転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu

文字の大きさ
74 / 100
3章 王都救出絵巻

第74話 突破口

しおりを挟む
 エレイシアの言葉にいつの間にか爪が突き刺さるほど固く握りこぶしを作っていた。
 衝動的にエレイシアを責めたくなるが、それは違うだろう。彼女達も他に選択肢がなく苦渋の決断なのだから。

 何せ、天秤にかけられているのは伯爵領まるごと一つの命運だ、あまりにも重すぎる。だが、諦めるなんてそれこそ選択肢にはない。
 どこかに突破口はないか、さらに詳しく聞く。

「あなたがいる今のうちに彼女を逃がすことはできるが、そうすれば伯爵家の責任となり、それは彼女が望まない。
 では彼女が公爵家に嫁いでから公爵家への賊を装って彼女を逃がすことはどうです?
 難易度は上がりますが、私達が協力すれば不可能ではないんじゃありませんか」

 エレイシアが侍女としてついていけるのなら、それなりに成功率はありそうだが、現状かなりの強行策だ。
 しかし、王都の貴族たちに何のコネもない俺が、これほど両家に意味のある婚儀を裏工作でなしにするのも現実離れしている。
 
 無理にでもエレイシアを説得さえできれば公爵家に嫁いでからなら日数も稼げ、スキルを潤沢に取得しておいてからの強行策なら成功率も上げれるだろう。

 ララのその後のことを考えれば強行策など取りたくはないが、公爵家で待ち受ける日々が地獄というのなら躊躇う場合ではない。

「不可能だ、ヴァイアージ家は『軍事』の大家だ。
 当然警備は厳重で、衛兵も強い。何より、今から四十日後にある、公爵家主催の婚約発表のパーティーの後では例えララ様を連れ出せてもそれは生き地獄でしかないだろう。
 『貞淑の契り』という魔道具を知っているか?」

『貞淑の契り』―ユーリーの無駄話に付き合わされたときに聞いたことがある。
 貴族の大家が令嬢を貰うときに使う、婚約指輪ならぬ一生つきまとう奴隷の鎖。
 嫁ぎ先に操を立てる誓いとともに嵌めると呪いとなり、その誓い破るときは場合によっては命を落とすほどの負荷がかかるという。

 ユーリーは王宮にいた頃に、この魔道具の作成依頼を蹴って王宮を飛び出したなんて豪語していたが、まさかそんなものまで持ち出すのかヴァイアージ家は。

 婚約発表まで後四十日か、遂に日取りも決まってしまったらしい。その前に連れ出すこともその後に連れ出すことも実質不可能。

 そうなれば俺にできることといえば、後四十日の間に出来得る限りヴァイアージ家の対抗勢力に接触して、裏金でも何でも渡して婚約を帳消しにできる動きを作る程度か。

 ―それもとてもじゃないが意味がないだろう、時間が足りなさすぎる。

 結局俺には不可能なのか、目の前でまだへたり込んだままの彼女のように絶望がよぎるなか、ふと今までの情報が頭の中で繋がっていく。

 待てよ……… 、ブツブツと考え込む俺に

「なんだ、絶望のあまり気でも触れたか?
 それで、話の始めのお前の言い分とやらはどうした? そもそも、こんな話を聞いて、お前はララ様の一体なんだというんだ」

 エレイシアが問う。それに

「職場の先輩だよ。いいか、『職場の先輩』っていうのは困ってる後輩は助けるものなんだよ」

 力強く明確に、そう社畜オレらしく答えた。

 まだ完璧ではないが、確かにこの絶望の中、突破口は見つけた。なら後は虚仮威しでも自信満々に見せて、彼女を説き伏せるだけ。

「『約束』したんだ、助けにいくと。そして自分に誓ったんだ、その『約束』は曲げないって。
 君は違うのかい? 彼女の騎士としての忠義の誓いがあるというのなら、力を貸してほしい」

「いい加減にしろ!! そうやってララ様にも甘い期待だけ持たせたのだろうが、それがどれだけ残酷なことかわかっているのか!
  私一人を打ち負かした程度で何を履き違えているっ。もう、私達に関わらないでくr」

 
 「雷嵐サンダーストーム

 絶望の言霊を最後まで言わせず、辺り一面に雷魔法の範囲攻撃を放つ。

 もう完全に日が暮れて、練武場には自分達しか残っていない、デモンストレーションは派手なほうがいいだろう。

「ッッッ!!」

 練武場に降りそそぐ雷に驚き声も出せず、見上げるエレイシア。

「何もあなたを打ち負かしたことが私の実力の全てとは言っていないですよ。
 あなたにはこれから協力してほしいですからね、こんなものは向けられないですよ。さあ立ってください、上級回復魔法ハイヒール

 エレイシアに近づき、「僧侶」のジョブスキルレベル4の単体上級回復魔法を使い、傷を癒す。

 もう何が目の前で起こっているかわからないほど混乱するエレイシア、よしこの混乱の機に乗じる!

「今起こしたこの雷は彼女を救うこの戦いの反撃の狼煙です。今、あなたの中で少しでも『希望』が湧いたのなら、他に必要なのは忠義の心だけです。
 彼女を救うためにはあなたの力が必要だ。どうか私の手をとってください」


 自らの力をさらけ出し、協力を請う。
 さあ、ここからだ。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

平凡な村人だと思われていた俺、実は神々が恐れる最強存在でした〜追放されたけど、無自覚チートで気づけば世界の頂点〜

にゃ-さん
ファンタジー
平凡な村人・レオンは、勇者パーティの荷物持ちとして蔑まれ、ある日「役立たず」として追放される。 だが、彼の正体は神々が恐れ、世界の理を超越する“創世の加護”を持つ唯一の存在だった。 本人はまったくの無自覚——それでも歩くたび、出会うたび、彼によって救われ、惹かれていく者たちが増えていく。 裏切った勇者たちは衰退し、彼を捨てた者たちは後悔に沈む。 やがて世界は、レオン中心に回り始める。 これは、最弱を装う最強が、知らぬ間に神々を超える物語。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

転生メイドは絆されない ~あの子は私が育てます!~

志波 連
ファンタジー
息子と一緒に事故に遭い、母子で異世界に転生してしまったさおり。 自分には前世の記憶があるのに、息子は全く覚えていなかった。 しかも、愛息子はヘブンズ王国の第二王子に転生しているのに、自分はその王子付きのメイドという格差。 身分差故に、自分の息子に敬語で話し、無理な要求にも笑顔で応える日々。 しかし、そのあまりの傍若無人さにお母ちゃんはブチ切れた! 第二王子に厳しい躾を始めた一介のメイドの噂は王家の人々の耳にも入る。 側近たちは不敬だと騒ぐが、国王と王妃、そして第一王子はその奮闘を見守る。 厳しくも愛情あふれるメイドの姿に、第一王子は恋をする。 後継者争いや、反王家貴族の暗躍などを乗り越え、元親子は国の在り方さえ変えていくのだった。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

処理中です...