ひかれ合う!?

あかりんりん

文字の大きさ
1 / 1

ひかれ合う!?

しおりを挟む
それは夏の長い長い猛暑がやっと終わり始めたと思ったら、すぐに冬の寒さがやってきた11月の中旬の出来事だった。

あれ?今年って秋あったっけ?

夏の半袖短パンからすぐにパーカーと長ズボンになっていた。
ロンTやオシャレジャケットの登場期間はあまりにも短い。

まるでセミだ。

3年も4年も幼虫として地面に埋まっていて、成虫になって外に出て、夏が来たぜぇぇぇぇっ!!、と叫んで交尾してカラスに食べられる晩年の1週間である。
あるいは都会のJKや女性配信者のスカートか。
あまりにも短い。

そんな寒い冬の日の22時を回った頃、僕は手袋をしてパーカーのフードも被って繁華街へ歩き出す。
今夜は友人が働いているJapanese HIPHOP BERで音楽イベントがあるので聴講するためだ。
BERに到着する時には、お店から重低音の音楽が聴こえた。

これが心地良く思えるが、中にはこの重低音で腹痛になってしまう友人も少なからず居た。
僕自身は人をDISる(悪口)アングラなラッパーは全然知らず、テレビに出ているような韻を踏んで自分を鼓舞したり応援したりするラッパーが好きである。
世の中にはたくさんの言霊があり、それらを韻を踏んでメッセージを伝える面白さがあると思っている。

お店に入ると重低音はますます大きく響き、会話はほとんど聞こえないようになる。これがまた良い。
入場チケットを購入して働いている友人にビールを注文する。
独りでソファーにもたれかかってビールを飲みながら、初めて聞くHIPHOPの歌詞を心で反芻する。
なるほど、こういう韻の踏み方もあるのか。面白い。

心地良い時を独りで1時間ぐらい過ごしただろうか。
ビールのお代わりをもらいにカウンターへ注文しに行こうとすると、隣に見た事がある女性がいた。
先日知り合った、こことは別のBERを経営しているママだった。
こないだはどーも、よく来られるんですか?
などと他愛もない会話をして、また独りソファーへ戻る。

するとママが別の男性と話をしてから、2人で僕の所へやってきて僕の出身校を尋ねる。
僕は〇〇中学校ですよ、と答えると、その男性も同じ学校で、歳は一つ上であることが分かった。

やはり田舎の世間は狭い。

今日だって独りで行動したくてフードを被って歩いていたのに知り合いにあってしまった。
自分で言うのもなんだが、僕は基本的に陽キャで人と話す事が好きだが、たまには独りになりたい時がある。
でも田舎ではそれが許されない。
行くとこ行くとこ、かなりの高確率で知り合いに会ってしまう。
例えるなら辛いラーメンを食べた後、約8時間後にお腹が痛くなってしまう確率に似ている。
あるいは、野良猫を撫でてやろうとして近づくが逃げられてしまう確率かもしれない。

そんな高確率で、僕は出身校の同じ一つ年上の男性と初めて会うことになった。
だが、爆音の中であまり会話は出来ないものの、僕の趣味の一つである小説が、その男性も好きであることを知る。
さらに、その男性も僕と同じように小説を書いて投稿しているということを知る事になる。

これはまさに奇跡であった。

これまでも、小説を好きと言う男女は出会ったことがあったが、投稿している人は初めてで、それがこの寒い日のJapanese HIPHOPイベントで、たまたま会ったママさんの知り合いとして出会うなんて、それは本当に奇跡的な確率であろう。
例えるなら小学校の時のお祭りの金魚が、未だにスクスク育って大物になっている友達がクラスに1人ぐらいいる確率に似ているかもしれない。
あるいは、都会の巨大テーマパークで田舎の知り合いに会う確率かもしれない。

同じ小説好き同士、ひかれ合って出会えたのだと思うと、今日のHIPHOPイベントに参加して良かったと思えた、寒い寒い11月の日のことであった。

以上です。
最後まで読んでいただきどうもありがとうございました。
出会いは奇跡ですね。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

忘れるにも程がある

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたしが目覚めると何も覚えていなかった。 本格的な記憶喪失で、言葉が喋れる以外はすべてわからない。 ちょっとだけ菓子パンやスマホのことがよぎるくらい。 そんなわたしの以前の姿は、完璧な公爵令嬢で第二王子の婚約者だという。 えっ? 噓でしょ? とても信じられない……。 でもどうやら第二王子はとっても嫌なやつなのです。 小説家になろう様、カクヨム様にも重複投稿しています。 筆者は体調不良のため、返事をするのが難しくコメント欄などを閉じさせていただいております。 どうぞよろしくお願いいたします。

もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?

四季
恋愛
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

処理中です...