぉ!」
「ぐうあっ! 目がっ、目がぁぁぁぁ! ゴブリナが可愛い女に見えるっ!? なんでだよ。なんでなんだよっ!」
「殺せって言ってるだろう!! こんちくしょうがぁぁぁぁ!!」
――と、いったように涙を流し叫びながら……。
正直、見るに堪えない。
荒魂に対する抵抗力を持たない人ほど、荒魂の気持ちに流されやすい。
多分、冒険者さん達はゴブリナに対して劣情を抱いてしまった自分が許せないのだろう。自分でそう叫んでいたし、血の涙を流しながら、抵抗を試みている。
2
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~
テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。
しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。
ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。
「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」
彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ――
目が覚めると未知の洞窟にいた。
貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。
その中から現れたモノは……
「えっ? 女の子???」
これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい
夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。
彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。
そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。
しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる