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NOT追放者とお馬鹿獣人
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ジャンルはBLですが大したことありません。というか何もしてません。作者がゴリゴリの腐女子なのと登場人物が男のみなのでとりあえずBLジャンルに突っ込みました。
─────────────────
荒野の広がる土大陸に暮らす獣人、アトラスはその日、珍しいモノを拾った。
それは天候、気候、出現する魔物の凶悪さ、土地の痩せ具合などあらゆる面で過酷な土大陸では殆ど見かけない脆弱な種族、人間であった。
「……う、……う……」
アトラスが人間を見たのは初めてのことだ。
獣人よりも遥かに劣る体躯に、まともな武器も持っていない着の身着のままといった風情の格好。このまま放置すれば確実に命を散らすであろうその存在を、善良なアトラスは見捨てることができなかった。
幸いにして、アトラスが今受注している依頼は緊急性が無く期間に余裕のあるものだ。アトラスは爪を立ててしまわぬよう気を付けながら、優しく優しく人間を抱き上げた。そして今日の探索は終わりにする事として、拠点を置いている街──ナディルへ帰還すべく歩を進めた。
ナディルへ帰る道中、アトラスはいくつかの話を思い出していた。
それらはみな、酒場に訪れる吟遊詩人の間で流行っているらしい話だ。あまり覚えの良くないアトラスでも、似たような話を幾度となく耳にするうち、その粗筋程度ならば記憶に留めることができた。
『それは不遇な男の復讐譚。信頼していた仲間に裏切られパーティを追放されたその男は──』
『婚約者でもあった王子に裏切られ、装備を奪われて迷宮最奥部へ取り残された聖女。しかし彼女の──』
『同じ境遇であった少年たちは本来助け合うべきでした。しかし事もあろうにそのリーダーは足手纏いと認識した一人の少年を囮として──』
そして、腕の中の子供へ視線を落とす。
薄汚れ、其処彼処に傷を負った身体。冒険者として活動するには幼く、きっとそう役に立つ事も出来なかっただろう。あれらの話のように。
「……こんな子供を追放して、こんな場所へ置き去りにするなんて……許せないな」
Cランク冒険者、アトラス。
恵まれた体格と類稀な戦闘能力は過酷な環境をもほともせず凄まじい戦果を齎し、冒険者としての評判は街を超え大陸全土へ轟く程のもの。
ただし本人に名声欲などは無く、ただやりたいことをやりたい時にする為に冒険者になった。
……だが、一切の計算なくその勇猛を輝かせる彼には、とある致命的な弱点があった。本来ならAランクへも手が届く程の実力を相殺してしまう程の、致命的な欠点が。
「……かわいそうに……! 俺が、面倒見てやるからな!」
それは、極度のお人好しな性分と、あまりよろしくない出来の頭だった。
具体的には、知識が足らず思慮が足りず、思い込んだら一直線。地雷依頼も詐欺依頼も何のその、というその考え方だ。
ちなみに彼が拾ったのは人間の子供ではなく、小柄ながらも成人した男性であり、もっと言うならば、彼は別にパーティを追放された訳でも、裏切られた訳でもないことを、アトラスはまだ知らない。
そして、アトラスに拾われた青年も知らない。
まさか、友人の転移魔術が暴発して送られた先が一切言葉の通じない場所だった挙句、向こう数年間この獣人のもとでひたすらに子供扱いされ甘やかされながら共同生活を送る羽目になるなどとは。
二人はまだ、お互いのことも、何も知らない。
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荒野の広がる土大陸に暮らす獣人、アトラスはその日、珍しいモノを拾った。
それは天候、気候、出現する魔物の凶悪さ、土地の痩せ具合などあらゆる面で過酷な土大陸では殆ど見かけない脆弱な種族、人間であった。
「……う、……う……」
アトラスが人間を見たのは初めてのことだ。
獣人よりも遥かに劣る体躯に、まともな武器も持っていない着の身着のままといった風情の格好。このまま放置すれば確実に命を散らすであろうその存在を、善良なアトラスは見捨てることができなかった。
幸いにして、アトラスが今受注している依頼は緊急性が無く期間に余裕のあるものだ。アトラスは爪を立ててしまわぬよう気を付けながら、優しく優しく人間を抱き上げた。そして今日の探索は終わりにする事として、拠点を置いている街──ナディルへ帰還すべく歩を進めた。
ナディルへ帰る道中、アトラスはいくつかの話を思い出していた。
それらはみな、酒場に訪れる吟遊詩人の間で流行っているらしい話だ。あまり覚えの良くないアトラスでも、似たような話を幾度となく耳にするうち、その粗筋程度ならば記憶に留めることができた。
『それは不遇な男の復讐譚。信頼していた仲間に裏切られパーティを追放されたその男は──』
『婚約者でもあった王子に裏切られ、装備を奪われて迷宮最奥部へ取り残された聖女。しかし彼女の──』
『同じ境遇であった少年たちは本来助け合うべきでした。しかし事もあろうにそのリーダーは足手纏いと認識した一人の少年を囮として──』
そして、腕の中の子供へ視線を落とす。
薄汚れ、其処彼処に傷を負った身体。冒険者として活動するには幼く、きっとそう役に立つ事も出来なかっただろう。あれらの話のように。
「……こんな子供を追放して、こんな場所へ置き去りにするなんて……許せないな」
Cランク冒険者、アトラス。
恵まれた体格と類稀な戦闘能力は過酷な環境をもほともせず凄まじい戦果を齎し、冒険者としての評判は街を超え大陸全土へ轟く程のもの。
ただし本人に名声欲などは無く、ただやりたいことをやりたい時にする為に冒険者になった。
……だが、一切の計算なくその勇猛を輝かせる彼には、とある致命的な弱点があった。本来ならAランクへも手が届く程の実力を相殺してしまう程の、致命的な欠点が。
「……かわいそうに……! 俺が、面倒見てやるからな!」
それは、極度のお人好しな性分と、あまりよろしくない出来の頭だった。
具体的には、知識が足らず思慮が足りず、思い込んだら一直線。地雷依頼も詐欺依頼も何のその、というその考え方だ。
ちなみに彼が拾ったのは人間の子供ではなく、小柄ながらも成人した男性であり、もっと言うならば、彼は別にパーティを追放された訳でも、裏切られた訳でもないことを、アトラスはまだ知らない。
そして、アトラスに拾われた青年も知らない。
まさか、友人の転移魔術が暴発して送られた先が一切言葉の通じない場所だった挙句、向こう数年間この獣人のもとでひたすらに子供扱いされ甘やかされながら共同生活を送る羽目になるなどとは。
二人はまだ、お互いのことも、何も知らない。
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