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074:立体機動

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 身が軽い。ひょろ長い……いや、身長はそれほどでもないか。175センチくらいだろうか。妙に細目の身体。両手にナイフ。しかも、右手が長めで……左手のがちょっと湾曲しているタイプだ。

 これ、投げられるヤツじゃないかな? 

 最近、武器を検索したりしてたから見たことがあるぞ。使いにくそうだから買わなかったけど。 

 転がって立ち上がった瞬間に、再度向かってくる。



 斜め右に飛んで……さらに、壁を蹴って、斜めに斬り込み、さらに踏み込んで逆に斬り上げる。身体の回転を生かして、腕の長さとナイフの刀身の差を上手く使った素早い一撃……いや、瞬時に三撃まで繰り出してきた。

ゴツ

 とりあえず、さすがにアレを避けながら力の入った一撃は加えられなかった。片手だけの、軽い突きを、三撃目が繰り出されたその直後の脇へ当てる。

 吹っ飛んだ短パンは壁まで飛んだ。

 いや、これ、自分から飛んでるな……。ダメージはかなり押さえられたハズだ。
 それでも、Tシャツが裂けてあばら辺りが凹んだ感じになっているので、ダメージは受けていると思うけど。
 
 そうか……人間でもここまで敏捷性を高められるんだな……。こいつも雇われた系なんだろうか? 
 用心棒とか、そういう感じ? まあでも、確かに、青ジャージもコイツもなんとなく似た臭い「気配」がする。
 具体的に言えば……こちらに対する悪意は薄い。だけど、興味というか……戦う事に対する執着心が強い。さらに……何となくだけど……独特の臭いがする。とりあえず、これを死臭としておこう。

 覚えておこう。

 今後、プロの殺し屋とか傭兵を判別できると便利だろうし。

ガガガッ

 こちらが防戦からの反撃しかしない、と読んだのか。ちょっとしつこく攻撃を仕掛けてくるようになった。うーん。
 プロレスしてただけなんだけどなぁ。その辺の実力差を理解出来ないタイプか……。

 では、こちらも、容赦なく行くとしよう。

 実を言えば……動きの素早い敵、さらに立体機動を使いこなして襲いかかる敵は……慣れている。ソードスケルトンの方が何倍も早い。狭い部屋でのグレーウルフの方が立体機動も複雑だ。さらに、数匹の群れで襲いかかる不規則な連続技は「人間の身体」をしている短パンとは比べようも無い。

「ブロック」を配置する。

ゴッ!

 スゴイ音がして、自らの力で食い込み、撃ち落とされて、床に叩きつけられる。
 
 これだから、勘違い、戦闘中に一方的に攻め込めているなんて思い違いをしちゃいけないよな。
 例えどんなに格下の相手だとしても、もしかしたら、自分に致命的になる様な特殊能力の使い手かもしれない。

 それこそ……うーん。今の自分がどんな能力だと抑え込まれてしまうのか……といえば。俺の周りの空気を抜く? とか? まず【結界】みたいな能力で俺を囲わないと……いや、顔の周りだけから空気を排除するとか? そんな変則的な力、使えるのだろうか? スキルとか魔術とか、結構法則的な縛りってあるんだよね。

 ああ、水の魔術でいきなり喉や鼻に水を精製されたら……俺が逃げ回っても追いかけ続けられたら……。
 ちょっと怖いけど、慌てずにその水の内側に「正式」を纏わせれば大丈夫か。

 いきなり電撃……とか、いきなり機関砲とかかな。喰らったこと無いけど。特に大口径の機関砲は「ブロック」纏いも貫きそうだなぁ。その手の軍隊レベル、戦車を相手に戦うレベルの物量で攻められると厳しいかもなぁ。

ガツッ

 そんなことを考えながらも、「ブロック」で短パンの行動を阻害し続ける。手に持つナイフを防ぐとかそういう問題じゃ無い。

 何度も何度も、行く手を阻む。

 ほら。もう、足が竦んだ。というか、ダメージもあって、動けなくなってる。骨も折れたのかもね。何カ所か。

 次の瞬間、左手のナイフを投げてきた。至近距離だ。普通なら避けられないだろう。だが。通販で見てたからな~それがスローイングナイフとして優秀だって。

 六角棒にぶち当たり、敢えなく床に落ちる。まあ、面倒だし、部屋から弾き出しておく。

「ちっふざけんな……契約と違う」

 うん、二流。青ジャージは本当に、優秀だったということだろう。情報らしい情報どころか、死にゆく前の激しい感情すら何一つ口にしなかつたからね。

 いま、短パンが呟いたおかげで、俺は、連中が「俺の様な一般人を殺せ」と「雇われた」ことを確認することが出来た。

 よし、俺も戦場では、あまり喋らないようにしよっと。

 まあ、契約が違うとか今さら言ってる様な甘ちゃんには特別の恐怖を与えてから退場してもらうことにしよう。

「ブロック」

 一つ目。出足を挫く。二つ目。反対足を躓かせるタイミングで発生。三つ目前のめりになっている、おでこの辺りに。これで一瞬動きが止まる。その止まった後頭部、ギリギリの所に「ブロック」。

 徐々に自由が奪われていく恐怖を味わってもらおう。

 ここまでやって気がついたのだが、こいつ、ベッドに横たわる女性をナイフで傷付けていたようだ。
 あーなんか、そういうタイプか。そういう行為で性的な興奮を覚えるフェチがいるって聞いたことがあるな。

 ベッドの奥、結構な血が流れてた後が見える。

(これ、マットレスまで血が染みこんでるんじゃ……)

 こんな状態でも女性は生きているし、意識を失っている。

「な、なんがーーーー!」

 次々と順番に行く手を遮られ続ける状況に、だんだんおかしくなって来た様だ。こらえ性が無い感じだね。若者独特のヤツ。

 

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心の状態がいまいちだったので公開を停止していた作品を再スタートさせました。文章を修正しながらのアップロードなので時間はかかるかと思いますが……。よろしくお願いします。

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作者名から辿るのが早いかもしれませn。
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