転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu

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3章 王都救出絵巻

第84話 夜明け

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 退職代行サービス― 。ノリでそんな答えが出たが、ホントにそんなものがあったら前世でも使ってたかな? 
 なんて、ふと考える。

 こっちの世界には労働基準法なんてものはないので、代行を使ってもすんなり辞めることは出来ないだろうから無意味だろうけど、前世なら実はいいビジネスになったかもしれないな。

 普段から上司のパワハラを食らっていると退職を言い出すだけでも相当なエネルギーがいるのだ。
 当時はもうそんな気力がなく、自棄を起こしてしまったが。
 退職なんて本来正当な権利なんだから、言い出しにくかったら間に人を挟めばいいだけなんだよな。

 色々と片付いたら、退職をしたくてもできない人々を助ける。そんなセカンドライフもいいかもしれない、前世もあるからセカンドじゃねーけど。

 さて昼に組織のアジトを占拠して、夜に幹部達が帰ってくるまでの間に悪事の証拠集めも終わって、そんなしょうもない思案をしていたが、日が暮れ出すと、「変装」をして見張りに立った。

 組織の幹部連中は表の顔を持つような輩もいる。
 皆、人目を避けいるため、一人か引き連れても護衛で一人と、少人数ごとにアジトにやって来る。

 面倒だが一網打尽にするため、確実にゴキブリホイホイの要領で捕縛していった。

「グッ……」 ストン

「変装」は、やはり強力だ。
 捕縛した見張りの服を奪い、見た目も声も完璧に真似ていると、相手はむしろ疑われるのは自分達側という意識が邪魔をして、こちらを何も疑わずに安易に背中を晒してくれた。

 そうこうして三時間ほどでユキから聞いていた構成員、十六人全員の捕縛完了となり、後はユキの帰りを待った。
 正確にはユキについている見張りを捕縛することでミッションコンプリートとなる。

 取り決めた時間通りにアジトへと戻ってきたユキに、見張りの「変装」をしたまま、小声で話しかける。

「俺だ、タナカだよ。わかるかな? こちらは順調に作戦終了だ。そのまま中で待機していてくれ」

「驚いた…… 。それ、私の『変装』よね。
 本当だったんだ『スキルブック作成』って。フフッ、私の新しい御主人様は神様みたいな人ね」

 交わした雇用契約書には当然守秘義務についての項目があり、今後も考えて「スキルブック作成」について説明したのだが、まあにわかには信じ難いよな。

「神様でも御主人様でもないよ、っとほら、次が来るから中に入った、入った」

 とユキを急かして、ユキの見張り役が遅れて来るのを待ち構える。
 実は、この男にだけはちょっと用事があるのだ。

「ウッ」 コックリ

 やってきた男とすれ違いざま、他の構成員と同様に後ろから絞め技で落とす。
 前世のときの合気道ではあまり絞め技はやらなかったが、Lvを5まで上げておけば剛力も合わせて、一瞬で決まる。

 そのまま中に連れ込み、ここからはユキの「毒調合」の出番だ。
 今日のことは皆には忘れてもらっていたほうが都合がいいし、最後のこの男には自白剤で聞きたいことがある。

「薬が効いてきたかな、『盗賊』のお兄ちゃん。アンタのジョブスキルを見させてくれないか?」

 最後の男は「暗殺者」同様に、発現しただけで全うには暮らせない不遇ジョブである「盗賊」であることはユキから聞いていた。
 まあ、こいつは完全に悪事に染まり、組織で甘い汁を吸っている人間なのは、ここ数日「斥候」のジョブを使い、二重尾行をしてわかっていたので容赦はしない。

「盗賊」のジョブスキルもまた有能で、特に今後あの『不可能のダンジョン』である地底古代文明ダンジョンを探索するには、ほぼ必須になると思っている。

 過去、あのダンジョンからスキルブックや、他のSSランククラスのアイテムを持ち帰ってきたのは戦闘職ではなく「斥候」に偏ったパーティーメンバーだと聞いている。
 しかし、噂では実は高レベルの「盗賊」がいたのでは? なんて話もある。

 目の前の男は結局、ジョブレベルは3までしかなかったが、それでも「解錠」スキルは今後のユキの諜報活動でも役に立ちそうなので、覚えさせておくか。

 さて、やることも終え、こんなところとはオサラバだ。アジトを出る前にユキの足輪を外してやる。

 ―スラム街を出る、ちょうどその時、朝日が昇った

 朝焼けに塗れる彼女の姿に、不覚にも俺は見惚れた。俺は生涯、このときの彼女の顔を忘れないだろう。

 俺にとってはトントン拍子に上手くいった、行きがけの駄賃のような今回の組織壊滅だったが、彼女にとっては違う。
 生まれてから初めての束縛からの解放、その表情は喜びなどという、安直な言葉では表すことなどできなかった。

 この世界に来てからも色々とあったが、この出来事のおかげで、俺の中のララを救けたいという思いを再確認できた。

 ララとは二度ほど食事に行っただけの、職場の同僚以上の関係ではない。
 それでも、『助けたいという気持ちに嘘をつかなくていい』というのは、こんなにも素晴らしいことなんだとユキが教えてくれた。 ―


 さて、役に立つものもついでに手に入れた後、構成員達は薬で眠らせたまま、朝方には憲兵の詰め所に手紙で密告を済ませると、昼には大捕物のニュースが街中で流れていた。


 これで、俺の方も最低限、必要な手札は整った。


 ―作戦の日が近づく。


―――――――――――――――――――――――――――――――――

 タナカさんの転生前には退職代行業はなかったみたいですね。
 今回のお話でもそうですが、嫌な所を辞めるのに、人の手を借りることには何の抵抗もいらないってことは、ちょっと気持ちが入って書いていた気がします(_ _;)

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