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062:【反撃】

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 全身真っ黒だ。よく見れば見るほど厨二。素敵だ。さっきのは完全に壁側に押しつけたので返り血もほぼ浴びてない。

 現実世界で購入した各種プロテクターに身を包み、その上から「黒赤布のコート」を装備している。全身真っ黒だ。

 ブーツは「疾走の靴」。

 レベルアップした身体能力と装備の性能で、今の俺は時速100㎞以上で走ることが出来る様だ。
 何故それが判るかというと、高速道路を走っている自動車を簡単に追い抜けているからだ。すげえ。

 で。

 現在、俺の家を襲撃して逃げだしたワゴン車を追いかけている。絶賛疾走中だ。

 ある意味東京でこんな派手な移動をしていても問題無いのは、全身黒装束で、身元不明に見えるからってだけじゃない。

 大都市近辺に配備されている監視カメラの数は異常に多い。特にオービスとかNシステムに付随する監視カメラの数はとんでもない。海外の関係者から、日本の警察の盗難車などの車両捜査の優秀さはとんでもないと何度も聞いたし。

 で。そんな優秀な目を気にしなくていいのは。

【隠形】のおかげだ。

 これは、人の認識を甘くする効果があるようで、目の前にいるのになぜか「気付かなく」なる。
 効果は、自ら解除するまで。又は戦闘時なら攻撃を仕掛けた時に解除される。つまり、戦闘しなければ長時間(要検証)、効果が継続するのだ。使い勝手いい。
 オークなどの強力な魔物を前にしても問題無く使えたので、人前でも効果は発揮するハズだ。

 スゴイのは映像、監視カメラのムービーファイルからもぼやけて読み取れなくなること。まあ、黒い人影っぽい何かは映るので「何かいる」と気付かれてしまうけど。

 なので、こうして高速道路を堂々と駆けていても何の心配も無い。
 本当に姿を消したいときは、「姿隠しの指輪」を使ってしまえばいいし。

 背には「黒トレントの六角棒」を背負っている。さっき……。

ドッパン!

 と人体破壊を行ったのはこの棒だ。横に一振りしただけでああなったなぁ。

 あの絵と音が頭を離れない。リフレインがスゴイ……が。でも。うん、後悔はしていない。
 
 高速を降りたワゴン車が目的地に着いたようだ……結構大きな工場跡だろうか。門の中に入った。

 深夜の廃工場って怖いな。なんとなく。

 いや、俺の方が怖いか……。黒いし。

 工場跡、中には……五十名以上。

 人数は揃えたのか……っていうか、これ、アレか、松山さんたちも同時に拉致する作戦だったのかな。さすがに多いしな。
 ああ、そうか。俺に対する人質にする予定だったとか? ……判りやすいな。

 チンピラ以下なのは、カラーギャングだかの残党か? 
 
 偉そうなのが……二人。工場の二階部分……一階を見下ろせるような部屋にいる。

 あとは全部ザコだな。拳銃……を持ってるのは何人くらい居るんだろう? そんなにいない?
 あれ? それにしてはさっき、ごっついスナイパーライフル設置してたよね。
 こっちの火器装備具合と釣り合いが取れない気がするんだけど。それこそ、機関銃とかあっても驚かなかったのに。

 と。そこまで考えて思い出した。

 日本では銃の所持がもの凄く厳しいんだった。さっきのライフルがレアなだけで、この手の暴力団の構成員全員が銃を装備しているなんて事無いんだよな。

 現に、やつらの手や周囲にあるのは、さっき、自宅を襲撃した時に持っていた、ハンマーや日本刀、バット。鉄パイプ、角材みたいなのを持ってるヤツもいるか。

 現在、襲撃犯のリーダーっぽいのが偉そうな二人に報告をしている様だ。

 かなり大きな声で話しているのか、若干音が聞こえてくる。
 さらに、集中すると……音が鮮明になる。これも【気配】やレベルアップの効果なのかな。

「兄貴、申し訳ありません!」

「土下座しててもわからねぇよ。説明しろや」

「すいません! 失敗しました。何故か殴っても蹴っても家に入れなくて」

「なんだそりゃ」

「オダが言うには、なんか、バリアーみたいなのがあるって」

「んじゃそりゃ」

「ですよね……ですが、本当にそんな感じで。塀をカバーするみたいに透明な固い膜があるというか」

「ああ?」

「あ、いやでもおかしいんですって。ヤツの家に入ろうとすると、透明の壁に阻まれて。それを打ち壊して入ろうとしたんですが、ハンマーやバットで殴っても反応無くて」

「どういう意味や」

「そのままですって。で、殴ったら殴ったで……その……音がしないんす」

「?」

「その、透明な壁に向かってこれで何度も殴りつけたんですが、破れるとか破れないとか以前に、ガンとか、ゴンとかの音がしないんす、ありゃおかしいですよ、何かやばいす」

 うんうん、そうだねー。そうだよねー。やばいよねー。

 とりあえず。この工場跡をそのヤバイヤツ、自宅の様に「正式」で隔離した。俺以外出入り出来ない様に。拒絶するように設定する。

 これでもう、ヤツラに逃げ場はない。

 そう。反省した。俺はもの凄く反省したのだ。

 この世界にも、許してはいけないレベルのヤツラが沢山いる。そして、そいつらは、粉々に砕いても問題無いと判断した。

 勝手に。うん、勝手にやらせてもらおう。レベルアップした俺の力を「どう使おうと」問題無いと天の声さんも言ってたしな。

グボッ!

 さっきと同じ様に……「黒トレントの六角棒」を横に振り抜いた。実はスピードは少々緩めた。
 なので二人。大きく空を飛んだ。引っかかってその辺にたむろしていた数人も転がった。

「な!」

「ああ!」

「なんだ?」

「あ、なんだ、おめぇ!」

 遅いよ。

ガポ

 今度は、そう言った口、首から上が吹き飛ぶ。

「なんじゃーー!」

 いきなりの襲撃に戸惑ったのか、集まっていた数十名が武器を取った。ああ、今から総攻撃でもしようと集まっていたってことなのかな。
 少人数で攻めて、「正式」に跳ね返されて帰ってきたから、大人数で、か。

 まあ、現場からの報告がワケ判らない上に、自分たちが襲撃されるとか思っても無いよね。どう考えても。

 こちらとしては、こうして一カ所に集ってくれていたのなら、それはそれでありがたい。

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