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083:化者
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「古来「かのもの」と呼ばれていた者たちは、日本の裏世界で暗躍してきたそうです。自分が知っている限りだと、平安時代以前に、既に確認されているとか」
「そんなに昔ですか……」
「「かのもの」「仮のもの」「化の者」……というのは、まあ、名前で呼ぶことすら憚れる……存在だったということです。差別され、使役される存在だったと。最終的には「化者」とまで……」
ああ、そういう感じだったのか。
被差別階級……忍者が……武士に出来ない薄汚い方法で暗躍していたのと一緒ね。武士の理を無視した汚れ仕事。それを一手に請け負っていた彼らはずっと、武士社会では下賎な者たちとして虐げられていた。
「で、その「化者」ですが、それだけの力を備えているにも拘らず、これまでは表舞台には一度も登場しておりません。一般には一切知られていないのです」
これまでは?
「「化者」たちの存在は大きく、国内で何か問題が発生すると海外の組織を尽く潰してきました。結果、日本には日本のやり方をよーく心得ている日本の組織しか生き残れなかったと」
そんな「化者」=超能力者たちがなぜ、虐げられたままだったか……が判らないな。
「とりあえず。判りやすく言うと、日本は一部の「超能力者」たちに様々な部分で守られていたということです。その辺に関しましては、自分の部下に詳しい者がおりますので、後日、興味がありましたら本人にお聞き下さい」
まあ、ありがたい……というか、この人……俺の顔色から読心できちゃってるんだろうな。なるべくポーカーフェイスでいるようにしているけど、多分、バレバレなんだろう。
「さて。……そんな裏の存在だった、化者たちを統べる組織が、二十年ほど前に半崩壊しました。詳細は一切不明。現時点まで我々がどれだけ調べても、情報一つ手に入れられていません。が、非常に短期間で瓦解したのは間違い無いようです。その結果……現在、そこに所属していた「化者」たち、そしてその血族たちが日本中で暗躍している、と」
「つまり、牧野文雄もその「化者」の一人だと」
「はい。彼らは自らを決して「化者」とは呼びません。「超能力者」ではなく「能力者」と呼称しています。「能力者」の数はそれほど多くありません。元々の数が少なかった様です」
「牧野文雄について判っている事は?」
「牧野文雄。彼の出自などは一切不明です。未成年と思われる時期に花咲会系の下部組織に所属し、頭角を現していきます。バリバリの武闘派……古武術の印可持ちで、カラーギャング十人を一瞬で打ちのめしたとか、ボクシングのランカーを一発で沈めたなんていう武勇伝はいくらでも」
ああ、やっぱり、武術……古武術か。ちゃんとしてたもんな。
「ヤツのライバルであった……幹部、兄貴格や同僚、舎弟がなぜか、次々と死亡しています。その結果、いつの間にか、極当たり前の様に現在の地位、花咲会系最大の暴力装置と言われている牧野興産のトップに就任しました」
……あの傀儡師の力を上手いこと使ったのだろうか。女を操って……ライバルに仕掛ければ、どうにでも出来るもんな。
「武闘派らしく、かなり強引なやり方……地上げや家族を誘拐脅迫しての株式譲渡、資産強奪。実際にヤツラからの護衛を引き受けたこともあります」
おお。さすが。戦った経験有ったんだ。
「さらに最近話題だったのが、ヤツラの次期主力商売と言われている、核花……と呼ばれるドラッグです。これ、少量であれば通常の合法ドラッグと大差ない効果……気持ちが上がる、ハイになるって感じだそうです。なのですが、三~四錠飲むといきなり、別効果が発動します」
三沢さんが、別の机の上に置いてあったジッパー付きの小袋を応接テーブルに置く。中身は錠剤。その「核花」なのだろう。
「三~四錠を飲んで十五分もすると、通常意識を失います。そして、性衝動のみが強烈に刺激され、文字通りのセックスドール化するそうです。「反応があるのに反抗しない」というのが売り文句だそうで。特にその効果は女性に顕著で、我を忘れて非常に激しい事になって……使用後、数時間すると疲労困憊で意識を失う場合が多いとか。男にはそこまでの効果は無いようです。過剰摂取するとどうなるのかは判りませんが」
ああ。それか。とりあえず、助けておいた女性の症状は。
「実は昨日の牧野興産の件で、十名ほど保護した女性がいるのですが。全員その薬を使われていた様です。まあ、薬については詳細は不明点も多いのですが。まだ、使用され始めたばかりで、テストしていた様な状況だったらしいですし」
社内テストとかそういうことだろうか?
結構真面目……いや、まあ、そうか。取引先の組長の女が、その薬のせいで死んだりしたらヤバいもんな。厳しい臨床試験を繰り返さないとってことか。
「まあ、正直自分も知っていたのは噂程度で、「核花」という名前や詳しい効能、詳細を知ったのはついさっきです。それらしい薬があるという情報は掴んでいたんですが、まだ流通前だった様で」
? ってことは?
「ええ。その助けた女性の中に……昔なじみがいましてね。その娘が詳細を」
「中毒性は?」
「若干在るようです。ですが、現存する麻薬よりも弱めということなので、しばらく隔離すれば問題無いかと。投与されていた期間もそれほど長くなかったようですし」
なら良かった。
「……さて。村野さん。省いて話をしますので少々判りにくくなるかもしれませんが……続けて全体の状況です」
「そんなに昔ですか……」
「「かのもの」「仮のもの」「化の者」……というのは、まあ、名前で呼ぶことすら憚れる……存在だったということです。差別され、使役される存在だったと。最終的には「化者」とまで……」
ああ、そういう感じだったのか。
被差別階級……忍者が……武士に出来ない薄汚い方法で暗躍していたのと一緒ね。武士の理を無視した汚れ仕事。それを一手に請け負っていた彼らはずっと、武士社会では下賎な者たちとして虐げられていた。
「で、その「化者」ですが、それだけの力を備えているにも拘らず、これまでは表舞台には一度も登場しておりません。一般には一切知られていないのです」
これまでは?
「「化者」たちの存在は大きく、国内で何か問題が発生すると海外の組織を尽く潰してきました。結果、日本には日本のやり方をよーく心得ている日本の組織しか生き残れなかったと」
そんな「化者」=超能力者たちがなぜ、虐げられたままだったか……が判らないな。
「とりあえず。判りやすく言うと、日本は一部の「超能力者」たちに様々な部分で守られていたということです。その辺に関しましては、自分の部下に詳しい者がおりますので、後日、興味がありましたら本人にお聞き下さい」
まあ、ありがたい……というか、この人……俺の顔色から読心できちゃってるんだろうな。なるべくポーカーフェイスでいるようにしているけど、多分、バレバレなんだろう。
「さて。……そんな裏の存在だった、化者たちを統べる組織が、二十年ほど前に半崩壊しました。詳細は一切不明。現時点まで我々がどれだけ調べても、情報一つ手に入れられていません。が、非常に短期間で瓦解したのは間違い無いようです。その結果……現在、そこに所属していた「化者」たち、そしてその血族たちが日本中で暗躍している、と」
「つまり、牧野文雄もその「化者」の一人だと」
「はい。彼らは自らを決して「化者」とは呼びません。「超能力者」ではなく「能力者」と呼称しています。「能力者」の数はそれほど多くありません。元々の数が少なかった様です」
「牧野文雄について判っている事は?」
「牧野文雄。彼の出自などは一切不明です。未成年と思われる時期に花咲会系の下部組織に所属し、頭角を現していきます。バリバリの武闘派……古武術の印可持ちで、カラーギャング十人を一瞬で打ちのめしたとか、ボクシングのランカーを一発で沈めたなんていう武勇伝はいくらでも」
ああ、やっぱり、武術……古武術か。ちゃんとしてたもんな。
「ヤツのライバルであった……幹部、兄貴格や同僚、舎弟がなぜか、次々と死亡しています。その結果、いつの間にか、極当たり前の様に現在の地位、花咲会系最大の暴力装置と言われている牧野興産のトップに就任しました」
……あの傀儡師の力を上手いこと使ったのだろうか。女を操って……ライバルに仕掛ければ、どうにでも出来るもんな。
「武闘派らしく、かなり強引なやり方……地上げや家族を誘拐脅迫しての株式譲渡、資産強奪。実際にヤツラからの護衛を引き受けたこともあります」
おお。さすが。戦った経験有ったんだ。
「さらに最近話題だったのが、ヤツラの次期主力商売と言われている、核花……と呼ばれるドラッグです。これ、少量であれば通常の合法ドラッグと大差ない効果……気持ちが上がる、ハイになるって感じだそうです。なのですが、三~四錠飲むといきなり、別効果が発動します」
三沢さんが、別の机の上に置いてあったジッパー付きの小袋を応接テーブルに置く。中身は錠剤。その「核花」なのだろう。
「三~四錠を飲んで十五分もすると、通常意識を失います。そして、性衝動のみが強烈に刺激され、文字通りのセックスドール化するそうです。「反応があるのに反抗しない」というのが売り文句だそうで。特にその効果は女性に顕著で、我を忘れて非常に激しい事になって……使用後、数時間すると疲労困憊で意識を失う場合が多いとか。男にはそこまでの効果は無いようです。過剰摂取するとどうなるのかは判りませんが」
ああ。それか。とりあえず、助けておいた女性の症状は。
「実は昨日の牧野興産の件で、十名ほど保護した女性がいるのですが。全員その薬を使われていた様です。まあ、薬については詳細は不明点も多いのですが。まだ、使用され始めたばかりで、テストしていた様な状況だったらしいですし」
社内テストとかそういうことだろうか?
結構真面目……いや、まあ、そうか。取引先の組長の女が、その薬のせいで死んだりしたらヤバいもんな。厳しい臨床試験を繰り返さないとってことか。
「まあ、正直自分も知っていたのは噂程度で、「核花」という名前や詳しい効能、詳細を知ったのはついさっきです。それらしい薬があるという情報は掴んでいたんですが、まだ流通前だった様で」
? ってことは?
「ええ。その助けた女性の中に……昔なじみがいましてね。その娘が詳細を」
「中毒性は?」
「若干在るようです。ですが、現存する麻薬よりも弱めということなので、しばらく隔離すれば問題無いかと。投与されていた期間もそれほど長くなかったようですし」
なら良かった。
「……さて。村野さん。省いて話をしますので少々判りにくくなるかもしれませんが……続けて全体の状況です」
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