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024:結界

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 撤収の合図だけでなく、迷宮内のどこからでもシロに伝えようと思いながら「考える」ことで意志の疎通が可能な事に気がついた。というか、ハッキリ認識していなかっただけで、これまで既にやってたわ。

 シロは最初から思念で通話してきていたのだがら、気付よ、俺ってとこだろう。

 まあ、ろくな答えは返ってこないんだが。一人で探索してても寂しくないね! ってなもんだろう。

 一方、システムさんからの「天の声」は超重要だ。

----エクストラボーナスを確認。奮闘経験により、クリア時入手階層ボーナスが倍加されます----
 
 こんなこともあるのか! 白い部屋、迷宮機能集中総操作室に戻ってきた時点で、右手の欠損部分も元に戻っている。噴き出した血が防具に飛び散っていたのも、【洗浄】で綺麗になっている。激闘の証拠は跡形もない。
 というか、やばいな……加算……じゃなくて、倍加か。これは階層ボーナス分が倍になったってことなんだよな。

 ……。

 つまり、アレだ、指の肉を食い千切れられるような激闘を繰り広げると、それが評価されて、タダでさえ美味しい階層ボーナスが倍加されちゃうと。そりゃスゲぇ! いや死ぬから! それ、下手すると死ぬから! ヤバイから!

「シロ、命が危なくなったら俺の命令関係無く、強制帰還って可能?」

「無理なのよぅ。迷宮創造主マスターに帰還の意思が無かったら発動しないのよぅ」

「つまり、初手で一撃くらって意識を失ってしまったら、どうにもならないってこと?」

「なのよう。死ぬのよぅ。そして、このダンジョンも死ぬのよぅ」

 ……何という矛楯。やばいじゃん……。

 正直、心のどこかで、この扉のこちら側、迷宮創造というシステムはゲーム世界のようなノリで考えていた。

 もう少し真剣に……考える必要があると思ったんだけど……まあでも、出来る事と出来ないことがあるわけで。自分の範囲でがんばろう。

「あと、追加情報なのよぅ。部位欠損や死亡寸前等の重傷時には帰還時の【回復】使用の際、DPが消費されるのよぅ。その消費量は症状の度合いと迷宮創造主マスターのレベルで変動するのよぅ」

「レベルが高いほど?」

「【回復】にかかるDPは多くなるのよぅ」

 まあ、そりゃそうだよな。それくらいのリスクは当然か。

「因みにとんでもないDPがあれば蘇生も可能なのよぅ」

「なんだソレ。すごいな」

 DP貯めよう。怪我せず、安全に、リスクを負わずに貯めよう。大事だな。貯金。

 特訓だ! 時間の感覚がズレてしまうが、引きこもろうと思えば、正に無限に時間はあるのだ。

 ということで、一心不乱で迷宮攻略を繰り返し始めた。

 効率は上がっている。ハズだ。入手出来ている経験値の明確な表示は無いのだが、なんとなくだけど実感出来る。階層をクリアするたびに、もの凄いパワーが入り込んできているのが分かるのだ。

 シロは「レベルアップはもの凄く時間がかかるのよぅ。レベル1にはすぐなれるけど、レベル2になるのは大変なのよぅ。さらにちょっとすると、一つレベルを挙げるのに数年かかるのは当たり前なのよぅ」と言っていたので覚悟していたのだが、レベル3になるのはあっという間(当社比)だった。

----レベルアップ----

「おかえりなのよぅ」

「もうレベル3か。なんか、レベル2の方が大変だったな……」

「それはそうなのよぅ。各種ボーナスは大きいのよう。さらに迷宮創造主マスターは特別なのよう。だから速いのよぅ」

「何でかは判らないんだよな」

「そうなのよぅ」

 ちっ。相変わらず中途半端な説明機能だな。とはいえ、俺が特別っていうことは、多分、何かユニークスキルがあるんだろうか。

名前 村野久伸むらの ひさのぶ
天職 迷宮創造主ダンジョンマスター
階位 3

 なんだよ、それ! 表示されているステータスの内容は、階位=レベル2の時と変わらないじゃん! 足りないよ! パラメータとかスキルとかの表示は無いのかな?

 その時、頭に浮かんだのが【結界】…… という単語だった。ん? なんだこれ? 

「シロ、頭に【結界】っていうのが思い浮かんだんだけど……何か知ってる?」

「しらな「それは天職のスキルです。ステータスに表示するには高レベルが必要ですが、スキルは使える様になっているということです。というか、本来、スキルは何となく理解し使える様になるモノです」……知ってたのよぅ」

 そうなのか。っていまいち良く判らないけど、とりあえず、階位=レベル3で【結界】のスキルを覚えたらしい。

【結界】:自らの身の回りにブロック状の結界を張る。強度はレベルに比例する。……だそうだ。

 ここまで剣を振り回すことしか出来なかった自分に、戦闘手段がひとつ増えたということだ。これ、単純に……盾変わりに使えるよな。

「【結界】?」

 思い浮かべたのは、目の前の大テーブルにあるブロック。その一番基本となる長方形のブロックだ。

 ?????

「シロ、これって……あれ?」

 あ。あるな。透明なブロックがある。目の前に。

「透明のブロックって自分でも認識しにくいよな。これ、色付けられないのかな?」

 例えばそのブロックと一緒の白とか……。

 と、思った瞬間に、目の前の結界ブロックが白く色付いた。

「おお~こりゃ便利」

【結界】×5……と想像した瞬間に、目の前に結界ブロックが5つ積み重なって出現した。

「心の中で思うだけでも発動するのか。便利だな。無詠唱とかそういうやつなのかな?」

「スキルだからなのよぅ。魔術は呪文がいるのよぅ。無詠唱にするには凄く大変なのよぅ」

 お、おう。そうなのか……。というか、いきなり説明。その手のテキストが追加されたのか? シロよ……。  

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