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3章 王都救出絵巻
第80話 ユキ
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俺の熱いヘッドハンティングを受け、理解が追いつかない顔をしている暗殺者の少女。―観念して「変装」を完全に解いているらしい、その姿はか細い十代後半くらいの少女のものだった。
艶やかししい肢体を隠していたドレスは、今やブカブカとなって隠せていない。
残念になったのに目のやり場に困るとは、これいかに。まあ、現状は組みふせている最中だ。
そのまま続ける。
説得を続けようかというところで、少女が口を開いた。
「雰囲気に反して強いと思ったら、頭の方も一見普通なのに、随分とイカれたことを口にするのね。
私は組織を裏切るなんてできない。
気持ちの問題じゃなく、裏切れば『暗殺者』であることを国にチクられ、犯罪者の烙印を押されて追放されちゃうの。
流浪の民は嫌よ……… 、失敗したなら死。
それは覚悟していたことだから、ひと思いにやってちょうだい」
それは、少女がするにはあまりにも重い悲痛な覚悟だった。少女は続ける。
「それに、もう殺しをするのは嫌なのよ。
組織の人達は慣れるものだ、気にする必要はないっていうけれど、『変装』で普通に暮らす人達に紛れる時間が増えるにつれ、殺しの後はご飯が食べれなくなってきたの。
もう無理、私。お願い、楽にして」
そんなあまりにも深刻な話を俺は
「つまり、君の今の職場に俺が話をつけて、円満に退職できればいいんだな?
それと俺の元では誓って殺しはさせない。約束は守るタイプの人間なんだ。信用してくれていい」
なるたけ明るく、そしてわかりやすく問題点の解決策を掲示する。
環境が悪かっただけで根が悪い娘ではなさそうだ。救ってあげたいと本心から思えた。
説得を続ける。
「約一ヶ月後、俺はこの王都を離れ、旅に出る予定だ。そこで俺は君を冒険者パーティーに向かえるつもりだから、もう汚れ仕事はしなくていい。
魔物とは戦うけれど、それは仲間と一緒にだ。君だけに負担はかけない」
俺のそんな言葉に、
「夢みたいな話ね。話をつけるといっても、この後戻らなければ、すぐにでも切り捨てられるわ。
それにパーティーに暗殺者なんか入れて、背中を預けられるの?
あなたはどうか知らないけど他の仲間の人はそんな勝手なこと決められたらどうなるかしら。
私が見捨てられるのがオチね。そんな惨めな思い、したくないわ」
「そうだな、それならこの後は一旦戻って貰おうか。スキルブックの出処はう~ん……… 。
じゃあ、俺はヴァイアージ家に雇われた売り子で、近々軍事行動を起こす予定のヴァイアージ家が軍資金確保に、保管していたスキルブックを流してるってことにしておいてくれ」
我ながら妙案だな、王都の裏の情報網にヴァイアージ家が動くと噂が流れれば、憲兵による統制の動きが出て、戦力を拡散できるかも。
さらに、こんな資金確保のやり方が他の貴族に伝われば、資金難と疑われて、つけ入る隙が生まれやすい。
後は頃合いを見て、逆にこちらが彼女を守りながら組織を売って、ヴァイアージ家に大捕物をさせれば、さらに救出作戦がやりやすくなるだろう。
「ハッ、バッカじゃないの? 私を帰してどうするのよ。あなたを裏切らない保証なんて、どこにもないじゃない。こんな話、最初から無理だったのよ」
そんな諦めの言葉に
「じゃあ帰す前に一筆書いて貰おうか。
雇用契約書にサインを貰えれば大丈夫だから。
ただ、これは脅迫で書かせても意味がないから先に確認しておく。君の本心はどうなんだい?
戻って殺しの仕事を続けたいか、俺についてきて自由を手に入れるか。さっき言った旅が終わったとき、君には何一つ不自由ない生活が待っている。
あらゆる罪が許されるほどの栄光を掴んでの凱旋だ、ドキドキしないか?」
俺が持ちうる最大限の口説き文句を口にする。
馬鹿げていようと、大人が真剣に口にすれば伝わると信じて。
そうして、
「もう今の生活は嫌! 本当に自由になれるの?
なら、夢でもあなたに懸けるわ。私を連れ出して!!」
少女が希望を夢見てくれた。
その後、裏路地から出て俺の宿屋へと向う。
表には見張りがいるらしいので、もう一度「変装」をしてもらい、部屋で「強制証文」による雇用契約書を締結させる。
だが一つ問題点があった。
彼女にはサインする名前がないそうだ。―名前すら与えられていなかったのか……… 。彼女のいた組織は容赦なく潰すとして、さてどうするか。
「あなたが決めてタナカさん。私を連れ出したんだから責任とってよね」
それは蠱惑的でもなんでもない、はじめて見せた彼女の無邪気な笑顔だった。気づかなかったが、こんな可愛らしい女の子だったんだな。
普段はスラムの一角の部屋から出ず、仕事のときだけ「変装」で素肌を隠して外に出るためか、その肌は、雪のように透き通るほど真っ白だった。
安直だけど、まあいいか。
「それじゃあ『ユキ』っていうのはどうだ?
俺の故郷のある地方の名前だから馴染みがないかもだけど、ありきたりよりはいいだろう?」
「『ユキ』か、いい響きね。じゃあこれからはいっぱい『ユキ』って呼んでね、タナカさん」
人懐っぽく、笑うユキ。
何だか、こんないい娘を労働者として雇うっていうのもちょっと罪悪感を覚える。
王都を出た後のことは伝えたが、それまでは当然「変装」を使って諜報活動をしてもらうつもりだしなー。
便利で有能すぎる上に、現状が厳しいのでついつい仕事を振りすぎてしまいそうだが、決してブライアンのようにはなってはいけない。
そう自身を戒めながら、作戦は次の段階へ移行できると、新たに練り直す。
艶やかししい肢体を隠していたドレスは、今やブカブカとなって隠せていない。
残念になったのに目のやり場に困るとは、これいかに。まあ、現状は組みふせている最中だ。
そのまま続ける。
説得を続けようかというところで、少女が口を開いた。
「雰囲気に反して強いと思ったら、頭の方も一見普通なのに、随分とイカれたことを口にするのね。
私は組織を裏切るなんてできない。
気持ちの問題じゃなく、裏切れば『暗殺者』であることを国にチクられ、犯罪者の烙印を押されて追放されちゃうの。
流浪の民は嫌よ……… 、失敗したなら死。
それは覚悟していたことだから、ひと思いにやってちょうだい」
それは、少女がするにはあまりにも重い悲痛な覚悟だった。少女は続ける。
「それに、もう殺しをするのは嫌なのよ。
組織の人達は慣れるものだ、気にする必要はないっていうけれど、『変装』で普通に暮らす人達に紛れる時間が増えるにつれ、殺しの後はご飯が食べれなくなってきたの。
もう無理、私。お願い、楽にして」
そんなあまりにも深刻な話を俺は
「つまり、君の今の職場に俺が話をつけて、円満に退職できればいいんだな?
それと俺の元では誓って殺しはさせない。約束は守るタイプの人間なんだ。信用してくれていい」
なるたけ明るく、そしてわかりやすく問題点の解決策を掲示する。
環境が悪かっただけで根が悪い娘ではなさそうだ。救ってあげたいと本心から思えた。
説得を続ける。
「約一ヶ月後、俺はこの王都を離れ、旅に出る予定だ。そこで俺は君を冒険者パーティーに向かえるつもりだから、もう汚れ仕事はしなくていい。
魔物とは戦うけれど、それは仲間と一緒にだ。君だけに負担はかけない」
俺のそんな言葉に、
「夢みたいな話ね。話をつけるといっても、この後戻らなければ、すぐにでも切り捨てられるわ。
それにパーティーに暗殺者なんか入れて、背中を預けられるの?
あなたはどうか知らないけど他の仲間の人はそんな勝手なこと決められたらどうなるかしら。
私が見捨てられるのがオチね。そんな惨めな思い、したくないわ」
「そうだな、それならこの後は一旦戻って貰おうか。スキルブックの出処はう~ん……… 。
じゃあ、俺はヴァイアージ家に雇われた売り子で、近々軍事行動を起こす予定のヴァイアージ家が軍資金確保に、保管していたスキルブックを流してるってことにしておいてくれ」
我ながら妙案だな、王都の裏の情報網にヴァイアージ家が動くと噂が流れれば、憲兵による統制の動きが出て、戦力を拡散できるかも。
さらに、こんな資金確保のやり方が他の貴族に伝われば、資金難と疑われて、つけ入る隙が生まれやすい。
後は頃合いを見て、逆にこちらが彼女を守りながら組織を売って、ヴァイアージ家に大捕物をさせれば、さらに救出作戦がやりやすくなるだろう。
「ハッ、バッカじゃないの? 私を帰してどうするのよ。あなたを裏切らない保証なんて、どこにもないじゃない。こんな話、最初から無理だったのよ」
そんな諦めの言葉に
「じゃあ帰す前に一筆書いて貰おうか。
雇用契約書にサインを貰えれば大丈夫だから。
ただ、これは脅迫で書かせても意味がないから先に確認しておく。君の本心はどうなんだい?
戻って殺しの仕事を続けたいか、俺についてきて自由を手に入れるか。さっき言った旅が終わったとき、君には何一つ不自由ない生活が待っている。
あらゆる罪が許されるほどの栄光を掴んでの凱旋だ、ドキドキしないか?」
俺が持ちうる最大限の口説き文句を口にする。
馬鹿げていようと、大人が真剣に口にすれば伝わると信じて。
そうして、
「もう今の生活は嫌! 本当に自由になれるの?
なら、夢でもあなたに懸けるわ。私を連れ出して!!」
少女が希望を夢見てくれた。
その後、裏路地から出て俺の宿屋へと向う。
表には見張りがいるらしいので、もう一度「変装」をしてもらい、部屋で「強制証文」による雇用契約書を締結させる。
だが一つ問題点があった。
彼女にはサインする名前がないそうだ。―名前すら与えられていなかったのか……… 。彼女のいた組織は容赦なく潰すとして、さてどうするか。
「あなたが決めてタナカさん。私を連れ出したんだから責任とってよね」
それは蠱惑的でもなんでもない、はじめて見せた彼女の無邪気な笑顔だった。気づかなかったが、こんな可愛らしい女の子だったんだな。
普段はスラムの一角の部屋から出ず、仕事のときだけ「変装」で素肌を隠して外に出るためか、その肌は、雪のように透き通るほど真っ白だった。
安直だけど、まあいいか。
「それじゃあ『ユキ』っていうのはどうだ?
俺の故郷のある地方の名前だから馴染みがないかもだけど、ありきたりよりはいいだろう?」
「『ユキ』か、いい響きね。じゃあこれからはいっぱい『ユキ』って呼んでね、タナカさん」
人懐っぽく、笑うユキ。
何だか、こんないい娘を労働者として雇うっていうのもちょっと罪悪感を覚える。
王都を出た後のことは伝えたが、それまでは当然「変装」を使って諜報活動をしてもらうつもりだしなー。
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