劣化コピーの偽勇者、禁術チートで異世界ジャーニー 〜役立ずと追放された俺、最強の禁術で《真の勇者ごと》ぶち抜きます〜

厳座励主(ごんざれす)

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第1章 偽勇者、旅立つ

第12話 栄光を掴む

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 翌朝。
 まだ朝靄が残る時間、エルムさんが一枚の紙を差し出してきた。

「これ、昨日の薬草採取の証明書です。本当は今日も作業があったんですが……もう、薬草は要りませんから。
 ユウトさん、本当にありがとうございました。このご恩は一生忘れません」

 深々と頭を下げるエルムさんの穏やかな笑顔には、確かな幸福が宿っていた。
 俺は「ありがとうございます」と受け取って、セラフィとともにギルドへ向かう。
 その道中、すれ違う人々が驚いたようにこちらを見て、すぐに小声で何かを話し出す。
 どうやらもう、話は広まっているらしい。

 ギルドに到着した瞬間、中がざわついた。

「来たぞ……あの子たちを助けたっていう……!」

「マジで一人で行って、十五人の盗賊全員叩きのめしたらしいぞ」

「昨日、Gランク登録したばっかりだよな……?」

 じろじろとまるで値踏みをするかのように、俺とセラフィを眺める冒険者たち。
 しかし昨日の昼間、俺たちを鼻で笑っていた奴らだけは口をつぐみ、目をそらしていた。
 カウンターまで進み、そこで歩を止める。
 受付嬢も一瞬固まったように目を丸くしていたが、すぐに姿勢を正して出迎えた。

「カミヤ様、おはようございます。……昨日の件、でしょうか」

「はいっ、ゆーとさま、がんばりました」

 セラフィが元気よく一歩前に出て、胸を張る。
 俺は思わず苦笑して、懐から証明書を取り出した。

「はい。薬草採取、無事に終わりました。依頼主のサインもちゃんともらってあります」

 受付嬢は一瞬だけ沈黙したあと、大きな声で突っ込んだ。

「違いますよ! そうじゃありません!」

 ですよね。

「昨晩あなたがギルド前に運び込んだ少女たちの件です。
 あの子たちは全員、行方不明者として登録されていた子どもたちでした。
 それぞれの保護者の元に確認が取れ、今朝までに全員、無事に送り届けられました」

「……そうですか。よかった」

 俺の隣で、セラフィもほっとしたように胸に手を当てていた。

「それだけではありません」

 受付嬢はさらに書類をめくり、真顔で続けた。

「現地調査班から報告がありました。中には十五名の盗賊団員が、全員戦闘不能の状態で拘束されていたとのこと。
 広間の状態から、は単独で制圧した可能性が高いと結論付けられていますが……これはカミヤ様のことで間違いありませんか?」

「うわぁ……やっぱり、ゆーとさまってすごいですっ」

 セラフィが隣でキラキラした目を向けてくる。
 ちょっと照れるけど、まあ、否定はしない。

「……ええ、俺です」

「そうですか……それでは」

 受付嬢はそこで声の調子を変え、ぐっと視線を尖らせた。

「本来の正式手続きを踏まず、無許可でアジトに突入し、極めて危険な戦闘を行った。
 しかもあなたは登録したてのGランク。これは明らかに規律違反であり、軽視できない問題行動です」

「うっ……すみません」

 そうか……怒られるか……。
 そりゃあそうだよな。
 今回の結果だけ見れば大成功ではあったけど、これを許すと無茶をする冒険者が増えるかもしれない。
 それを黙って見逃すほど、冒険者ギルドは甘くないというわけだ。
 俺が頭を下げると、横からセラフィがあたふたと口を挟んでくる。

「で、でも、みんなをたすけましたし、ゆーとさま、とってもがんばって……!」

「セラフィ、ありがと。でも、勝手なことをして怒られるのは当然だから」

 俺が彼女の頭をそっと撫でると、セラフィは少し口をとがらせながらも黙った。
 そんなやり取りを見届けた受付嬢が、ふっと表情をゆるめる。

「……ですが」

 彼女は手元の書類を揃え、姿勢を正す。

「少女たちの証言と、現場の状況証拠を総合的に判断した結果、ギルドは、今回の件をあなたが解決したと正式に認めることとなりました」

「えっ……マジで?」

「はい。よって、規定通り報酬およびギルドポイントを付与いたします」

「やったぁっ!」

 先にセラフィが飛び跳ねた。
 俺は、ぽかんとしながらその背中を見ていた。

「それと……昨日の王熊グリズロードの件ですが」

 受付嬢は少し目を伏せてから、改めてこちらを見る。

「証拠が不十分なため、ギルドとしては正式な討伐記録にはできません。
 ですが今回の件を受け、あなたが倒したのだと信じることにしました。
 あの時、失礼な態度を取ってしまったこと、謝罪いたします。申し訳ありませんでした」

 深々と頭を下げる受付嬢に、俺は両手をぶんぶん振って制止する。

「あ、いや、そんなっ……頭を上げてください」

「わたし、はじめっから、ゆーとさまのこと、しんじてました!」

 ありがとうセラフィ。
 いや、でも、そりゃね。
 キミはすぐ後ろで見てたからね。

 そして、受付嬢が新しいカードを差し出す。

「最後に。当ギルドでは今回の件をあなたのと見なし、カミヤ・ユウト様をDランクで正式登録といたします」

「えっ……!」

「おめでとうございますっ!!」

 セラフィが勢いよく俺の腕に飛びついた。
 俺は受け取ったカードを見下ろす。
 “ランク:D”の文字が、しっかりと刻まれていた。
 受付嬢は深く一礼する。

「改めまして、ありがとうございました。本当に……お疲れさまでした」

 彼女の言葉を皮切りに、ギルド中から大きな拍手が沸き起こった。

「すげぇぞ! とんでもないルーキーが現れやがった!」

「登録したて、初めての依頼で盗賊団を壊滅か……くぅ~っ、シビれるね~っ!」

「……俺たち、とんでもない伝説の幕開けに立ち会えたのかもしれねえ……」

 冒険者たちは口々に賞賛を述べる。
 俺はカードを握りしめながら、小さく息を吐く。

 こっちの世界に来て、“偽勇者”と馬鹿にされ、疎まれ、邪魔者扱いされてきた俺の物語に――。

 ――ようやく、光が差した気がした。。
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